鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「四月になれば彼女は」

休日の朝、MOVIX亀有に行きました。


8時半すぎの時間帯、春休みの休日とあってロビーはかなりの混雑でした。


上映スケジュールの一部。この日は、27作品・28種類の上映が行われていました。


この日観るのは「四月になれば彼女は」(3月22日(金)公開)。全国254館と大規模での公開です。


スクリーンに向かう途中の通路の壁には、タペストリーも飾られていました。


上映は147+2席のシアター1。お客さんは30人ほど、思ったほどの入りではありませんでした。


(チラシの表裏)


(チラシの中見開き)

 

川村元気の同名小説を原作に、実写映画化した作品で、主要スタッフは、監督:山田智和、脚本:木戸雄一郎・山田智和・川村元気、音楽:小林武史など。

原作小説は、1年ほど前、まだ映画化されることを知る前にたまたま読んでいました。

reiherbahnhof.hatenablog.com

 

公式サイトで紹介されている主要登場人物・キャストは、

  • 藤代 俊(ふじしろ しゅん)【佐藤 健】:都内の大学病院に勤める精神科医。突然失踪してしまった婚約者・弥生の姿を探し求める。時を同じくして受け取った初恋の人・春からの手紙に、秘めていた痛い思い出がよみがえってくる。

  • 坂本 弥生(さかもと やよい)【長澤 まさみ】:動物園に勤めている獣医。愛しあっていたはずの藤代を残し、姿を消す。「愛を終わらせない方法、それはないんでしょう」、失踪前に彼女が残したという謎かけの答えとは?

  • 伊予田 春(いよだ はる)【森 七菜】:藤代の初恋の相手。写真を撮りながら、世界中を旅している。とある事情を抱え、10年ぶりにウユニ塩湖から藤代に手紙を送る。なぜ彼女は突然、手紙を送ってきたのか?

  • タスク【仲野 太賀】:藤代が通うバーの店長。親友である彼自身も、恋愛に悩みを抱えていて…。

  • ペンタックス【中島 歩】:大学時代の藤代と春の写真仲間。いつもPENTAXのTシャツを着ている。

  • 坂本 純(さかもと じゅん)【河合 優実】:弥生の妹。姉の独特な恋愛観を見つめてきた彼女が語る、弥生の真実の姿とは。

  • 小泉 奈々(こいずみ なな)【ともさか りえ】:藤代の勤める大学病院の同僚。働きながら子供を育てるシングルマザー。

  • 伊予田 衛(いよだ まもる)【竹野内 豊】:春の父。シングルファーザーとして春を育ててきた。深い孤独を抱えている。

というもの。

 

公式サイトのストーリーによると、

 

「あのときのわたしには、自分よりも大切なひとがいた。それが、永遠に続くものだと信じていた」

四月。精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人・伊予田春(森七菜)から手紙が届く。
“天空の鏡”と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、十年前の初恋の記憶が書かれていた。
ウユニ、プラハアイスランド。その後も世界各地から届く、春の手紙。

時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生(長澤まさみ)と結婚の準備を進めていた。
けれども弥生は突然、姿を消した。

「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう?」

その謎かけだけを残して−−−−

 春はなぜ手紙を書いてきたのか?  弥生はどこへ消えたのか? 
ふたつの謎は、やがて繋がっていく。

「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、なぜ消えていってしまうのだろう」

現在と過去、日本と海外が交錯しながら、愛する人をさがし求める“四月”が始まる。

 

・・・というあらすじ。

 

映画情報サイトの口コミ評価を見ると、評価が分かれているようだったので、あまり期待せずに観ましたが、心に響くシーンもあり、もっと彫りが深ければ、という印象はあったものの、意外といい作品でした。

世界各地を旅する大学時代の恋人からの手紙が届き、結婚を控えた今の恋人が姿を消して、それを探し求める、という物語の骨格は原作小説と共通ですが、細部のエピソードや登場人物の設定はかなりアレンジが加えられています。ただ、脚本として原作者が参加しているので、映画化するに当たって、原作者も交えてストーリーを再構築した結果なのだろうと思います。この映画オリジナルのアレンジは、良く出た面もあり、悪く出た面もあった感じがしました。

 

ここから先はネタバレになりますが、備忘も兼ねて、詳しめにストーリーを書いてみます。なお、細部には記憶違いもあると思いますし、以下の記載順は、映画の本編で出てきた順番と必ずしも同じではありません。

 

春、精神科医の藤代俊のもとに、学生時代の恋人・伊予田春から手紙が届く。ボリビアのウユニからの手紙には、10年前の藤代との恋への思いが綴られ、春が撮ったウユニ塩湖の写真が同封されていた。
その頃、藤代は、同棲している婚約者・坂本弥生と結婚式の準備を進めていた。一緒に結婚式場のチャペルを見学する2人、弥生は、スタッフの了解を得て、チャペルにあったパイプオルガンを弾き始めると、チャペル内に「主よ、人の望みの喜びよ」が響く。
夜、日付が変わって4月1日、弥生の誕生日を迎える2人。ワインを開けてお祝いしようとするが、お揃いのグラスの1つを落として割ってしまう。弥生は先に寝るねと自分の部屋に入っていき、藤代も自分の部屋に入っていく。

