鷺の停車場

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アニメ映画「駒田蒸留所へようこそ」

少し前になりますが、仕事帰りにTOHOシネマズ日比谷に行きました。


いつもは地下から入るのですが、この日は地上から東京ミッドタウン日比谷に向かいます。


レストランやショップの案内。


クリスマスのイルミネーションも施されていました。


1階の入口から館内へ。


エスカレーターを上がって、スクリーン1~11がある4階へ。


この日の上映スケジュール。既に上映が終わった回も含めて、25作品・28種類の上映が行われていました。

この日観るのは、「駒田蒸留所へようこそ」(11月10日(金)公開)。全国157館と中規模での公開です。


ゆったりとしたロビーをずっと進んで、スクリーンへ。


上映は98+2席のスクリーン10。入ってみると、公開初週の都心のスクリーンとあって、50人ほどはお客さんが入っていました。


(チラシの表裏)


(その前に配布されていた別バージョンのチラシ)


花咲くいろは」「SHIROBAKO」などに続くP.A.WORKSの「お仕事シリーズ」の最新作で、主要スタッフは、監督:吉原正行、脚本:木澤行人中本宗応、キャラクター原案:髙田友美、キャラクターデザイン・総作画監督:川面恒介、アニメーション制作:P.A.WORKSなど。

 

主な登場人物・キャストは、次のようなもの。

  • 駒田 琉生【早見 沙織】:クラフトウイスキーわかば」をヒットさせたウイスキー業界で話題のブレンダー。父親の亡きあと、駒田蒸留所の社長に就任。幻のウイスキー「KOMA」を復活させるため、日夜奮闘している。

  • 高橋 光太郎【小野 賢章】:「ニュースバリュージャパン」の記者。自分のやりたい仕事に出会えず色々な会社を転々としてきた経歴の持ち主で、いまの仕事にも身が入らず、辞めることを考えている。

  • 河端 朋子【内田 真礼】:駒田蒸留所の広報担当。活動的でアイデア豊富な女性。琉生の幼なじみで、彼女と本音で話し合える数少ない人物のひとり。

  • 安元 広志【細谷 佳正】:「ニュースバリュージャパン」の編集長。自分の仕事に魅力を感じられていない光太郎を気に掛け、それとはなしに助言している。

  • 東海林 努【辻 親八】:駒田蒸留所で最も古株の従業員。

  • 斉藤 裕介【鈴村 健一】:光太郎の友人。かつてのバンド仲間で、現在は音楽会社で働いている。

  • 駒田 滉【堀内 賢雄】:琉生の父親で、駒田蒸留所の先代社長。駒田蒸留所の経営に奔走していたが、早くにこの世を去ってしまう。

  • 駒田 澪緒【井上 喜久子】:琉生の母。駒田蒸留所の経理担当。

  • 駒田 圭【中村 悠一】:琉生の兄。ウイスキーを作るのを断念した滉に反発して家を飛び出し、現在は桜盛蒸留所で経営企画担当をしている。

 

困難に立ち向かい「独楽」復活に一途に打ち込む琉生の姿に、心温まる物語でした。琉生がBL好きで、その登場人物の絵でウイスキーの味を表現する、というところは、観客をクスっとさせようと狙った小ネタ設定だと思いますが、ユーモラスな描写を交えずに真っすぐに物語を描いているところは、とても好感が持てました。強いていえば、琉生や光太郎などの心情の掘り下げがやや表面的にとどまった印象があったのは少し残念で、その描き方にもっと深みがあれば、より感銘を受ける作品になったのだろうという気はしました。


(PINコードとQRコードはマスキングしています)

なお、入場者特典をいただきました。主人公・琉生の声を担当した早見沙織さんが歌う主題歌「Dear my future」のフル尺音源がダウンロードできるピンナップカードでした。

 

ここから先はネタバレになりますが、備忘を兼ねて、より詳しいあらすじを記してみます。

 

