テレビアニメ「外科医エリーゼ」を見ました。
2015年12月30日から2016年4月27日までカカオページにて連載されたyuinによる韓国のウェブ小説を原作にアニメ化され、2024年1月から3月までの2024冬クールにTOKYO MXなどで放送された作品で、主要スタッフは、監督:羽原久美子、シリーズ構成:赤尾でこ、キャラクターデザイン:渡部裕子、アニメーション制作:MAHO FILM など。
家族が2019年8月からKADOKAWAより刊行されている日本語のコミカライズ版を買っていたので、マンガと読み比べながら見てみました。
公式サイトのイントロダクションから引用すると、
<高本 葵の前世は“悪女皇后”エリーゼ。
数多の悪行を働き人々に不幸をもたらした彼女は、
夫・リンデンによって処刑されるという最期を迎えた。
現代に生まれ変わった2度目の人生では、過ちを償うべく外科医として
人のため生きてきた葵だが、ある日飛行機事故で帰らぬ人に…
しかし、目を覚ますと1度目の人生に戻っていた!
処刑される10年前に転生したエリーゼの目の前に現れたのは、
自分のせいで命を落とした家族たちだった。
もう、大切な人を失いたくない…
後悔でいっぱいの人生なんて絶対にいや!
3度目の人生は悲劇のきっかけとなったリンデンとの結婚を回避し、
医学の知識を生かして再び医者になりたいと決意する。
ところがそんなエリーゼの道のりには、さまざまな困難が待ち受けていて…?
この人生は、誰かの命を救うために――
運命にあらがう“天才外科医”の、ひたむき医療ファンタジー開幕!>
・・・という物語。
公式サイトで紹介されている主な登場人物とキャストは、次のとおりです。< >内はそのキャラクターが登場(声優が出演)する放送回です。
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エリーゼ・ド・クロレンス【石川 由依】:1回目の人生で悪女皇后として処刑され、『高本 葵』に生まれ変わったときは、前世での過ちを精算すべく外科医となって人に尽くす。再び『エリーゼ』に転生したあとは、同じ悲劇を繰り返すまいと大奮闘。心優しく真面目な性格で自分より周りを優先することもあるが、意外にたくましい一面を持っており、自分で決めたことは最後まで成し遂げる可憐な少女。<第1~12話>
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リンデン・ド・ロマノフ【阿座上 洋平】:ロマノフ王家王位継承者。エリーゼの1回目の人生では婚約者だったが、自らの手でエリーゼを火炙りの刑に課してしまう。政務、剣術、魔法、何でもそつなくこなす秀才肌。寡黙な性格でエリーゼにもクールに対応するが、心の中ではエリーゼのことを嫌っているわけではないようで…?<第1~7・10~12話>
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グレアム・ド・ファロン【細谷 佳正/石上 静香(子供時代)】:テレサ病院の医者。優れた医術を持ち、若くして天才医師と呼ばれている。態度は気高くツンとしているが内面は熱く、誰よりも医学を探求し続けている。家族や周りにいる見習い医師のことを大事にしており、多くの人から慕われている。病院でエリーゼを厳しく指導する。<第3~5・7・8・11・12話(子供時代は第8話のみ)>
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ロン【日野 聡】:エリーゼの務めるテレサ病院に訪れた謎の貴族。 医学に真剣に向き合うエリーゼの姿に心打たれ、彼女に好意を抱くように…。美麗でクールな外見からは想像できないほどの照れ屋で、ときおり感情が大爆発してしまう。<第4・5・10・12話>
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レン・ド・クロレンス【小野 大輔】:エリーゼの兄。クロレンス家の長男。常に冷静沈着で隙を見せず、責任感も強い。エリーゼに厳しく接するときもあるが、それは愛情の裏返しで内心はエリーゼのことをすごく大事に想っている。前世ではエリーゼをかばって命を落とす。<第2・5~7・10・12話>
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クリス・ド・クロレンス【下野 紘】:エリーゼの兄。クロレンス家の次男。明るい性格で勢いがあり、エリーゼの身に何か起きると誰よりも騒ぎ立てて心配する。過剰なまでに過保護でときおりエリーゼを困らせる。前世では戦争で命を落としてしまうが、今生ではエリーゼの活躍により死を免れる。<第2・3・6~10・12話>
