鷺の停車場

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映画「ほつれる」

週末の午後、MOVIX柏の葉に行きました。


14時ちょっと前の時間帯、けっこうロビーは賑わってました。


この日の上映スケジュールの一部。この日は28作品・31種類の上映が行われていました。かなり上映作品が多いです。

この日観るのは「ほつれる」(9月8日(金)公開)。全国43館とやや小規模での公開、公開前から気になっていた映画で、すぐに上映回数が減ってしまいそうな気がしたので、公開初週に行ってみることにしました。


上映は103+2席のシアター1。お客さんは12~3人ほど。公開初週の週末としてはかなり寂しい入りです。


(チラシの表裏)


(その前に配布されていた別バージョンのチラシ)

 

冷め切った夫婦生活の中、曖昧な関係を続けてきた恋人が目の前で死に、揺れる心を抱えた女性の姿を描いたオリジナル・ストーリーで、監督・脚本は加藤拓也。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

平穏に見えた日々が静かに揺らぎ始めるとき、彼女の目に映るものとは―。
人とのつながり、人生の在り方を見直していくひとりの人間の歩みを追う。

綿子と夫・文則の関係は冷め切っていた。綿子は友人の紹介で知り合った木村とも頻繁に会うようになっていたが、あるとき木村は綿子の目の前で事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。心の支えになっていた木村の死を受け入れることができないまま変わらぬ日常を過ごす綿子は、木村との思い出の地をたどっていく…。

 

というあらすじ。

 

公式サイトで紹介されている主な登場人物・キャストは、

  • 綿子【門脇 麦】:主人公。専業主婦だが、夫との関係は冷え切っている。

  • 文則【田村 健太郎】:綿子の夫。前妻との間に息子・ヒロムがおり、週に1日ほど、子どもの面倒を見ている。

  • 木村【染谷 将太】:綿子の恋人。ライター。

  • 英梨【黒木 華】:綿子の親友。

  • 哲也【古舘 寛治】:木村の父。山梨県に暮らしている。

  • 依子【安藤 聖】:木村の2歳上の妻。学生時代から木村と付き合っており、そのまま結婚した。

  • 中田【佐藤 ケイ】:綿子が訪れた道の駅の店員。

  • 原田【金子 岳憲】:綿子が訪れた旅館の受付。

  • 笹井【秋元 龍太朗】:綿子が訪れた靴屋の店員。

  • 救急センターの声【安川 まり】:綿子が119番通報をしたときに電話に出た救急センターの女性。

というもの。

 

登場人物に共感はできませんでしたが、映画としてはうまく構成されている作品だと思いました。ここまで関係が冷え切っているのなら、子どももいないのだし、早く別れればいいのに、という思いが最初から澱のようにたまっていき、綿子が家を出て行く、という結末もハッピーエンドのように映りましたが、文則との関係について正面から向き合うことを無意識に避けていた綿子が、木村の不慮の死、そして木村との関係に気づかれたことによって、避けることができなくなり、自分なりに新たな一歩を踏み出す、その過程が、どこかピンと張りつめたような緊迫感が漂う雰囲気の中で描かれていました。

主人公を演じた門脇麦の演技はさすが。木村に対するときと文則に対するときの表情・テンションの違い、心情をも表現する細部の所作など、巧みだなあと思いました。その夫役の田村健太郎も、口ぶりは優しいが粘着質で実は利己的な文則を上手く演じていました。

 

ちなみに、その後明らかになったこの映画館の公開2週目の上映スケジュールでは、やはりというべきか、本作の上映は1日1回に減ってしまいました。あまりに入りが悪いと、2週間で上映が打ち切.られてしまうのかもしれません。広く人気を集めるような作品ではないですが、そうなってしまうのは、もったいない作品のように思います。

 

 

ここから先はネタバレですが、自分の備忘を兼ねて、より詳しいあらすじを記してみます。(細部は多少の記憶違いがあるだろうと思います)

 

賃貸マンションの一室。出かける準備をする綿子に、起きた文則は厚い布団に替えていいかと尋ねる。わかった、出しておくと返事して、綿子は家を出る。

小田急新宿駅から特急ロマンスカーに乗った綿子。綿子の指定席の隣には、既に木村が座って待っていた。ロマンスカーに乗り、2人はグランピングを楽しむ。木村は綿子にお揃いの指輪を渡し、それぞれ結婚指輪をしていない方の薬指にはめる。1泊して再びロマンスカーで帰り、終点の新宿に着くと、綿子は木村にもらった指輪を外し、財布の小銭入れの中に入れる。駅を出て木村と一緒に食事をする綿子は、文則が前妻の子を見る日が木曜になったからと話し、今後の木曜に会う約束をして別れるが、その直後、木村が交通事故に遭ってしまう。視線の先で交差点で倒れている木村を見た綿子は慌てて119番通報するが、応対する救急センターの女性に場所を聞かれて、電話を切り、反対方向に歩き出す。