駒田琉生の高校生時代、駒田蒸留所で開かれた慰労会で、父、母、兄や従業員たちが家族のように仲良く過ごす光景をスケッチする琉生。

Webニュースを配信する「ニュースバリュージャパン」の記者の高橋光太郎は、編集長の安元から「クラフトウイスキーの未来」と題した全国各地のウイスキー蒸留所を回る企画書を手渡される。「わかば」というクラフトウイスキーを成功させ、若手ブレンダーとして注目される駒田琉生と一緒に、まずウイスキー蒸留所である大森蒸留所の取材に行くよう指示される。やる気のない反応を示す光太郎。記者は25歳の光太郎の5つめの仕事だった。

気が進まず、ほとんど何も調べないまま取材に向かった光太郎は、ウイスキーの基礎的な知識もなく、取材先の大森(おおもり)蒸留所をより大手の桜盛(おうもり)蒸留所と勘違いして質問するなど、やる気のない対応で、それに呆れた琉生に同行していた駒田蒸留所の広報担当・朋子は厳しい口調で注意するが、琉生は穏やかにそれをなだめる。

取材の後、琉生は光太郎を佐久にある自分の会社・御代田酒造の駒田蒸留所に連れてくる。車が到着すると、琉生は光太郎に「駒田蒸留所へようこそ」と声をかけ、蒸留所の中を案内する。駒田蒸留所は、かつてはウイスキー「独楽」(こま)を販売していたが、地震で設備が被害を受け、経営状況の悪化から、ウイスキーの原酒造りを断念し、焼酎だけを製造することになったが、最近になってクラウドファンディングも活用して設備を更新し、原酒造りを再開したところだった。
ブレンダー室に来たところで、朋子は琉生を外に連れ出し、光太郎に蒸留所での作業を体験してもらい記事にしてもらうことを琉生に提案する。厳しい経営状態のため使えるものは何でも使おうと考える朋子は、かつて「わかば」を製造したときに記事を書いてくれた編集長の安元にかけあってみると話す。その間、光太郎はブレンダー室で2人の戻りを待っていたが、そこに圭が入ってくる。遅れて戻ってきた琉生に圭は、何やら以前から提案している話について琉生に回答を迫るが、琉生はそれを拒絶する。

東京に戻った光太郎は、安村から光太郎の態度に朋子からクレームが入ったこと、駒田蒸留所で作業体験をすることになることを聞かされる。友人の裕介と飲む光太郎は、裕介が有名な音楽グループのプロデュースを担当していると聞かされ、自分は向いてないのではないかと仕事を辞めることも考えている光太郎はそれをうらやむ。

次の取材先・石岡のウイスキー蒸留所でも、光太郎は何も質問せず、やる気のない対応だったが、琉生は対応してくれた従業員に、テイスティングノートを見せてもらえないかとお願いする。取材が終了した後、光太郎は朋子に最寄り駅まで車で送ってもらうが、朋子は琉生は取材とは関係ない案件で蒸留所に残ったと話す。

東京に営業に来た帰りに迎えにきた朋子が運転する車で体験のため駒田蒸留所に向かう光太郎。途中の休憩時に、琉生が最初から家業の蒸留所を継ぐつもりだったと信じ込む光太郎は、嫉妬の思いが言葉ににじむが、朋子は、琉生はもともと家業を継ぐつもりはなく、美大を中退して社長になったのだとそれを否定する。

駒田蒸留所に到着すると、琉生と前回来た時に見た男性が険悪な雰囲気で対峙しているのが目に入る。朋子の説明で、男性は桜盛蒸留所に勤める琉生の兄・圭で、駒田蒸留所を買収しようとするのを琉生が拒絶していることがわかる。

最も古株の従業員・東海林について作業体験をすることになった光太郎は、東海林から朝礼前に貯蔵庫の清掃をするよう指示される。気が進まずダラダラと床のモップ掛けをしていた光太郎のところに、琉生がやってきて光太郎をねぎらい、今はガラガラだがこれから原酒を作って樽が増えていくのを考えると、ここを掃除するのも楽しいと語るが、琉生が去った後、光太郎は一冊のノートが置き忘れられているのを見つける。ノートを開くと、それはBL(ボーイズラブ)コミックの主要登場人物の絵でウイスキーの味を表現した琉生のテイスティングノートだった。
朝礼に従業員全員が集まったところで、琉生は光太郎が自分のテイスティングノートを持っているのに気づき、それを取り返そうとするが、光太郎はノートを落としてしまい、床に琉生が描いた絵が散らばってしまう。恥ずかしさで慌てて絵をかき集める琉生。光太郎は嫉妬から思わず厳しい言葉を発してしまい、それに怒った琉生は光太郎をビンタして走り去ってしまう。

