鷺の停車場

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映画「手」舞台挨拶付上映

かなり久しぶりに渋谷に行きました。


渋谷駅東口。新しいビルもできて、以前とはイメージがちょっと変わった印象です。

向かったのはヒューマントラストシネマ渋谷


明治通りを原宿方面に5〜6分歩いて、映画館が入っているココチビルに到着。


入口にあった映画館の上映時間の案内。


エスカレーターで3階へ。


さらにエレベーターで8階まで上がります。

この日観るのは、映画「手」(9月16日(金)公開)。日活ロマンポルノ50周年を記念して企画された「ロマンポルノ・ナウ」の第一弾ですが、映画情報サイトの口コミ評価を見ると、ロマンポルノのかつてのイメージとは異なる良作のようで気になっていました。当初は2週間の予定だった上映期間が延長され、この日は上映終了後に出演者や監督が登壇するトークショーが開催されると知って、行ってみることにしました。


ロビーには、おそらく以前の舞台挨拶時に出演者たちがサインしたと思われるポスターなどが展示されていました。


上映は200席、この映画館では最大のodessaシアター1。舞台挨拶があるということで、満席とまではいきませんが席は8割以上埋まっています。作品の主人公と同世代と思われる若い女性がとても多く、私のようなオジサン(私とてエロティックな描写を求めて来たわけではありませんが)はむしろ少数派と思えるほどだったのは予想外でした。

舞台挨拶が控えていることもあり、予告編はなくすぐに本編上映が始まりました。


山崎ナオコーラさんの同名の短編小説を原作に実写映画化した作品だそうで、監督は松居大悟、脚本は舘そらみ。

 

公式サイトによれば、

 

おじさんの写真を撮っては、コレクションするのが趣味のさわ子。これまで付き合ってきた男性はいつも年上ばかりなのに、父とはなんだか上手く話せずギクシャクしていた。そんな時、同年代の同僚・森との距離が縮まっていくにつれ、さわ子の心にも徐々に変化が訪れる―――。

 

というあらすじ。

主な登場人物は、

 

  • 寅井 さわ子【福永 朱梨】:25歳。おじさんを写真に撮ってコレクションするのが趣味。

  • 森【金子 大地】:さわ子の会社の同僚。さわ子が好きで声を掛ける。

  • 大河内【津田 寛治】:さわ子の会社の上司。

  • 寅井 リカ【大渕 夏子】:さわ子の妹の高校生。

  • 父【金田 明夫】:さわ子の父親。

  • 母【宮田 早苗】:さわ子の母親。
  • ユウスケ【岩本 晟夢】:リカの彼氏。

  • ノボル【田村 健太郎】:さわ子の学生時代の恋人。

 

など。

 

ネタバレですが、記憶の範囲でもう少し詳しくあらすじを記すと、

 

さわ子は、おじさんをカメラで撮っては、写真をスクラップブックにコレクションするのが趣味。大学生の頃には同世代のノボルとの付き合いもあったが、話すのが苦手なさわ子は、その後付き合う男性は年上ばかり。でも父親とはうまく話せず、家族の中で一人疎外感を感じていた。その頃、かつて付き合っていた年上の男性の訃報が入り、告別式に参列したさわ子は、かつて付き合っていた他の男性はどうなっているのか、再び会って回る。
一方、さわ子に好意を抱いていた同年代の同僚・森は、しばしばさわ子に声を掛け、次第に距離を詰めてきていた。森の転職が決まり、その送別会の後、同じタクシーに乗った二人はキスを交わし、やがてセックスをする関係になる。恋人のように過ごす二人だったが、森には別の彼女ができ、森はその彼女との結婚を決め、さわ子に別れを告げる。
森と最後のセックスをして帰宅したさわ子は、母親から耳が遠くなって病院に行く父親に付き添ってほしいと頼まれ、付いていく。どこか心もとない父親に付き添うさわ子は、その帰り、旅行に行こう、と父親に提案する。帰宅したさわ子は、おじさんの写真やそれをコレクションしたスクラップブックをゴミ箱に捨てる。久しぶりに父親と温かい会話を交わしたさわ子の目から涙が溢れる。

 

・・・という感じ。

 

ロマンポルノといえば、かなり前の学生時代に、当時はまだあったロマンポルノ専門の映画館だったか、ロマンポルノの名作特集といった感じの企画上映に一度行ったことあるような記憶があります。もはや何の作品を観たかも覚えていませんが、何となく薄暗い雰囲気の映画だったような印象がおぼろげに残っています。そのおぼろげな印象とは、全く違う雰囲気の映画。

「ロマンポルノ」と謳っており、R18+でもあるので、もちろんセックスなどのエロティックなシーンはそれなりにあるのですが、過激な描写という感じではなく、ストーリーの展開の中で不自然さを感じさせない形で描かれています。ちょっと性描写が多めな普通の映画という感じです。

おじさん趣味で、付き合うのはおじさんばかり、結婚など考えられず、父親とうまく話せず、家族の中で疎外感を感じていた25歳のさわ子が、同世代の森との恋愛を通じて、少しずつ変わっていく、という、ある種の自分探しの物語。観客に若い女性が多いのは、こうしたさわ子の心情に共感or理解できる女性が多いということなのかと思いました。余韻の残るいい作品でした。

 

上映後、少しの間を置いて、さわ子役の福永朱梨、リカ役の大渕夏子、ノボル役の田村健太郎、ユウスケ役の岩本晟夢、そして松居大悟監督が登壇しての舞台挨拶が始まります。日活の制作担当の方の司会進行で、貴重なお話(とある特定のシーンの話題が多かったですが…)をお聞きできましたが、特に主要キャストの女性2人のお話をもっとお聞きしたいところではありました。ちなみにこの日、岩本晟夢さんは23歳の誕生日とのこと。


トークショー終了後のフォトセッション。左から、大渕夏子さん、福永朱梨さん、岩本晟夢さん、田村健太郎さん、松居大悟監督。岩本さんの手には誕生日のお祝いにプレゼントされた花束。


終了後、スクリーンを出ると、サイン入りポスターの場所が変わっていました。
後で上映開始前の写真と見比べると、この日初訪問だった田村さん、岩本さんのサインが増えていました。

上映館は少ないですが、この後も全国で10以上の映画館での上映開始が決まっているようです。「ロマンポルノ」と聞くと行きにくいと思う方も少なくないかもしれませんが、そうした先入観を抜きに観てほしい作品だと思いました。