鷺の停車場

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顎木あくみ「わたしの幸せな結婚 二」

顎木あくみ「わたしの幸せな結婚 二」を読みました。

2019年7月に文庫本で刊行された作品。 

背表紙には、次のような紹介文が掲載されています。 

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 継母に虐げられて育った美世は、冷酷な軍人と噂の清霞と婚約をした。誰しも不幸な結末を予測したが、いつしか清霞と美世はお互いの優しさに惹かれ合う。
 美しく強い清霞に少しでも追いつきたくて、勉強を始めた美世。二か月後のパーティでの社交デビューを目標に頑張るのは楽しいことだった。そんな中、なぜか夜ごと悪夢に苛まれ、誰も頼れず美世は体調を崩してしまう。さらに美世を狙う者が現れ、美世と清霞の気持ちはすれ違い―—。
 これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。

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主な登場人物は、

  • 斎森美世(さいもり みよ):異能を受け継ぐ名家・斎森家の長女。19歳。異能・見鬼の才がなく、継母や義妹に虐げられてきたが、清霞との縁談で一緒に暮らすようになり、正式に婚約した。

  • 久堂清霞(くどう きよか): 異能を受け継ぎ、他家の追随を許さない名家・久堂家の当主。27歳。帝大を出て帝国陸軍に入り、少佐として異能者で構成される対異特務小隊を率いている。冷酷無慈悲な人物として有名。

  • ゆり江:清霞を幼い頃から親代わりに世話してきた使用人の老女。

  • 久堂葉月(くどう はづき):清霞の姉。17歳のときに大海渡征と結婚し、2年後に旭を生むが、夫の親族との確執が原因で離婚、今は久堂家に戻っている。

  • 大海渡征(おおかいと まさし):帝国陸軍参謀本部の少将で清霞の上官。大海渡家の跡継ぎの40歳。

  • 堯人(たかいひと):帝の次男。異能である天啓の能力を持ち、次の帝位の最有力候補。

  • 薄刃澄美(うすば すみ):美世の実母。薄刃家から斎森家に嫁いで美世を生むが、美世が2歳のときに病気で亡くなった。

  • 鶴木新(つるき あらた):中規模の貿易会社「鶴木貿易」を営む鶴木家の御曹司の24歳。本名は薄刃新で、美世の従兄。

  • 薄刃義浪(うすば よしろう):先代薄刃家当主で、美世の祖父。
  • 五道(ごどう):対異特務小隊で清霞の側近を務める隊員。

  • 大海渡旭(おおかいと あさひ):大海渡少将の息子。
  • 辰石一志(たついし かずし):前当主の父・実が騒動を起こしたため久堂家の麾下に入った辰石家の当主を引き継いだ長男。

  • 斎森真一(さいもり しんいち):斎森家の当主で美世の父。辰石実とともに騒動を起こし帝都の邸宅が全焼したため、今は地方の別邸に移っている。

というあたり。

本編は、序章・終章と5章から構成されています。各章の概要・主なあらすじは次のようなもの。

序章

新は、興味から、話に聞いていた斎森美世を見に街中に出る。倒れこむ美世を腕を伸ばして支えた新は、自分がこの女性を守っていくのかという妙な納得感を抱く。一方、帝は、自分の息子がこの国を治めていくために、異能を潰そうと、青年に行動を許可し、『オクツキ』の霊を里に誘導するよう侍従に命ずる。

一章 悪夢と不穏な影と

騒動が終結し、平穏が戻った美世だが、このままではいけないと、淑女としての教育を受け直したいと清霞に相談し、清霞は姉の葉月を教師役として呼ぶことにする。しかし、毎晩のように悪夢にうなされる美世の体調は悪化していく。一方、大海渡、辰石一志とともに宮城を訪れた清霞は、堯人から、オクツキの封が破られたと聞かされる。

二章 栗色の髪の彼

葉月から指導を受け始めた美世だったが、予習や復習で、睡眠時間は悪夢と合わせてますます削られていき、街に出たとき意識がもうろうとなり倒れそうになったところを、若い男性に助けられる。一方、清霞は、大海渡を通して宮内省から派遣された鶴木新と面会する。数日後、美世の料理の腕前を褒める葉月は、料理が苦手だったことが原因で離婚することになった自分の体験談を話す。清霞が出かけている間に、新が清霞との打合せのため自宅を訪ねてくる。それは美世が倒れそうになったときに助けてくれた男性だった。新は、自分にはあなただけの役割をあげられる、興味があったら連絡してほしいと言って帰っていく。

三章 薄刃家へ

自宅に行ったために打合せに遅れてきた新は、清霞に美世の具合が良くないことを責める。帰宅した清霞は、思っていることを話してくれない美世を責めるが、弱っている美世は意識を失ってしまう。意識が戻った美世は、清霞に言われ、一緒に車ででかける。「鶴木貿易」とある建物に入ると、清霞は新を呼び出す。3人が邸宅に移動すると、老爺が出てくる。それは祖父の薄刃義浪だった。新は、美世には強力で貴重な異能があると語り、義浪は美世を引き渡してもらうと告げる。新と清霞が勝負するが、幻を出現させて戦う新に敗れ、清霞は美世を置いて出て行く。帰宅して葉月に責められる清霞だったが、五道から緊急事態との連絡が入り、屯所に向かう。一方、薄刃家の邸宅に残った美世は、新や義浪から、薄刃家の異能や、母・澄美についてなどの話を聞かされる。そこに、清霞が敵に撃たれたとの知らせが入る。美世の願いを受け入れ、新は美世を連れて薄刃家を出る。

四章 暗闇の中の光

美世が新の運転する車で家に向かうと、清霞は布団に横たわっていた。美世はどうしたら異能が使えるか新に尋ね、新の助言に従って、清霞の意識の中に入りこむ。そこで見つけた清霞に率直な気持ちを伝えて2人は仲直りし、清霞は意識を取り戻す。

五章 真実を知るパーティ

それから日が過ぎて、9月、目標としていたパーティの日がやってくる。宴もたけなわとなったころ、美世は清霞に連れられて堯人と会う。そこで堯人は、母・澄美が斎森家に嫁いだ事情や、今回の一連の事件の真実を美世に話す。それは、薄刃家の異能を怖れる帝が起こしたことだった。

終章

日常を取り戻した久堂家の朝。もう悪夢を見なくなっていた美世は、清霞と他愛もない会話を交わす。そこに新が訪ねてきて、自分を美世の護衛として雇わないかと提案する。その返事を保留して、清霞は出かけていく。

 

(ここまで)

 

著者があとがきでも書いているように、第1巻では明かされなかった母・澄美が結婚した事情や、美世が幼いころに異能を発現しなかった原因など、第1巻で謎のままとなっていた背景が明らかにされる巻になっています。

第1巻と比べると展開にワクワク感が少ない印象でしたが、思いがけず帝やその後継も登場してきたので、次巻以降さらに大きく展開することを期待したいと思います。