鷺の停車場

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石塚真一「BLUE GIANT」第5巻~第7巻

劇場版アニメ「BLUE GIANT」を観て読み始めた、石塚真一さんの原作マンガ、単行本の第7巻まで進みました。第4巻までについては既に書いたので、第5巻~第7巻について書きたいと思います。このあたりが、ちょうどアニメ映画で描かれた上京後の大の物語の部分、映画でいうと、3分の2くらいまで来た感じでしょうか。

 

これらの巻に出てくる主な登場人物を紹介すると、

  • 宮本 大:主人公。仙台出身。高校に入ってからジャズに魅せられ独学でテナーサックスの練習に打ち込み、卒業後、ジャズプレーヤーを目指して上京し、雪祈り、玉田とジャズトリオ「JASS」を組み、活動を始める。

  • 沢辺 雪祈:大が出会った同じ18歳のピアニスト。青丘学院大学1年生。

  • 玉田 俊二:上京した大が転がりこんだ東京の大学に進んだ大の高校時代の友人。大学のサッカーサークルを辞めてドラムを始める。

  • アキコ:ジャズバー「TAKE TWO」のママ。雪祈たちにお店を練習場所として提供する。

  • 上野:青丘ジャズ研のドラマー。

  • 川喜田 元:有名なジャズギタリスト。JASSに興味を持ち、雪祈の頼みでJASSを平に紹介する。

  • 望月:JASSの初ライブの時、大が恵比寿駅前でビラを渡し、ライブに来てくれたサラリーマン。

  • 森 純平:横浜を拠点に活動し、結成10周年を迎えたジャズグループ「ザ・ファイブ」のリーダーでサックス奏者。

  • 阿川 勇也:「ザ・ファイブ」のピアニスト。

  • 友部 渡:「ザ・ファイブ」のドラマー。

  • 平:日本で最高峰のジャズクラブ「So Blue」事業部。

  • 宮本 彩花:大の妹でダンスに夢中な小学6年生。

なお、この巻ではほぼ出番がありませんが、仙台時代の主な登場人物は、

  • 宮本 雅之:大の3歳上の兄。高校を出て仙丸化学工業の向上で働いており、一人暮らしをしている。大のためにローンでセルマー製のテナーサックスをプレゼントした。

  • 父:スーパー「グレート」の店長を務める大の父。ジャズプレーヤーを目指す大を後押ししてくれた。

  • 三輪 舞:大の高校時代の同級生の長身の女の子で、大が想いを寄せていた。

  • 由井:仙台で個人スタジオで音楽教室を開く男性。大の才能を見出し、大が上京するまで、サックスを無償で教えた。

  • 小熊:大がサックスのリードを買いに通う「ひろせ楽器」の店長。地元のジャズバー「バード」での大の初ステージをお膳立てしてくれた。

  • 川西:仙台のジャズバー「バード」のマスター。大に由井を紹介した。

など。

 

各話のあらすじを、ごくごく簡潔に紹介すると、次のような感じです。

 

まず、単行本の第5巻。

第33話 GREETING

「JAZZ SPOT 二五一」でのライブセッションで左手だけで演奏をやり切ったピアニストに惹きつけられた大。トイレでそのピアニストと偶然鉢合わせしたのがきっかけで話し込み、沢辺雪祈と名乗るその男は、オレと組もうぜ、と誘う。

第34話 TIME AND SPACE

沢辺に誘われて一緒に日本で一番のジャズクラブ「So Blue」に行った大は、立見席で本場のプレーヤーの演奏に圧倒され、沢辺に組もう、と返事する。

第35話 JAZZ PROCESS

バイトに打ち込む沢辺に、サックスが戻ってきた大から電話がかかってきて、「TAKE TWO」に呼び出される。大のサックスを聴いた沢辺は、心を揺らぶられる。

第36話 TIME WAS

大が帰った後、沢辺はアキコに心の内を打ち明ける。翌日、沢辺から「TAKE TWO」に呼び出された大は、沢辺と合わせるが、コードから外れた大の演奏に、枠組みあってのソロだと弾いて聞かせる。その後、沢辺は、母親が開いているピアノ教室に来ていたが、家族の夜逃げでピアノ教室を辞めていった女の子・アオイちゃんの思い出を話す。

第37話 SO WHAT

玉田の部屋に押し掛け、ドラマーが必要だと熱く語る2人。一方、玉田は大学で入ったサッカーサークルの方向性に違和感を感じ、サークルを辞める。大の練習場所の橋の下にやってきた玉田は、大のサックスを聴いて、ドラムを始めようと考える。

第38話 TO BEGIN

ドラムを始めようとする玉田を、大は沢辺との練習場所の「TAKE TWO」に連れてくる。一緒に合わせた沢辺は、初心者の玉田と組むことに猛反対する。一方、本気でドラムをやろうと決意した玉田は、合コンの誘いを断り、8万円でエレキドラムセットを購入して練習を始める。

