鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部 神殿の巫女見習いⅣ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第二部「神殿の巫女見習いⅣ」を読みました。

テレビアニメ版を見て読み始めたシリーズの第2部の第4巻。前巻の「神殿の巫女見習いⅢ」に続いて読んでみました。

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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長い冬を終え、瑞々しい春が到来したエーレンフェスト。神殿内では、巫女見習いマインの今後について様々な動きが加速していた。彼女を嫌う神殿長の画策もあり、街は不穏な空気に包まれていく。

それでも、マインの毎日は何も変わらないはずだった。弟の誕生、インク開発による新しい本作り等、これからもずっと家族や仲間との愛おしい時間を過ごすはずだった。

だが、世界は彼女に残酷な決断を迫る―—。マインは今、大切な人々を守るため、家族への愛を胸に新たな道を歩き始める!

ビブリア・ファンタジー第二部、感動の完結編!衝撃の結末後の人々を描く書き下ろし短編集+番外編×2本、さらには椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録! 

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 本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた15節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に6編からなる短編集と番外編2編、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

神殿長・ベーゼヴァンスは、エーレンフェスト直轄地に隣接するグラーツの館を訪れ、ビンデバルト伯爵たちからマインを奪う作戦の協力を求められる。マインが疎ましい神殿長は喜んで協力することにする。

カミルの世話

可愛い弟・カミルが生まれて喜ぶマインは、おむつ替えなどカミルの世話にいそしむ。

身食いの捨て子

再び神殿に通うようになったマインは、ベンノの店を訪れ、神官長から活版印刷を止められたことを話し、色付きインクの開発やガリ版印刷の向上に取り組むと話す。神殿に行くと、捨て子が孤児院にやってくる。神官長の許可を得て、孤児院で育てることになった赤子はディルクと名付けたれ、デリアを中心に世話することになるが、その様子からマインはその子が身食いだと直感する。

ディルクについての話し合い

ディルクがおそらく身食いであることを神官長に報告すると、しばらくそれを伏せて養育するよう命じられる。神官長が魔術具を使って調べると、少し強めの中級貴族程度の魔力であることがわかる。マインは養子縁組ができないか神官長に頼んでみるが、神殿長に知られないように孤児院で育てることになる。

インク工房の跡取り達

ヴォルフの不審の死の後、インク協会の会長となったビアスがベンノの店にインクの販売を頼みにやってくる。ビアスの娘のハイディは色インクを作りたいと話し、マインは初期投資の4分の1を負担し、売り上げの1割を情報料として得ることで話がまとまり、ハイディとマインはさっそく色インクの実験にとりかかる。

色作り研究中

初日の実験が終わって、マインはその結果を整理する。次にインク工房に行ったマインは、その整理表をハイディに見せ、神殿から持ってきたパルゥ油で色インクを作って実験を重ねる。家に帰ったマインは、母親・エーファから定着剤の存在を知る。ヴィルマに使い方を教えてもらって試してみると、変色せずに絵が描けるようになる。

ロウ原紙に挑戦

色インクの目途がついたマインは、次にガリ版印刷に必要なロウ原紙を作ろうと考え、そのために必要な薄い紙を作ろうとする。そして、蝋工房に行き、いろいろな種類の蝋を買い集め、原紙を作るために必要な道具をヨハンに注文する。

デリアの進歩

お姉さんとしてディルクを可愛がるデリア。孤児院に行くマインに付いていかなければならなくなり、孤児院に行くのを嫌うデリアはいやいや付いていくが、ディルク可愛さのあまり、ディルクがいる孤児院の中に入っていく。マインはヴィルマと色インクを使った絵本作りについて話す。

それぞれの言い分

神官長の側仕えのアルノーが、ディルクの養子縁組は難しいとの神官長の伝言を伝えたことで、ディルクを家族のように思っているデリアが激高する。マインが事情を話すと、デリアも納得する。マインが家に着くと、ダームエルは騎士団からの呼び出しで東門に向かう。帰ってきた門番の父から、よその貴族が無理やり街に入ろうとしてトラブルになったことを知らされる。

いなくなった二人

5日経ってダームエルがようやく護衛に戻り、神殿に行ったマインは、デリアがディルクを連れて神殿長のもとに行ったと知らされる。デリアを解任することにしたマインは、デリアから神殿長がディルクの養子縁組を決めてくれたと語る。デリアが去った後、フランからよその貴族に招待状を出したのは神殿長だったと聞かされる。

誘拐未遂

デリアがいなくなったため、マインは孤児院で料理の手伝いをしていたモニカとニコラを側仕えに入れることを決める。家に向かうマインは、オットーに会い、貴族の馬車が偽造した許可証で門を通って中に入ったと知らされる。その時、トゥーリとマインは誘拐されかかるが、マインの魔力で何とか撃退し、父親・ギュンターはマインを抱えて神殿に向かう。

他領の貴族

神殿に戻ったマインは、フランから神官長が不在であると聞かされる。ダームエルに護衛されるマインだったが、ビンデバルト伯爵を連れた神殿長たちに見つかってしまう。ビンデバルトと神殿長はマインを捕えようとするが、マインは魔力を使ってなんとか抵抗するが、父親が傷つけられ、マインの魔力は溢れ出す。