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ユリエン・ド・チャイルド【潘 めぐみ】:クロレンス家と敵対関係にある、大貴族チャイルド家の娘。前世ではエリーゼと恋敵の関係だったため非常に仲が悪かった。優しい心を持ち合わせており、改心したエリーゼに誠実に接していく。リンデン皇子をひたむきに愛する気高き純粋な令嬢。<第6・9話>
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ミハイル・ド・ロマノフ【斉藤 壮馬】:リンデン皇子の弟。一見、自由気ままで飄々としているように見えるが、魔法の腕は帝国一。前世ではエリーゼの良き理解者で親友だった。生まれ変わったエリーゼにも親身に寄り添い、陰ながら彼女を支える。<第6・7・9・11・12話>
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ミンチェスター・ド・ロマノフ【井上 和彦】:リンデンの父。目的のためには手段を選ばない精鋭さを持っているが、それらは帝国や民のためを想っての行動。生まれ変わったエリーゼに度々試練を与えるが、エリーゼのことを娘のように想っている。前世では持病で命を落としてしまう。<第2・3・5~7・9・11・12話>
そのほか、劇中で登場する、個別に役名が付いているキャラクターとしては、次のような人たちがいます。< >内はそのキャラクターが登場(声優が出演)する放送回です。
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高本 葵【石川 由依】:処刑されたエリーゼが現代の日本に転生した姿。両親を失い施設で育ち、凄腕の外科医となって人命救助に尽力したが、手術のためドイツに向かう旅客機が墜落し命を落とした。<第1話>
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翔子【本多 真梨子】:高本葵の同僚の外科医。字が汚い葵の報告書を判読して書き直し、提出してくれている。<第1話>
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ここな【諸星 すみれ】:高本葵に憧れる祥子の後輩の外科医。<第1話>
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田中【駒田 航】:高本葵の同僚の外科医。<第1話>
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機長(柳田)【速水 奨】:高本葵が搭乗したドイツに向かう旅客機の機長。<第1話>
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マリ【岡咲 美保】:クロレンス侯爵家に仕えるエリーゼの侍女。<第1・2話>
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エル・ド・クロレンス【上田 燿司】:クロレンス侯爵家の当主で、エリーゼの父。<第2・3・9・11・12話>
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ベント卿【斎賀 みつき】:ミンチェストの側近。<第2・3・5~7・11・12話>
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ベン子爵【土田 大】:皇室十字病院の教授で、皇宮の侍医。<第3~5・7・8・11・12話>
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ゴート子爵【山本 満太】:クロレンス侯爵家が援助しているテレサ病院の院長。<第3~5・12話>
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ランドル【竹内 良太】:リンデンに仕える初老の側近。護衛として同行中に襲撃を受け、運ばれたテレサ病院でエリーゼの手術を受ける。<第4・10話>
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ハンス【保住 有哉】:テレサ病院の医師で、グレアムの部下。<第4・8・10話>
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ハーバー公爵夫人【さとう あい】:ロマノフ皇室の血筋を継いでいる西国ウェールの大貴族夫人。パーキンソン病による嚥下障害で食べ物を喉に詰まらせて死の危険に至る。<第6・7話>
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ヨーデル【井上 喜久子】:20年前のロンド疫病事件で、グレアムと共に生き残ったファロン男爵家の侍女。<第8話>