第39話 WISH

素人じゃダメだと考える沢辺は、久しぶりに大学のジャズ研に顔を出し、ドラマーを探す。一方の玉田は、ドラム教室の体験レッスンに行き、幼い子供に交じってドラムを教わる。沢辺はジャズ研の上野を連れてきて「TAKE TWO」で大と合わせるが、上野は2人のレベルの高さについてこれない。

第40話 JAZZ EDUCATION

上野が帰った後、大は玉田のドラムで沢辺と合わせる。玉田に合わせて抑える大に、沢辺は玉田をメンバーにするのは無理と言い放つ。大は間口を狭めることに反対するが、沢辺は、今メンバーにするのは無理だが、好きに練習に来ていいと話す。その夜、沢辺は母親に電話を掛け、ドラムの教え方を尋ねる。

なお、その後には、BONUS TRACKとして、ジャズバー「TAKE TWO」のママ・アキコの回想を描いた短編が収められています。

 

続いて、単行本の第6巻。

第41話 NEVER LET ME GO

自宅アパートで曲作りに取り組む雪祈に、突然、ジャズギタリストの川喜田元が新しいピアノ奏者として雪祈を試したいと言っていると電話が入り、川喜田のライブにピアニストとして参加し、川喜田はオレのバンドに参加してよ、と誘うが、その帰り、川岸で練習する大の音を聞く雪祈は、あいつらじゃねぇ、やっぱりコイツなんだと感じ、手にしたギャラ2万円で、大を焼肉に誘う。

第42話 ONCE AROUND

大、玉田を焼肉屋に連れて行っておごった雪祈は、再び曲作りに打ち込む。気分転換に御茶ノ水の楽器店に出かけた雪祈は、楽器店で描かれる人間模様を目にし、帰りに部屋で練習する玉田たちを外から眺め、最初の曲「First Note」を書き上げる。

第43話 WHAT'S NEW

新しい曲の練習を始めた3人だったが、雪祈にお前の強い音はどこに行ったと指摘された大は、バスケを辞めて肺活量が落ちたのではないかと思い、ランニングなどを始め、飛び入りステージを開催していたジャズバー「Zoot」で、飛び入りで演奏し、観客を圧倒するが、音が大きくて怒られる。

第44話 マーチングマーチ

大は、まだ早いと言う雪祈の反対意見を押し切って、アキコの紹介で初ライブを行うことになった3人。大は自分でチラシを作り、恵比寿駅前で配るが、もらったそばから捨てられてしまう。チラシ2,000枚を配り、ジャズハウス「Seven Spot」でのライブの当日を迎えるが、観客は、常連客3人と店長だけだった。

第45話 MAIDEN VOYAGE

演奏を始めた3人。雪祈のピアノと大のサックスは、観客を圧倒し、遅れて来店した大がチラシを渡した望月も衝撃を受ける。

第46話 LET ME DOWN EASY

演奏が終わり、4人の客は喝采を送るが、2人についていけなかった玉田は、オレ一人の負けだ、と落ち込む。自販機のジュースで乾杯する3人だが、玉田はオレのドラム、クソ以下だった、と言うが、雪祈は、思ってたより悪くなかった、と言い、大も、誰が何と言おうといいライブだった、と玉田を励ます。

第47話 SONG IS YOU

翌日、気を取り直して練習場所に現れた玉田だったが、ビビッて手が動かずうまく叩けない。練習場所を出て、公園で落ち込む玉田だったが、マウスピースだけでトランペットの練習をする初心者の中学1年生に、玉田は、先輩ぶっ飛ばしちゃえよ、と励ます。牛丼や餃子などをガッツリ食べた玉田は、全員ぶっ飛ばしてやる、と気持ちを入れ替える。

第48話 I'LL SEE YOU AGAIN

ジャズスポット「J」でライブをするJASSを、川喜田が聴きに来る。2年前の松本のジャズフェスで高校時代の雪祈の演奏を聴いて気にかけていたのだ。入店した川喜田に店長は、客数こそ多くないがなかなかいい、荒削りだけど勢いがある、と言う。実際に演奏を聴いて目を奪われた川喜田は、ギターを手に、ちょっと負けに行ってくるわ、と言ってステージに上がる。

なお、単行本の末尾には、BONUS TRUCK1としてジャズギタリスト・川喜田の回想を描いた短編、BONUS TRUCK2として隅田川の川岸で練習する大を描いた短編が収められています。

 

次に、単行本の第7巻。

第49話 US THREE

一曲だけ入れて、と川喜田はステージに上がり、雪祈は大に、これ勝負だから負けるな、と声をかけ、演奏が始まる。演奏を終え、川喜田は雪祈と握手して帰っていく。
翌日、スタジオの仲間に、沢辺の上手さには負ける気も負けた気もしないが、大のサックスには参った、と漏らす。川喜田はSNSでJASSのことをつぶやき、次のライブの観客は各段に増える。演奏後、雪祈と大は観客に囲まれる。それを眺める玉田に、初ライブから来てくれている初老の男性が声を掛け、良くなっている、ボクは成長する君のドラムを聴きに来ているんだと励まし、玉田は目頭が熱くなる。

