鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「のぼる小寺さん」

映画「のぼる小寺さん」(7月3日(金)公開)を観に行きました。

本作は、脚本が吉田玲子さんと聞いて、アニメ作品ではいい作品に数多くかかわっていますが、実写映画は珍しい、と思って気になっていました。公開初週の週末の口コミ評価も比較的良かったこともあり、全国43館と小規模での公開、後日上映開始予定の映画館も20館ちょっとあるようですが、観る機会を逸してしまう前にと、さっそく行ってみることにしました。

f:id:Reiherbahnhof:20200707103135j:plain
来たのはアリオ亀有の3階にあるMOVIX亀有。何度も来たことがある映画館ですが、新型コロナウイルスの感染拡大による臨時休館の後は初めて。ショッピングモールの入口にサーモグラフィが設置されていることもあってか、映画館の入口での厳重なチェックはありませんが、売店もタッチパネルで注文する形になっているなど、接触回避の対策がとられていました。平日の夜とあって、ロビーに人はまばらです。

f:id:Reiherbahnhof:20200707103844j:plain
この週の上映スケジュール。この映画館も、営業再開直後は旧作の再上映が多かったようですが、6月26日から全国で再上映が始まったジブリ4作品を除けば、ほとんどが新作に戻っているようでした。

f:id:Reiherbahnhof:20200707104512j:plain
シアターの入口を入った廊下の壁には、他のいくつかの上映作品と同様に、大きなタペストリーが掲示されていました。

f:id:Reiherbahnhof:20200707104522j:plain

f:id:Reiherbahnhof:20200707104532j:plain
上映は、139席のシアター7。この映画館でも、席は1席ずつ開けて座る形になっており、座れない席にはテープが貼ってありました。お客さんは12人くらいだったでしょうか。

新型コロナウイルスの影響で公開時の舞台挨拶ができなくなった代わりということのようですが、まず主演の工藤遥、監督の古厩智之によるビデオメッセージが流れ、その後に本編上映が始まりました。

f:id:Reiherbahnhof:20200707003234j:plain

f:id:Reiherbahnhof:20200707003244j:plain
(チラシの表裏)

2015年から2017年にかけて「good!アフタヌーン」に連載された珈琲の同名コミックを実写映画化した作品だそうで、監督は古厩智之

公式サイトのストーリーによれば、あらすじは、

<――彼女がなぜのぼるのか、僕には“まだ”わからない。
教室。ひとりぼっちの近藤は、暇つぶしに携帯をいじっている。

体育館。
卓球部の近藤が隣をみると、小寺さんが上を目指している。
近藤は小寺さんから目を離せなかった。

放課後。
教室に小寺さん、近藤、四条、ありかが残される。
「進路調査票、白紙なのお前らだけだぞ」担任の国領が紙を広げる。
不登校気味の梨乃が遅れてやってくる。
「お前、めちゃくちゃ遅いよ!」あきれる国領。

ライミング部の隣で練習する卓球部の近藤、クライミング部の四条、ネイルが趣味で不登校気味の梨乃、
密かに小寺さんを写真に収めるありか。
小寺さんに出会った彼らの日常が、少しずつ変わりはじめる――>

 

というもの。

さしたる目標もなく日常を送っていた近藤【伊藤健太郎】、四条【鈴木仁】、倉田梨乃【吉川愛】、田崎ありか【小野花梨】が、それぞれ、ひたすらボルダリングに打ち込む同級生の小寺【工藤遥】に感化されて、少しずつ、目の前のものに一生懸命に取り組むようになって、輝いていく青春物語。

小寺さんは、バレーボールは苦手、座敷でラーメンを食べるときには膝を立て、進路調査票に真面目に「クライマー」と書くなど、優等生ではない一風変わった女の子なのですが、ひたむきに登るその姿は、本人の知らないうちに周囲の人間を変えていきます。体育館ですぐ隣で練習する卓球部で、練習中に小寺さんに見とれる近藤は、運動部で一番楽そうだから入った部活に自分も熱心に打ち込むようになっていき、大会で好成績を上げるまでに上達します。ボルダリング初心者の四条も、中学時代は友だちもいなかった根暗な男の子だったのが、熱心にボルダリングに打ち込むうちに、その姿を見ていたバレー部の女子から告白され、付き合うようになります。

劇的な出来事が起きるわけではない淡々とした展開ですが、周囲の4人が変わっていく過程をうまく描いて、爽やかな印象が残る作品でした。主演の工藤遥は、個人的にはちょっとイメージと違う印象を受けましたが、近藤役の伊藤健太郎、四条役の鈴木仁などは、役のイメージによく合っていました。

私はすっかり歳が離れてしまっていますが、より近い年代の人には、さらに鮮やかに映る作品ではないかと思います。