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ベントル【中務 貴幸】:クロレンス侯爵家に仕える騎士。<第8話>
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アルバート・ド・チャイルド【木島 隆一】:チャイルド侯爵家の長男で、ユリエンの兄。情報部の中佐。<第9話>
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カイル【青山 穣】:ローズデール病院の教授。<第9・12話>
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ダニエル【松川 裕輝】:ユリエンが乗っていたチャイルド家の馬車の御者。<第9話>
公式サイトのストーリーで紹介されているあらすじは、次のとおりです。
第1話「償い」
<悪女皇帝と呼ばれ火炙りの刑で一生を終えたエリーゼ。前世の過ちを清算すべく、2回目の人生は天才外科医・高本葵として人の為に生きていたが、ある日飛行機事故で帰らぬ人に…。ところが葵が目を覚ますとエリーゼに戻っていた!驚きを隠せないエリーゼだが、そんなエリーゼを見て怯えるメイド、不思議に思う家族がいて…>
原作コミックでいうと、第1巻に収載されている第1話・第2話におおむね対応する部分ですが、現代の日本で外科医をしている高本葵のエピソードの大半は、アニメオリジナルのストーリーになっています。
第2話「賭け」
<周りの人たちに訪れる悲劇を回避すべく、リンデン皇子との婚約を破棄しようと決意するエリーゼ。「皇后になるのではなく、医者になりたい」とミンチェスター陛下とリンデン皇子に打ち明けるが、願いはすんなりと受け入れなかった。そしてエリーゼは陛下に難題な賭けを持ちかけられてしまい…>
原作コミックでいうと、第1巻に収載されている第3話から第11話までにおおむね対応する部分になっています。
第3話「聖女」
<身分を隠し、テレサ病院に見習いとしてやってきたエリーゼ。可憐なエリーゼの姿に驚きを隠せないグレアム医師と患者たちはエリーゼに冷ややかな視線を送る。物怖じしないエリーゼは、天才外科医・高本葵だった頃の才能を発揮して次々と患者の容体を良くしていく。 一方、エリーゼの才能を疑う者がいて…>
原作コミックでいうと、第1巻に収載されている第12話、第2巻に収載されている第13話から第16話の途中までにおおむね対応する部分になっています。
第4話「颯然」
<エリーゼに婚約破棄を求められたリンデンは、エリーゼのことが気になってしょうがない様子。一方、エリーゼは持ち前の医学知識で頭角を現し始めていた。そんななか、テレサ病院に重症患者が運ばれてくる。患者と共にやって来た謎の美青年はエリーゼに強い興味を示しているようで…?>
原作コミックでいうと、第2巻に収載されている第16話の途中から第24話の途中までにおおむね対応する部分になっています。
第5話「試練」
<圧倒的な医術で難関な脾臓摘出手術を成功させたエリーゼ。類い稀な才能に感銘を受けた医師たちはエリーゼに医師試験の受験資格を与える。着実に医者への道に進み始めたと喜ぶエリーゼだが、その一方でさらなる試練をエリーゼに与えようと企むミンチェスターとベント卿がいて…>
原作コミックでいうと、第2巻に収載されている第24話の途中からと、第3巻に収載されている第25話から第29話の途中までにおおむね対応する部分になっていますが、細部のエピソードが出てくる順番は、多少アレンジされているようです。
第6話「昼想夜夢」
<ミンチェスターの誕生祭で恋のライバルだったユリエンと再会するエリーゼ。ユリエンにした酷い仕打ちを思い出したエリーゼは、心を改めてユリエンに優しく接する。その甲斐あってか2人は和解。エリーゼがホッと安心した矢先、ミンチェスターが衝撃の発表してしまい…>
原作コミックでいうと、第3巻に収載されている第30話から第34話の途中までにおおむね対応する部分になっていますが、高熱を出すのがエリーゼ本人ではなくユリエンに代わっているなど、多少のアレンジが加えられています。
第7話「追憶」
<誕生祭で瀕死の患者が出てしまい、一刻を争う処置を行うことになったエリーゼ。なんとか患者の命を取り留めたが、帝国初の気管切開手術だったためにエリーゼは不敬罪に問われて捕えられてしまった。ミンチェスターはエリーゼの処置が完璧ではないと睨んでおり、落ち度はないかとグレアムたちに調査を依頼したが…>
原作コミックでいうと、第3巻に収載されている第34話の途中からと、第4巻に収載されている第35話から第37話までにおおむね対応する部分になっていますが、瀕死の患者が出るのが翌日になっているなどのアレンジが加えられています。
第8話「昔日」
<身分を偽りテレサ病院にいたエリーゼだが、グレアムたちに素性がバレてしまった!