従業員たちが気を取り直して仕事を始めようとしたところで、東海林が光太郎に声を掛け、自分の作業場に連れていく。
東海林は、琉生もよくここに来ていた、ウイスキーのことは何も知らずに継いだから最初のうちはここに来て泣いていたと話し、駒田蒸留所のここまでの経緯を話す。地震によって設備が損傷してしまいウイスキー造りが困難になったこと、厳しい経営状況から先代の社長・滉は社員の生活のためにウイスキー製造を断念したが、それに反発した圭は家を出て行ってしまったこと、ウイスキー製造を断念しても経営が好転したわけでなく、奔走した滉は過労で亡くなったこと、滉の死後、母の澪緒は会社を畳むことを考えていたが、琉生は残った原酒を捨てたくないと美大を中退して社長に就いたこと、圭は桜盛蒸留所の社員として駒田蒸留所を買収しようとしていることなど。

東京に戻ってオフィスに顔を出した光太郎は、既にクレームが入っていて安元から怒られるのではないかとビクビクするが、安元は、初回の記事が好評でページビューが増えている、今後も頑張れ、と励ましの声をかける。光太郎が安元にどうしてこの仕事をしているのか尋ねると、安元は、元々は放送作家になりたかったが、頼まれて記事を書いているうちにこっちが本業になった、これで良かったと思っていると話す。

東海林や安元の話を聞いて、琉生への見方、仕事への姿勢が変わった光太郎は、取材先のウイスキー蒸留所を事前にリサーチして進んで質問するなど、見違えるように熱心に仕事に向かうようになる。その蒸留所の取材の際、光太郎は、琉生が「独楽」の復活のために取材後に原酒を試飲させてもらっていることを知る。
終了後に琉生は光太郎をバーに誘い、高校生の時の思い出や「独楽」への思いを話し、「独楽」は家族の酒だと語る。

東京に戻った光太郎は、5年前の新聞記事から、駒田蒸留所と原酒を交換していた蒸留所があることを突き止め、その蒸留所を次の取材先にすることを琉生に提案する。蒸留所を訪問すると、対応した従業員はその蒸留所の原酒とうまく合わなかったと話し、保管していた駒田蒸留所の原酒3樽を琉生に提供してくれる。

そんな中、光太郎は、早く記事をアップしたいと思うあまり、琉生から修正指摘を受けていた、桜盛蒸留所が海外から輸入したウイスキーをボトルに詰めて自社製品として出荷していると誤認されかねない記述を残した修正前の原稿をネットにアップしてしまう。その記事への読者のコメントも厳しいものだった。朋子からもクレームが入り、光太郎から電話を代わった安元は平謝りに謝罪し、記事を削除して謝罪コメントを掲載した後、若い頃自分も同じように失敗したことがあると話し、光太郎を慰める。

翌日、光太郎は安元とともに桜盛蒸留所に菓子折を持って謝罪に行く。桜盛蒸留所の担当者は、既に記事を削除し謝罪コメントを掲載していることから、大ごとにせずに許してくれる。すると、担当者はうちの方から話を聞かせてほしいと言い、担当者と入れ替わりに圭が姿を現す。圭は、光太郎の記事に書かれている琉生の発言が本人のものかを尋ね、琉生の発言をそのまま記事にしていると光太郎が答えると、圭は琉生があれほどの見識を身につけていたなんて、と感服し、光太郎の記事を楽しみにしていると話す。