黒いお守り

マインの強大な魔力で、神殿長は吐血し、ビンデバルトの魔力を受けたダームエルも意識を失う。そこに不在と聞かされていた神官長が入ってくる。説明を求める神官長に神殿長は強がりを見せる。マインはジルヴェスターからもらったお守りの首飾りを神官長に見せると、神官長は、ジルヴェスターの養女になる覚悟を決めれば強力なお守りになると話し、マインは覚悟を固める。神官長はビンデバルト伯爵と対峙するが、そこにジルヴェスターとカルステッドが入ってくる。

騒動の責任

神官長が魔力で伯爵をはじき飛ばし、決着が付くと、貴族らしい衣装を着たジルヴェスターは、神官長を後ろに下げると、神官長は跪く。カルステッドがジルヴェスターが領主だと告げると、伯爵は震え出し、マインは驚愕する。事情を聞かれた神殿長と伯爵はマインと神官長を悪者にして自分の助けを請うが、ジルヴェスターはマインが自分の養女だと告げ、ジルヴェスターの母親である姉を引き合いに出す神殿長の主張を退け、神殿長とその側仕えたちは捕らえられる。マインはデリアを助けるよう懇願し、孤児院で一生を過ごさせる代わりに処刑を免じてもらう。

これからのわたし

神官長の部屋に移動したジルヴェスターやマインたち。ジルヴェスターはギュンターに家族を呼ぶよう命じ、戻ってくるまでの間に、マインをカルステッドと第三夫人との間に生まれた娘にした上でジルヴェスターの養女にすることにし、神殿長にすることを決め、今までの部屋で家族と会うことはいいが、家族として会うことは禁ずるとマインに告げる。

決別

身分が変わるマインの名前はローゼマインとなり、神官長は改名と契約魔術の書類を作る。やってきた家族は、マインは死んだと公表すること、マインに会っても家族と名乗らず貴族として接することを命じられる。最後に父親・ギュンターに抱きしめられ、感情が溢れ出したマインから、祝福の光の粉が降り注ぎ、父親たちの傷は癒える。そしてマインと家族はジルヴェスターと契約魔術を結ぶ。

エピローグ

ベンノの店にいたルッツ。家族を神殿に連れていくためにやってきたギュンターを見て、マインに何かが起きたと直感するルッツ。書類仕事を終えたルッツたちに光の粉が降ってくる。戻ってきたギュンターは事情をベンノやルッツに説明する。そして遺体のないマインの葬儀が終わり、涙を流すルッツをトゥーリが慰める。

 

ここまでが本編。その後には「それから貴族街に向かうまで」と題した短編集が収録されています。次の6編からなっています。

フリーダ 貴族街訪問

フリーダは貴族街に行き、成人したら愛人になる契約を結んでいるヘンリックの家を訪れる。そこに怪我をした弟のダームエルが運び込まれる。マインに何かあったと直感したフリーダがギルドの契約魔術を調べると、マインが結んだ契約魔術の名前がローゼマインに変わっていることが分かる。

ジルヴェスター 騒ぎの後始末

神殿長たちを裁き、マインたちとの契約魔術を終えたジルヴェスターは、フェルディナント、カルステッドと今後のことについて話をする。

ルノー 私とフラン

前の主で孤児院長だったマルグリットを慕い、その寵愛を受けながらそれを拒んでいたフランを内心快く思っていない神官長の筆頭側仕えアルノーが、以前と変わったフランを見て思いを巡らす。

ベンノ 仕事を減らそう

神官長に呼び出されたベンノは、領主から印刷事業やイタリアンレストランなど多くの仕事が降ってきたことに頭を抱える。ギルド長に呼び出されローゼマインについて問われたベンノは、ギルド長を取り込み自分の負担を減らそうとする。

フラン 神殿長の側仕えになるために

ローゼマインの神殿長就任の準備に忙しく働くフラン。アルノーから前孤児院長との話を聞いた神官長はローゼマインに仕えることができるか問うが、マインの素晴らしさ、神殿長の側仕えとして仕えていく決心を語る。

エーファ 前を向いて

母親・エーファは、カミルの世話をしながら、マインのことを回想する。前向きにコリンナの工房への就職を決めたトゥーリを見て、自分も前を向いていかなければと、落ち込む夫・ギュンターを励ます。

 

最後に番外編が2編。

ベルーフの資格

ビアスのインク工房の見習いのヨゼフが、インク研究に夢中な親方の娘で妻のハイディに振り回されながら、親方となるために必要なベルーフの資格を目指すエピソード。

領主のお忍び

ジルヴェスターが領主と知りながら、お忍びで下町の森に狩りに行くジルヴェスターに同行することになったベンノの店の見習い・レオンのエピソード。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「第二部完結記念!突然はじまる巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)と題して、「小さくってかわいい」「将来の不安」「リスペクト」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

本巻で第2部は完結です。前巻までと比べ、物語が大きく展開するので、1回ざっと通読しただけでは理解が追いつかないところもありましたが、改めて読み返すと、展開が大きい分、より面白く読むことができました。

今のところ第2部の第2巻のあたりで終わっているテレビアニメ版ですが、続編の制作が発表されています。ぜひ本巻の部分まではカバーしてもらいたいところです。

続く第3部では、領主の養女となり、神殿長として務めながら本作りにさらに邁進するローゼマインの姿が描かれるのでしょう。また少しずつ読んでいこうと思います。