鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「心の傷を癒すということ」

先の週末にMOVIX柏の葉に行きました。

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日曜の午後ですが、緊急事態宣言下というのが大きいのでしょう、人はまばらです。

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この日の上映スケジュール。ここも、緊急事態宣言を受けて、20時までに全上映が終了するスケジュールになっていました。

私が観に来たのは「心の傷を癒すということ<劇場版>」(1月29日(金)公開)。

2020年1月にNHKで放送された全4話のドラマを劇場版に再編集した作品で、阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた神戸で、震災後の心のケアのパイオニアとなった精神科医安克昌の著書を原案に、遺族関係者などへの取材などで制作されたオリジナルストーリーとのこと。

この週に公開された映画では、他にも気になっている作品もあったのですが、本作は全国21館と小規模の公開、一番最初に観れる機会がなくなってしまいそうな気がして、公開初週に観に行くことにしました。

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上映は139+2席のシアター3。お客さんは7~8人ほどでした。

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gaga.ne.jp

公式サイトのストーリーによれば、

 

在日韓国人として大阪に生まれ育ち、自分が何者なのか悩んでいた青春期に精神科医の永野良夫(近藤正臣)の著書に感銘を受けた安和隆(柄本佑)は、永野のいる医学部に進み、精神科医への道を歩む。ある日、映画館で出会った女性・終子(尾野真千子)と恋に落ち、結婚。温かい家庭を持った和隆は、全国から訪れる患者たちにも温かな眼差しで寄り添い、34歳で医局長となる。
1995年1月。大地震が起こり、和隆が勤める神戸の大学病院は患者で溢れ返る。精神科医としてできることを探し、避難所で被災者の声を聞こうとするも、なかなか受け入れてもらえない。暴言や泣き声が絶えない避難所、地震ごっこで遊ぶ子供たち……。和隆と離れて暮らしていた終子もまた、他人の心ない言葉にストレスを抱えていた。
人は傷つきやすい。被災者たちと向き合い、精神医療の大切さを改めて実感した和隆は、新聞記者の谷村英人(趙珉和)からの依頼のもと、精神科医としてのエッセイを連載し、それを1 冊の本にまとめた。そんな中、和隆にがんが発覚。がん治療を受けながらも、医師として診療を続けようとする。和隆がたどり着いた、本当の「心のケア」とは―― 。

 

というあらすじ。

ストーリーに記された4人以外の主要キャストは、

など 。

 

じんわりと、心に響くいい映画でした。

心に傷を受けた人たちに寄り添おうとする姿勢、一見不謹慎な言動を発言を普通と違う視点から俯瞰して捉える洞察力など、普通の人間にはなかなかできないことで、そこに至るまでの和隆の歩み・成長の道のりも描くことで、説得力ある物語になっていました。

自分の姓の漢字を、若い頃は「不安の安」と説明していたのが、後には「安心の安」に変わっていたり、高校生の頃、親友の湯浅に語った永野の著作の一節が、大人になった後のあるシーンの伏線になっていたり、局所的にはわざとらしい部分も若干ありましたが、細かい描写までよく考えられている印象を受けました。

主人公の安和隆を演じた柄本佑、それを支える終子役の尾野真千子をはじめとして、俳優陣も良かったと思います。


私自身は、阪神・淡路大震災で大きな被害を受けたわけではありませんが、震災から2か月くらい経った頃だったか、差し入れに神戸周辺を訪れたときの、見たことがある街の光景のあまりの変わりように衝撃を受けたことは、今でも強い印象として残っています。

その印象から、震災が全くの他人事ではない感覚があって、なおさら感銘を受けた部分もあるように思いますが、映画自体は、震災そのものや、被災者の心のケアというよりも、和隆の生きざまに焦点を当てて描かれているので、震災をよく知らない人にも響く作品になっているのではないかと思います。