鷺の停車場

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ザンデルリンクのチャイコフスキー

ずいぶん久しぶりになりますが、クラシックのCDを。

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  1. ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
  2. チャイコフスキー交響曲第4番 ヘ短調 op.36

クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン
(1973年10月31日、東京文化会館(ライヴ)) 

クルト・ザンデルリングは、1912年に当時の東プロイセンで生まれ、ドイツで指揮者としてのキャリアをスタートしましたが、ナチスの反ユダヤ政策により1936年にソ連に亡命し、1936~1941年にモスクワ放送響の指揮者を、1941~1960年にはムラヴィンスキーの下でレニングラード・フィル(現:サンクトペテルブルク・フィル)の第一指揮者を務めています。1960年に東ドイツに戻った後は、1977年までベルリン響(現:ベルリン・コンツェルトハウス管)の首席指揮者を務め、1964~1967年にはシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者でもありました。1972年にフィルハーモニア管弦楽団の首席客演指揮者に就任するなど、西側のオーケストラにも数多く客演しましたが、2002年に指揮活動を引退し、2011年に98歳で亡くなりました。日本との関係でいえば、多くの来日公演のほか、読売日本交響楽団で客演を重ね、同楽団の名誉指揮者にもなっています。

本盤は、1973年の来日公演のライヴ録音。当時Tokyo FMで放送された音源をCD化したものだそうです。私が買ったCDは廃盤になっていますが、現在入手可能なCDは、その日の演奏会の2曲目だったモーツァルト交響曲第35番を加えた2枚組になっています。

上記のように、ドイツ出身でありながら、若い時期にソ連でキャリアを積んだこともあって、いわゆるロシアものも多く演奏しています。録画しなかったのが悔やまれるのですが、テレビで見た晩年(確か1997年ごろ)にベルリン・フィルに客演したショスタコーヴィチ交響曲第8番も強く印象に残っています。

その中でも、チャイコフスキー交響曲第4番は特に録音が多く、1956年のレニングラード・フィル、1979年のベルリン響との2枚のセッション録音のほか、本盤、1992年のベルリン・フィル、1998年のウィーン響と3枚のライヴ録音があるようです。

派手さはありませんが、堅実な構成でありながら歌もあるという印象で、個人的には好きな演奏。いぶし銀という表現がぴったりの響きもいい感じです(余談ですが、これは、当時の楽器の質の問題もあったのではという気がもします。)。「オベロン」も、冒頭のホルンから魅力的な演奏。

 

手元にある他の交響曲第4番のCDも聴き比べてみました。

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  1. チャイコフスキー交響曲第4番 ヘ短調 op.36
  2. チャイコフスキー交響曲第5番 ホ短調 op.64
  3. チャイコフスキー交響曲第6番 ロ短調 op.74「悲愴」

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルハーモニー交響楽団
(1960年9月14~15日、ロンドン、ウェンブリー・タウンホール[1]、1960年11月7~9日[2]・11月9~10日[3]、ウィーン、ムジークフェラインザール)

チャイコフスキー:交響曲第4-6番

チャイコフスキー:交響曲第4-6番

 

言うまでもなく、古くからの名盤。クセはあるので好き嫌いは分かれるかもしれませんが、テンポの速い部分の畳みかけるような勢い、アンサンブルの精度など、今なお色あせない見事な演奏です。コントラバスがゴリゴリ聞こえる録音も迫力があります。

なお、当時のレニングラード・フィルは、第2ヴァイオリンを第1ヴァイオリンの反対側(客席から見て指揮者の右側手前)に配置するいわゆる対抗配置でしたが、この録音では、おそらくレコード会社側からの要請だったのでしょう、第2ヴァイオリンを第1ヴァイオリンの奥に配置する一般的な配置で録られています。

 

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  1. チャイコフスキー交響曲第4番 ヘ短調 op.36
  2. チャイコフスキー交響曲第5番 ホ短調 op.64
  3. チャイコフスキー交響曲第6番 ロ短調 op.74「悲愴」

ピエール・モントゥー指揮ボストン交響楽団
(1955年1月26日[3]・1958年1月8日[2]・1959年1月28日[1]、ボストン、シンフォニー・ホール) 

Pierre Monteux: Complete RCA Stereo Recordings

Pierre Monteux: Complete RCA Stereo Recordings

  • アーティスト:Pierre Monteux
  • 発売日: 2018/04/27
  • メディア: CD
 

上記のムラヴィンスキー版とほぼ同時期、晩年のモントゥーがボストン交響楽団を振って録音した後期交響曲集。テンポも速めで、80歳台半ばという年齢とは思えない若々しい演奏です。こちらは、RCAへのステレオ録音を集めた8枚組ボックスで比較的安く入手することができるようです。

 

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  1. チャイコフスキー交響曲第4番 ヘ短調 op.36
  2. チャイコフスキー交響曲第2番 ハ短調 op.17「小ロシア」

クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団[1]、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団[2]
(1975年8月、ウィーン、ムジークフェラインザール[1]、1968年2月20~22日、ロンドン、ウェンブリー・タウンホール[2])

チャイコフスキー:交響曲第4番, 第5番, 第6番「悲愴」, 他

チャイコフスキー:交響曲第4番, 第5番, 第6番「悲愴」, 他

  • アーティスト:アバド
  • 発売日: 2011/09/09
  • メディア: CD
 

アバドは、1984年から1991年にかけてシカゴ響とチャイコフスキー交響曲全集を録音していますが、本盤は、それより若い時期、1970年代に録音した交響曲集からの1枚。このほか、1970年にロンドン響と第5番を、1973年に同じくウィーン・フィルと第6番を録音しています。前の3枚と比べると、かなり流麗な演奏に聞こえます。

 

なお、4枚の各楽章の演奏時間を比較してみると、

ザンデルリンク
Ⅰ-19:49 Ⅱ-10:02 Ⅲ-05:44 Ⅳ-09:26(※拍手を含む。実演奏時間は08:40ほど)

ムラヴィンスキー
Ⅰ-18:43 Ⅱ-09:15 Ⅲ-05:48 Ⅳ-07:53

モントゥー
Ⅰ-17:28 Ⅱ-08:10 Ⅲ-05:13 Ⅳ-08:40

アバド
Ⅰ-18:12 Ⅱ-09:03 Ⅲ-05:40 Ⅳ-08:33

と、総じていえば、ザンデルリンク盤が遅め、モントゥー盤が速めという感じになっていますが、やはりムラヴィンスキー盤の第4楽章のスピードは驚異的です。