そんな中、駒田蒸留所の貯蔵庫が漏電によって火事となり、寝かせていた原酒の一部が燃え、光太郎の尽力で入手した「独楽」の原酒も失われてしまう。火事の一報を聞いた光太郎は翌朝の朝一番に駒田蒸留所に駆けつける。
「独楽」の原酒が失われ、製造できる「わかば」も半分以下になってしまった窮地に、琉生は圭の買収話を受け入れることを決心し、その日の朝礼で従業員たちの前でそれを話すが、駒田蒸留所で「独楽」の復活を目指す琉生を後押しする従業員たちの熱い言葉に、ウイスキー造りを続けることを決める。光太郎も、「独楽」復活のために原酒を必要としていることを訴える記事を書くとそれを後押しする。

光太郎は、琉生のテイスティングノートを見せてもらい、BLコミックの登場人物の絵で表現されたウイスキーの味を翻訳して記事にする。すると、全国各地、そして海外からもウイスキーの原酒が届くようになり、三郎丸蒸留所という会社からは、復活を心から願っているとのメッセージとともに、かつて販売されていた「独楽」のボトルが届く。琉生たちは送られてきた原酒をテイスティングして絞り込み、自社の原酒とブレンドして試していくが、「独楽」の復活は壁にぶつかる。

「独楽」復活に向けた駒田蒸留所の取組を記事にしていく光太郎に、ある日、圭から電話が入り、バーで圭と会う。光太郎の記事から「独楽」復活が難航していると察していた圭は、琉生と同じく「独楽」は家族の酒だと、熱い思いを明かし、琉生に役立つだろうと、亡くなる直前に滉が送ってきた日誌などのノートを光太郎に手渡す。

駒田蒸留所を訪れた光太郎は、圭と一緒に「独楽」復活に取り組むことを琉生に提案し、圭から手渡された滉のノートを琉生に渡す。それがきっかけで、圭と琉生は一緒に「独楽」の復活に向けて取り組むことになる。
そして、琉生は圭を連れて家に帰り、圭を澪緒に引き合わせる。滉が亡くなる直前にノートを圭に送っていたことを知った澪緒は、自分が会社の立て直しのために圭を探し出して呼び戻そうと提案しても滉がそれを拒んだのは、圭を憎んでいたからだと思っていたが、圭に自分の選んだ道を進んでほしかったからなのだろうと語る。

圭は勤務する桜盛蒸留所の仕事が終わった後に駒田蒸留所を訪れ、琉生と圭は一緒にウイスキー「独楽」復活に向けたブレンドに取り組む。2人は、滉のノートを参考に、ある程度の水準までは持っていくが、何かが足りなかった。
琉生はノートのある部分に書かれた滉のメモが気になるが、クセのある滉の字を判読することができない。澪緒にそれを判読してもらった琉生は、それが自社で作っている焼酎の銘柄名であったことから、フィニッシュに焼酎の樽を使うことに気が付く。

そうして、兄妹の協力で「独楽」の原酒が完成する。2人は澪緒に蒸留所に来てもらい、それを飲んでもらう。ほころぶ澪緒の顔を見て、琉生と圭は笑顔を見せる。滉のノートには、慰労会で「独楽」を飲む澪緒の笑顔を見て、良い出来だと確信すると書かれていた。

3年後、朋子が運転する車には、琉生、光太郎と新米の記者が乗っていた。光太郎が「独楽」復活へのカウントダウンをテーマにした企画記事を書くことになった新米記者を連れてきていたのだ。ウイスキーに興味がないという新米記者はかつての光太郎を彷彿とさせ、3人は笑う。車が駒田蒸留所へ到着すると、琉生は新米記者に「駒田蒸留所へようこそ」と声をかけるのだった。

(ここまで)

 

私自身は、ウイスキーは得意ではない方で、たまに行く居酒屋でハイボールを飲むことがある程度なのですが、日本国内でウイスキーを造っているのはサントリーニッカウヰスキーなど大企業のブランドだけだと思っていたので、劇中で登場する蒸留所やエンドロールで流れる協力蒸留所の名前を見て、これだけの小さなウイスキー蒸留所があるのだと始めて知りました。
そのうち、「独楽」のボトルを送ってくれる蒸留所として登場する「三郎丸蒸留所」とは、富山にある実在の蒸留所で、劇中で描かれた駒田蒸留所のモデルとなった蒸留所だそうです。

 

なお、少し前には、次のような小冊子も配布されていました。