その翌朝、起きて食パンを焼く藤代が弥生に声を掛けるが、弥生の返事は帰ってこない。藤代が弥生の部屋に入ると、弥生の姿はなかった。

藤代は、弥生が獣医として働く動物園を訪れて同僚の話を聞くと、しばらく休むと連絡があったといい、代わりの獣医を派遣してもらうことになったと聞かされる。妹の純を勤務先のパチンコ店に訪ね、を訪れて純から話を聞くが、有用な手がかりは得られない。

一方、春からは、プラハアイスランドから手紙が届く。春は、かつて藤代と行こうとしていた場所を訪れていた。最終目的地であるアイスランドのブラックサンドビーチでは、春は倒れて病院に運ばれてしまう。

藤代は、写真部だった大学時代、部長のペンタックスの勧誘で入部した春と一緒に東京の街に出て写真を撮る。その途中で雨に降られて中央線のガード下に逃げ込んだ2人。春は藤代に、どんな写真を撮りたいかと尋ね、藤代は、ポートレート以外、人を正面から見るのが苦手、深く立ち入りたくない、と話す。一方の春は、雨の匂い、熱気、と話し、目には見えないものだと言う藤代に、でも確かにそこにあるものだと答える。
写真部の朝日を撮りに行くことになり、藤代はバイクの後ろに春を乗せて撮影場所まで走る。春は小さい頃に母が家を出ていき父と2人暮らしで、家事は自分がやっていることを話す。藤代は、父が開業医で跡継ぎを期待されて医学部に入ったことを話す。朝日が見える撮影場所に到着した2人。藤代は春に告白する。
距離を縮めた2人は、美しい朝日を見るために世界各地を巡る旅行の計画を立て始める。藤代は、春の父に旅行の許しを得るために春の家を訪れるが、シングルファザーとして春を育ててきた春の父・衛は、娘がいなければダメなんだと拒否する。
父の許しが得られないまま、2人は世界旅行の決行を決めるが、出発の日、空港のロビーに到着した藤代を、春は荷物を持たずに待っていた。旅行には行けないと言う春に、藤代は出発を断念して引き返す。それをきっかけに、春とは疎遠になってしまっていた。

一方、弥生とは、同僚の小泉奈々の出産のため休暇となった間、不眠で治療中の弥生を代わりに診察して出会った。恋人からのプロポーズを受けて結婚が決まってから、不眠の症状が出ていた弥生は、幸せが失われてしまうことを恐れていた。何度か話すうちに、2人は次第に惹かれ合っていく。治療が終わったとき、弥生が働く動物園を訪れた藤代は、別れを惜しんで弥生を抱きしめ、恋人としての付き合いが始まり、やがて一緒に暮らすようになっていた。

そんなある日、弥生からの手紙が届く。私たちは愛することをさぼった、私は失ったものを取り戻したい、と弥生の思いが綴られていた。しかし、弥生がどこにいるかは分からない。

そんなとき、ペンタックスから久しぶりの電話が入る。それは、春が死んだという知らせだった。連絡を受けた藤代は、春が生前に入所していた海辺にある緩和医療ホスピスを訪れる。対応してくれたスタッフは、春が苦しんで亡くなったこと、病気が分かって治療しながら旅行していたこと、入所者たちから好評でよく頼まれて写真を取っていたことなどを藤代に話す。そして、藤代がやって来たら渡してほしいと生前の春が言っていたと、大学時代から春が使っていたフィルム一眼レフカメラを手渡す。
東京に戻った藤代は、今は母校の大学職員をしているペンタックスに連絡し、深夜、大学の写真部の部室の鍵を開けてもらい、春のカメラに入っていたフィルムを現像する。すると、海岸から上る朝日を撮った写真などの中に、弥生が写った1枚があった。

弥生は、ホスピスのホームページに掲載されていた写真の撮影者として春の名前があることを知り、そのホスピスを訪れ、面接を受けてスタッフとして働いていた。次第に交流を深めていく春と弥生。そんなある日、弥生は、春に会うために来たことを明かし、春は、何となくそう思っていた、来てくれてありがとうと感謝の言葉をかけ、それを聞いた弥生は涙ぐむ。写真は、その時に撮られたものだった。
春が亡くなった後、春が過ごしていた部屋を整理する弥生は、発送されないままになっていた藤代宛の手紙を見つけ、それを自分のポケットにしまう。

フィルムの現像を終えた藤代は、ペンタックスに頼んで、その運転する車で弥生が働くホスピスに向かう。到着した藤代が砂浜に出ると、ひとり海辺に立って海を眺めている弥生を見つける。藤代は、弥生に大きな声で呼びかけ、逃げる弥生を追いかけ、その手をつかんで抱きしめる。

藤代と一緒に自宅に帰る弥生は、藤代に春が残していた最後の手紙を渡すのだった。

(ここまで)

 

弥生が亡くなる直前の春に会うためにホスピスの職員となり、その死を見届けるという設定は映画オリジナルですが、獣医として働く動物園にしばらく休むと連絡して、ホスピスの面接を受けるというのは、あまり現実味が感じられず、もったいない感じがしました。藤代が弥生と再会する経緯は、原作小説でもご都合主義的な印象がある部分だったので、映画化に際して大幅にアレンジを加えたのだろうと思いますが、ストレートに春に会いに行くというくらいの方が良かったのではという気がしました。