GWに入った休日、MOVIX柏の葉に行きました。
朝8時台の早朝、それほどにはお客さんはいません。まん延防止等重点措置が適用され、不要不急の外出などの自粛が要請されている影響もあるのでしょう。緊急事態宣言の対象となった東京都ではシネコンも休業要請を受け休館している状況ですが、個人的には、シネコンは換気もちゃんとしているので、飲食禁止にしてマスク着用を徹底し、席間を開ければ休業までしなくてもいいのでは、と思ったりもします。
この週の上映スケジュール。
観たのは「BLUE/ブルー」(4月9日(金)公開)。公開当初から少し気になっていたのですが、全国60数館での公開、うまく観に行く時間を作れず、3週目で上映を終了する映画館もけっこうあったので、行けずに終わるかと思っていたのですが、この日うまく予定が合った朝一番の時間帯(この映画館では、3週目から1日1回の上映になっていました)に行くことにしました。
上映は103+2人のシアター1。公開4週目だったこともあってか、お客さんは私のほかにもう1人だけ、席もだいぶ離れていたので、安心して観ることができました。
監督の𠮷田恵輔が、自身が長年続けてきたボクシングを題材に脚本を書いた作品。
公式サイトのストーリーによれば、
誰よりもボクシングを愛する瓜田は、どれだけ努力しても負け続き。一方、ライバルで後輩の小川は抜群の才能とセンスで日本チャンピオン目前、瓜田の幼馴染の千佳とも結婚を控えていた。千佳は瓜田にとって初恋の人であり、この世界へ導いてくれた人。強さも、恋も、瓜田が欲しい物は全部小川が手に入れた。それでも瓜田はひたむきに努力し夢へ挑戦し続ける。しかし、ある出来事をきっかけに、瓜田は抱え続けてきた想いを二人の前で吐き出し、彼らの関係が変わり始める—。
というあらすじ。
主な登場人物・キャストは、
- 大牧ボクシングジムのボクサー兼トレーナー・瓜田信人:松山ケンイチ
- 瓜田のジムの後輩で運送会社に勤めながら日本チャンピオンを目指す小川一樹:東出昌大
- 瓜田の友人で小川の恋人の美容師・天野千佳:木村文乃
- ゲームセンターに勤めジムに入会してきた初心者・楢崎剛:柄本時生
- ボクシングジムの練習生・洞口正司:守谷周徒
- 楢崎が恋しているゲームセンターの同僚・佐藤多恵:吉永アユリ
- 佐藤と仲の良いゲームセンターの同僚:長瀬絹也
- 瓜田や楢崎の対戦相手となるボクサー・比嘉京太郎:松浦慎一郎
- 他のボクシングジムのトレーナー:竹原ピストル
- 大牧ボクシングジムの会長:よこやまよしひろ
など。
物語は、ボクシング好きで練習に打ち込むが才能に乏しく試合では勝てない瓜田、瓜田の後輩でその才能で将来を期待されるが秘かにボクシングによる脳障害(パンチドランカー)に苦しむ小川、恋するゲームセンターの同僚に好かれようと軽い気持ちでジムにやってきた楢崎、そして瓜田の古くからの友人(映画では直接は出てきませんが、瓜田の初恋相手という設定のようです)で小川の恋人である千佳の4人を軸に進んでいきます。
映画は、試合のリングに向かう瓜田を映して始まった後、舞台は一変して楢崎が働くゲームセンターのシーンで始まります。
ネタバレになりますが、記憶の範囲で詳しめに内容を紹介すると、次のような感じです。
ゲームセンターで、恋する多恵に頼まれて喫煙する中学生を注意し逆ギレされて反撃できず怪我をした楢崎は、話の流れから、ボクシングしている(から手を出せなかった)と嘘をつくことになり、「ボクシングしてる風」になろうと瓜田がいるボクシングジムにやってくる。最初は基礎的なトレーニングも嫌がる楢崎だったが、瓜田に親切に指導されていくうちに、基礎を身に付け、次第に向上心が芽生える。
ボクシングを愛し、努力を重ねる瓜田が試合では負け続けるのに対し、瓜田の誘いでボクシングを始めた小川は、先輩の瓜田を慕いつつも、瓜田の友人だった千佳を恋人にし、その才能とセンスで日本チャンピオンに挑むチャンスを手にする。しかし、次第に、物忘れ、強い頭痛などボクシングの後遺症であるパンチドランカ―の症状に苦しむようになる。
そのころ、センスもあり、試合で負け続ける瓜田を軽んじる練習生の洞口がプロテストを受けることになり、楢崎も急に一緒に連れていかれるが、基本をおろそかにする洞口を差し置いて、楢崎だけがプロテストに合格する。くさる洞口は基本に忠実だけど勝てない瓜田に悪態をつくが、それに我慢できなくなった楢崎は、洞口にスパーリングを申し込む。最初は調子の良かった洞口だが、基本のガードの甘さから次第に楢崎に打ち込まれてダウンし、容態が急変して病院送りとなり、ボクシングができなくなってしまう。
迎えた小川のタイトル戦、前座で瓜田の試合と、楢崎のデビュー戦が組まれていた(オープニングのシーンはこの試合の瓜田の入場シーン)。瓜田はこれがデビュー戦のキックボクシング出身の相手に余裕を見せつけられてKO負けし、楢崎もボディの甘さを突かれてあっけなくKO負けするが、その後のタイトル戦で、見事に小川は日本チャンピオンの座を掴む。
その打ち上げで、負けが悔しくて仕方がない楢崎は、敗戦を悔しがるそぶりを見せずニコニコと振る舞う瓜田に厳しい言葉を投げるが、千佳に一喝される。その帰り、小川と千佳との別れ際、瓜田は、いつも小川が負ければいいと思っていた、と抱え続けていた思いを吐露する。小川は、分かってました、と答え、歩み去る瓜田に頭を下げる。
翌日、楢崎がジムに行くと、会長から瓜田は昨日の試合で引退したと聞かされる。瓜田の引退は小川も聞かされていなかった。その後、小川の防衛戦が組まれ、その前座に先の試合で瓜田を倒したボクサーが出ると聞いた楢崎は、自分が戦いたいと会長に申し出る。練習を重ねた2人の試合の日、楢崎は健闘するも判定で敗れ、小川は余力が残っていたが目の上を切ってレフリーストップで敗れる。瓜田はその試合を観客席の最後列でひそかに見ていた。
その試合の後、小川はボクシングを引退するが、手の震えなどの後遺症が残り、運送会社の仕事でミスを頻発するようになっていた。ボクシングへの復帰も考える小川が河川敷をランニングしていると、同じくランニングしている楢崎とばったり出会う。一方の瓜田は、魚市場で働いていたが、仕事の合間にふとボクシングを思い出し、一人シャドーボクシングをするのだった。
(ここまで)
ボクサーとして登場する3人の俳優は、身体作りを含めて見事な演技。特に、主演の松山ケンイチの身体の絞り方は凄いものがありましたし、ボクシング自体も(少なくとも素人の私には)十分うまく見えました。
瓜田と小川は、方向は違えど切ない結果に至るのですが、柄本時生演じる楢崎の成長ぶりが、未来への光を感じさせる要素として、いい役割を果たしていました。チラシにもある、平凡と非凡、憧れと嫉妬、友情と恋、それらが絡み合った複雑な想い、そして決して甘くはない現実に立ち向かう男たちの姿が巧みに描かれ、心に残りました。