第50話 THE NEARNESS OF YOU

その夜、やっとまとまった客が入り、3万円のギャラをもらう。3人は1万円ずつ分け、玉田はその金で教材を買って練習に励み、音楽教室のドラムの先生にビールを買う。雪祈は実家とアキコに花を買い、大は迷った末にATMで4万円を下ろし、ギャラと合わせて4万9,800円でフルートを買い、仙台の彩花に送る。

第51話 THE SIDEWINDER

さらにライブを続け、8回目のライブを行ったJASSの3人。雪祈は、自分が目指す自動モードのソロに大は時々入るのに、オレができないのはナゼだ、と焦りを感じる。一方の大は、一流の演奏を聴いて、オレは一瞬しかつながれず、脱線してしまうのはなぜかと思い、練習しながらその原因を考え、丁寧に楽器の手入れを行う。

第52話 AS TIME GOES BY

横浜でライブを行った「ザ・ファイブ」のメンバーたちは、森が阿川のピアノソロの間手拍子を入れたことで、終了後ちょっとした口論になる。変化が必要だと考える森は、レコード会社に売り込みに行くが、年齢が30代半ばと聞いて、遅すぎる、ウチでは出せないと断られる。そんな森に、川喜田から連絡が入り、JASSを観に行けと勧められる。

第53話 UN POCO LOCO

恵比寿のジャズバー「M」で行われるJASSのライブに行った「ザ・ファイブ」の4人は、その演奏に圧倒される。森は、大が仙台の定禅寺のジャズフェスで見た少年だと気付き<注:第15話 I KNOW(第2巻所収)参照>、腕を上げていると感じる。終演後、森たちは3人を誘って飲みに行く。昔の自慢話をする森に雪祈は、森さん達は全員才能ないんじゃないですか、と厳しく言い放ち、大は、日本で一番になる、そのためには全部出し切らないと、ゴールのない世界でずっとやり続けられるのは最高に幸せ、と熱く語る。2人の言葉に何かを感じた4人は、演奏に打ち込む。

第54話 NIGHT RIDER

「So Blue」のステージに上がることを目指して、曲作りに打ち込む雪祈は、勝者になるためにはオリジナルの曲が必要、と大にも曲を作るよう求める。どうしたらいいか悩む大は、たまたま電車で隣に座ったサラリーマンが、一念発起して50万円を貯めてトランペットを買ったと話し、興味を持った大はその練習についていく。その音は、ものすごくヘタだったが、楽器に合っていた。それに何かを感じた大は、オリジナル曲のメロディーを作る。

第55話 DREAMER

新曲作りに励む雪祈は、川喜田の家を訪問して、どうやったら「So Blue」のステージに立てるか尋ね、10代のうちに立てればセンセーショナル、知名度が上がり、アルバムリリースにも近づくと、川喜田に助力をお願いする。川喜田の口添えで、「So Blue」の平から雪祈に連絡が入り、雪祈は、平に急かすように何度も連絡を取り、ジャススポット「禅」で行うライブに来てもらうことに成功する。

第56話 HOW MY HEART SINGS

平もやってきて、ライブが始まる。終演後、雪祈が近くのバーにいるという平を訪ねると、平は、ドラムは一生懸命叩いており技術不足だが好感が持てる、サックスは面白い、将来が気になる、と好反応だったが、雪祈のピアノについては、全然ダメだ、小手先の技術の連続でつまらない、全力で自分をさらけ出すのがソロだ、君はソロができないのか、そもそも音楽以前に人をバカにしている、と厳しい言葉を投げる。雪祈は、ショックに打ちひしがれながらも、あえて厳しいことを言ってくれたことに、あの人、いい人だな、ソーブルーはやっぱスゲエな、と思うのだった。

なお、単行本の末尾には、BONUS TRUCKとして玉田の回想を描いた短編、さらに、作者の石塚真一によるジャズ奏者のハービー・ハンコック(ピアノ)ウェイン・ショーター(サックス)のインタビュー記事が収められています。

 

(ここまで)

いよいよ、劇場版アニメで描かれた部分に入ってきました。まだ途中ですが、劇場版アニメでは、川喜田がJASSのライブを観に来て飛び入りで勝負するエピソードや、「ザ・ファイブ」がライブに観に来て一緒に飲むエピソードは省かれ、代わりに「かつしかジャズフェスティバル」に出演して観客を魅了するエピソードが、沢辺が平から厳しい言葉を受ける前に挿入されていましたが、それを除けば、もちろん、時間の関係で、劇場版では細部のエピソードが省略されたところはあるものの、基本的な展開には違いはなく、これまでのところ、劇場版アニメとの相違に引っ掛かりを感じることなく読み進めています。続巻も楽しみです。