エリーゼはグレアムとの仲を取り戻そうとグレアム宅へ訪れるが、思わぬピンチに見舞われてしまう。原因不明の病に立ち向かうエリーゼとグレアム。天才と呼ばれる2人は手を取り合って…>
原作コミックでいうと、第4巻に収載されている第38話の前半に対応する部分と、第2巻に収載されている第23話の一部のエピソードを盛り込んで膨らませた部分からなっていて、後半で描かれるヨーデルの急変とそれに立ち向かうエリーゼとグレアムの部分は、アニメオリジナルのようです。
第9話「嵐の後」
<皇室薔薇勲章を受勲した翌日、前世で敵対していたチャイルド家に泊まることになったエリーゼ。考えてもいなかった展開に驚くエリーゼをよそに、ユリエンは色々なことを成し遂げたエリーゼに感心を寄せていた。和やかに進む会話の中でユリエンとエリーゼは誰にも言ってこなかった胸の内をひとつひとつ溢していき…>
原作コミックでいうと、第4巻に収載されている第38話の後半、第5巻に収載されている第49話と第50話の前半を基にしたストーリーですが、かなりアニメオリジナルの要素が加えられています。
第10話「玉響」
<ロンと急遽お出かけすることになったエリーゼ。ロンの正体がリンデンとは知らずにドキドキなエリーゼと、ポーカーフェイスを貫きながらもエリーゼにときめいているロン。絵に描いたような甘いデートのさなか2人は事故に巻き込まれてしまう。一夜で互いの心は近づき合うが、ロンは思うところがあって…>
原作コミックでいうと、第4巻に収載されている第39話と第40話の前半を基にしたストーリーですが、後半で描かれる劇場での火災のエピソードなど、アニメオリジナルの要素も多く入っています。
第11話「願い」
<皇室薔薇勲章の授賞式に出席したエリーゼ。多くの人たちから祝福されるがエリーゼは二日後に行われる医師資格試験のことで頭がいっぱい。そんなさなか、ミンチェスターが突然倒れてしまう。原因を追求しようと奮闘するエリーゼだが答えは見つからず。一方、世間は陛下毒殺未遂事件と騒ぎ出して…>
原作コミックでいうと、授賞式の場面は第4巻に収載されている第38話の中盤部分で描かれており、ミンチェスターが倒れる部分はウェブコミックでまだ単行本化されていない部分で描かれているようですが、時系列が大きく異なるなどアニメオリジナルのアレンジが多く入っています。
第12話「道」
<悲劇が起こるまでもう時間がないと感じたエリーゼは、大切な人の命を守るため、リンデンを悲しませないために懸命に死力を尽くす。そしてついに始まる医師資格試験。全ての行事を終えたエリーゼに多くの人が感心を向け、エリーゼはこの世界でどう生きていくか強く確信していく。>
前半は第11話からの続きのアニメオリジナルのアレンジ、医師資格試験以降のシーンは原作コミックの第4巻に収載されている第38話の後半部分、第40話の後半部分で描かれており、最後のミンチェスターとのシーンもアニメオリジナルのアレンジのようです。
(ここまで)
ここまで原作のストーリーを変えてアニメオリジナルの要素も盛り込んでアレンジしているのは、最近の1クールもののアニメではかなり珍しい気がします。1クールでの作品としてのまとまりを考えれば、医師資格試験の合格を最後の節目にする意図はよく理解できるのですが、コミックを読むと、その先の続く軍での伝染病の抑止など、魅力的なストーリーが続いているので、もっと原作に忠実な展開にできなかったのだろうか、ともったいない感じがしてなりませんでした。