鷺の停車場

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映画「世界の中心で、愛をさけぶ」

映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年5月8日公開)を観ました。

公開当時、「セカチュー」が流行語となり、一種のブームとなっていたことは記憶にありますが、その頃は、映画を観ることがほとんどなくなっていたこともあって、作品自体を実際に観たことはありませんでした。

NHK-BSで今年2月に放映されていたのを録画して、先に観た「七人の侍」と同様、やはり録ったきりになっていたのですが、家で過ごす時間が増えた最近になってようやく観ました。

改めて調べてみると、片山恭一さんの同名小説を原作に、監督:行定勲、脚本:坂元裕二・伊藤ちひろ行定勲、撮影:篠田昇といったスタッフで映画化された作品。興行収入85億円と大ヒットし、その効果もあって、原作小説も300万部以上の大ベストセラーとなったのだそう。

 

大まかなあらすじは、

律子【柴咲コウ】は、台風が接近する中、引越しの準備をしていると、ダンボールの中から、1本のカセットテープを見つける。家電量販店でカセットウォークマンを買ってそのテープを聴くと、聞き覚えのある少女の声が流れ、律子は立ち止まり思わず涙を流す。その恋人・朔太郎(サク)【大沢たかお】は、律子がいなくなったと古くからの親友・リュウ宮藤官九郎】が経営する店に駆け込むが、店内のテレビに映った高松からのニュース映像に律子の姿を見つけ、故郷である高松に向かう。
朔太郎は、思い出の場所をたどりながらる、高校時代に白血病で亡くなったアキ【長澤まさみ】との恋を回想する。
高校に入ってサク【森山未來】はアキと恋仲になるが、アキは白血病にかかってしだいに悪化していき、オーストラリアへの修学旅行も行くことができなくなる。
サクは、アキが行けなかったオーストラリアにアキを連れて行こうと奔走し、台風が近づく中病院からアキを連れ出すが、空港に着くと、台風で欠航となってしまう。焦るサクが空港のカウンターに詰め寄っているその時、アキは倒れてしまう。
病院に戻ったアキは、サクとはもう会わないことを決め、そのメッセージをカセットテープに録音する。そのテープを託されたのは、同じ病院に母親が入院していて知り合った幼い律子【菅野莉央】だったが、渡しに走る律子は交通事故に遭ってしまい、サクに渡すことができないままになっていた。
朔太郎は、そのテープを律子が託したなじみの写真館の重じい【山崎努】から渡され、帰るために空港に向かうと、あの日と同じく台風のため欠航になってしまう。しかし、その空港で律子を見つけた朔太郎は、突然姿を消した心境を聞き、律子を抱き寄せる。
そして、2人はオーストラリアを訪れる。荒野の真ん中でアキが録音したカセットテープを聞き直して涙する朔太郎。2人はそこで、アキが残した最後のメッセージのとおりに、遺灰を風に撒くのだった。

・・・というもの。

 

大人になった朔太郎が、故郷を訪れて、高校時代の思い出を回想する、という映画の基本的な設定は、原作にはなく、劇場版のオリジナルの設定だそうです。

大人になった主人公が高校時代の恋を回想する、という原作にない設定をオリジナルで追加しているのは、以前観た映画でいうと、実写版の「君の膵臓をたべたい」も同様です。同作もかなりヒットした作品ですが、本作のこの設定に影響を受けているのでしょう。

原作小説は未読なので、詳しくは分かりませんが、前述の基本的な設定のほか、高校時代の描写も、細部は必ずしも原作どおりというわけではなく、いろいろアレンジが加えられているようです。

2時間20分近い上映時間は、この手の青春恋愛ものの映画としては、かなり長めだと思いますが、退屈さを感じさせない構成・展開は巧みだと思いました。主人公の朔太郎の心情を反映するように、現代パートはどんよりとした空気感、高校パートはくっきりとした空気感で描かれていて、その対比が鮮やかなことも大きく貢献しています。これは撮影や照明などのスタッフの腕前が寄与しているのでしょう。

俳優陣は、現代パートの主人公・朔太郎役の大沢たかおは個人的には癖を感じて今一つのところがありましたが、ヒロインのアキ役の長澤まさみの印象は鮮やかです。発病前のハツラツとした感じから、病状が重くなっていくまでを見事に演じています。終盤、治療の副作用で髪の毛が抜けてしまった後のシーンでは、自ら提案してスキンヘッドになったそうで、それだけ役への熱意も強かったのだろうと思います。公開当時16歳で日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を最年少で受賞したそうですが、それも納得という気がしました。