帰宅した綿子は、気持ちがすっかり離れている夫の文則から話をしたいと持ち掛けられるが、動揺する綿子はそれをはぐらかす。スーパーに買い物に行った綿子に、親友の英梨から木村が死んだと電話が入り、告別式の場所などの連絡を受けるが、木村の死を受け入れられない綿子は、告別式に出なかった。

文則は、家を買おうと思ってている、綿子との関係をやり直したいと話す。綿子は関心が持てず受け流そうとするが、文則に一緒に家の内見に行く約束をさせられる。そして、文則の誘いで旅行に行く。文則と一緒にリムジンバスで羽田空港に向かう綿子に、かつて木村と羽田空港に行ったときの思い出が蘇る。

英梨と会った綿子は、突然、山梨に行きたいと言い出し、英梨の車で高速に乗る。綿子は、告別式に出なかったから木村の墓参りがしたいと言い、まだ四十九日前なのは分かっていたが、山梨にある木村の家の墓をお参りする。そこに、墓にはまだ妻しか入っていない、と木村の父・哲也が姿を現す。木村について話を聞く綿子に、哲也は、中学生のころからだんだん仲が悪くなって、全然話さなくなっていたこと、木村の結婚式にも自分は出なかったことなどを2人に話す。そこに、文則から電話が入る。この日は実は文則と約束した家の内見の日だったが、綿子はすっかり忘れていたのだ。不倫を疑う文則は、電話を替わってほしいと言って、英梨や哲也とも話をする。その後、綿子と英梨は、木村の実家である哲也の家を訪れ、木村の卒業アルバムを見せてもらう。

英梨とバーベキューをして帰った綿子は、口ぶりは優し気だが理詰めでねちっこい文則から責められるが、衝突を恐れるように、途中で責めるのをやめる。

日を改めて仕事を一時抜け出した文則と内見に行った綿子。そこで文則に子どもの面倒をみてほしいと連絡が入るが、綿子が熱っぽいと聞くと、自分の母に子どもの面倒を託し、仕事も早めに切り上げて帰ると言って仕事に戻っていく。

しかし、買い物をして綿子が家に帰ると、家の合鍵を持っている文則の母が、リビングで文則の息子の面倒を見ていた。その声を聞いた綿子は、2人に会わないように自分の部屋に入り、ベッドに横たわる。

綿子が目を覚ますと、文則が母に電話をしていた。勝手に息子を連れて自分の家に入ってきたことに苦情を言い、家を買うが合鍵は渡さないつもりと言うが、不満を漏らす母に、最後はなだめるように、会って話そうと言って電話を切る。

結婚記念日、綿子は革靴を、文則は財布をそれぞれ相手にプレゼントする。文則が買ってきた年代物のワインを開けて飲む2人。文則は上機嫌になって羽目をを外し、綿子にキスをするが、綿子はトイレに行きたい、と言ってそれを途中で遮る。文則が酔って眠った後、綿子は財布の中身をプレゼントされた財布に移し替えるが、酔って手元が雑になり、硬貨などを床に落としてしまう。

翌日、財布の小銭入れに入れていた木村からもらった指輪がないことに気づいた綿子は、家の中を探しても見つからず、自分で車を運転して、英梨と行った場所を訪ね、指輪の落し物がないか探し回る。そして、哲也の家で尋ねると、哲也は指輪を出して渡す。喜ぶ綿子だったが、それは木村の妻・依子から相談を受けて渡された木村が持っていた指輪だった。哲也は、綿子と木村の関係を問い質しはしないが、ここまで探しに来るのはよほど大事なものなのだろう、僕一人の胸にしまってはおけないと綿子に告げる。その夜、飛び込みで温泉宿に1人で泊まった綿子は、文則に謝りの連絡を入れる。

そして、綿子は、木村の妻・依子から呼び出されて会い、問い質す依子に木村と知り合って仲良くなった経緯を話す。依子は、自分の方が木村より2つ上で、大学時代から付き合って15年一緒にいたことを話し、どうして不倫したのか木村に聞いたみたい気持ちを明かす。

綿子が帰宅すると、文則が綿子が探していた指輪を見つけていた。問い質しても事情をなかなか説明しない綿子に、文則は不倫の疑いを強めるが、綿子は不倫はしていない、と強弁し、先に不倫したのは文則、子どもに会いに行くというので黙っていたけど、そこで不倫していた、と逆上して文則を責める。そして、それは好きだった人からもらったもの、もう死んじゃったけど、と打ち明けるが、死んだなんて信じられないという反応をする文則に、死んだのだと主張する綿子の目には涙が浮かぶ。

綿子は、休憩、と言って家を出て行くが、しばらくして戻ってきて、文則の隣に座って、別れたい、と切り出す。分かったと言う文則に、綿子は、文則は元に戻ればいい、自分と文則の関係も不倫始まりだったが、不倫関係だった頃の方が、お互いに優しくて、うまくいっていたと語る。文則は、綿子の手を握り、本当は別れたくない、と言って頭を綿子の肩に預けるが、綿子は、それを拒み、木村君に会いたい、と言って涙する。

日が変わって、綿子は荷造りをして家を出て、海岸沿いに車を走らせるのだった。

(ここまで)