鷺の停車場

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アニメ映画「すずめの戸締まり」


シネプレックスつくばで「わたしのお母さん」を観た後、ちょうどいい上映回があったので、「すずめの戸締まり」(11月11日(金)公開)も観てみることにしました。


館内は、「すずめの戸締まり」一色とまではいきませんが、かなりの数の展示などが置いてありました。


上映は、さっき「わたしのお母さん」を観たのと同じ151+1席のシネマ2。お客さんは10人弱という感じ。公開初日からの3日間の興行収入が18億円超と同じ新海監督の「君の名は。」、「天気の子」を超えるロケットスタートで、公開2週目の週末までで早くも40億円を超えていますが、郊外のシネコン、平日の午後、中高生はまだ授業中であろう時間帯ということが大きいのだろうと思います。

私がここで観ることにしたのも、「わたしのお母さん」を観たついでということに加え、まだまだ混雑しそうな週末の近場や都心の映画館とは異なり、平日のこのタイミングでここで観れば、近くに他のお客さんがおらずゆったりした状態で楽しめるのではという期待からだったので、その期待どおり混んでなくて良かったです。


チラシの表裏。


チラシの中見開き。


その前に配布されていた別バージョンのチラシ。


日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女の解放と成長を描くオリジナルの冒険物語で、原作・脚本・監督・絵コンテ・編集:新海誠、キャラクターデザイン:田中将賀作画監督:土屋堅一、美術監督:丹治匠、音楽:RADWIMPSなどの主要スタッフ。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。

扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。
すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。

「すずめ すき」「おまえは じゃま」

ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!
それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。
逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、すずめは慌てて追いかける。

やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。
旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所ですずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった。

 

・・・というあらすじ。

 

公式サイトで紹介されている登場人物は、

  • 岩戸 鈴芽(いわと すずめ)【原 菜乃華】:九州の静かな町で、叔母と二人で暮らす17歳の女子高校生。広大な廃墟の中、幼い自分が草原をさまよい歩く不思議な夢をよく見る。

  • 宗像 草太(むなかた そうた)【松村 北斗】:”災い”をもたらす扉を閉める閉じ師」の青年。扉を探す旅の途中ですずめと出会うが、ある出来事をきっかけに、すずめの椅子に姿を変えられてしまう。

  • ダイジン【山根 あん】:すずめの前に突如現れた、人の言葉を話す謎の白い猫。扉が開く場所に出没し、すずめたちを翻弄する。

  • すずめの椅子:すずめが幼い頃に使っていた子供用の椅子。脚が1本欠けている。草太が姿を変えられてしまい、3本脚で動き出すようになる。

  • 岩戸 環(いわと たまき)【深津 絵里】:漁協で働くすずめの叔母。すずめが幼い頃から二人で暮らしその成長を見守るが、過保護なあまりつい口うるさくなってしまう一面も。

  • 岡部 稔(おかべ みのる)【染谷 将太】:すずめの地元の漁協に勤めている環の同僚。環に片想いしている。

  • 二ノ宮 ルミ(にのみや るみ)【伊藤 紗莉】:女手一つで幼い双子を育てる、神戸のスナックのママ。ヒッチハイクをしていたすずめを拾う。

  • 海部 千果(あまべ ちか)【花瀬 琴音】:愛媛を訪れたすずめが出会う、同い年の快活な少女。実家は家族経営の民宿。

  • 岩戸 椿芽(いわと つばめ)【花澤 香菜】:すずめの母。手先が器用で、料理や工作が得意。環の姉でもある。

  • 芹澤 朋也(せりざわ ともや)【神木 隆之介】:草太の友人。口ぶりや振る舞いは乱暴だが友達思いな青年。愛車は赤いスポーツカー。

  • 宗像 羊朗(むなかた ひつじろう)【松本 白鸚】:草太の祖父。閉じ師の師匠でもあるが、現在は東京の病院に入院している。

という感じ。

 

やはりレベルの高い作品。興行的に成功が期待される(=失敗が許されない)状況で制作された作品だったはずですが、それを確実にクリアするであろう作品を作り上げるところは、新海監督の確かな力量を感じます。注目度の高い作品なだけに、良し悪し様々な評価があるのだろうと思いますが、私自身は「天気の子」よりもいい作品だと感じました(ただ、画の美しさという意味では「天気の子」の方が良かったかもしれません)。

廃墟にある「後ろ戸」が開くと、「みみず」のような赤黒い物体が成長していく。普通の人々には見えないそれが巨大化して、地面に倒れた時、巨大な地震が発生する。古くは関東大震災もそれで発生したのだった。「閉じ師」は、災いを防ぐために、扉を閉じて鍵を閉めて、それを閉じ込める・・・というのが、この物語の基本的な舞台設定になっていて、日本の古い伝承な姿をまとわせた神話的なファンタジーの中で、スケールの大きな物語を描いていることは、「君の名は。」以降の新海監督作品と共通しています。前作の「天気の子」では、社会の救済・発展といった社会的な要素と、恋する人への思いといった個人的な要素を二律背反関係に置いた物語の構図に議論がありましたが、本作では、草太への想いからのすずめの行動によって、結果として社会も救われるという、「君の名は。」と共通する構図になっています。

これまでと大きく違うのは、東日本大震災という、まだ人々の記憶に残る大災害を、かなり直接的に素材として使っていること。「君の名は。」では、メタファーとして暗示されるにとどまっていましたが、主人公のすずめは3.11で母親を亡くして叔母に引き取られて育ったという設定ですし、クライマックスで描かれる光景は、津波で壊滅的な被害を受けた東北地方沿岸部の風景を思い起こさせるものになっています。このあたりは、特に評価が分かれる部分かもしれません。

 

ここから先は、私の根拠のない想像も含めた勝手な感想になりますが、レベルの高さを感じる一方で、「君の名は。」以降の新海監督作品の路線に、ちょっと行き詰まり感を感じたのも事実。他の作品についての新海監督のコメントを拝見すると、ご自身も、興行的な成功が求められる作品とは別に、より自由に作品を作りたいという欲求があるのではないかと感じます。新海監督のこれまでの映画は、いずれも自らの原作・脚本で作品を作り上げてきていますが、(他の方による)原作ものなど、これまでとは毛色の異なる作品も観てみたい気がします。