鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

アニメ映画「屋根裏のラジャー」

仕事帰りにTOHOシネマズ日比谷に行きました。


建物の入口前の広場ではクリスマスのイルミネーションが輝いていました。


エスカレーターを上がって、スクリーン1~11がある4階へ。


この日の上映スケジュール。既に上映が終わった回も含めて、22作品・29種類の上映が行われていました。

この日観るのは、「屋根裏のラジャー」(12月15日(金)公開)。全国357館と大規模な公開です。


時間は19時ごろ、ロビーはかなり賑わっています。


ゆったりとしたロビーをずっと進んで、スクリーンへ。


上映は257+2席のスクリーン9。うち8席はプレミアボックスシート(追加料金1,000円)です。お客さんは40人くらいだったでしょうか。


(チラシの表裏)


(チラシの中見開き)


(その前に配布されていた別バージョンのチラシ)

 

スタジオポノックが、イギリスの作家で詩人のA・F・ハロルドによる小説「ぼくが消えないうちに(The Imaginary)」をアニメ映画化した作品で、少女の想像によって生まれたイマジナリーフレンドを主人公に、現実と想像が交錯する世界で起こる冒険を描いたファンタジーアドベンチャー。監督は 百瀬義行、企画・脚本・プロデューサーは西村義明。

 

映画情報サイトで紹介されているストーリーは、

 

主人公の少年・ラジャーは、少女アマンダが“想像の友だち”として生み出した、彼女以外には誰にも見えないイマジナリ。ラジャーは、アマンダと一緒に想像の世界に飛び込んで、歓びいっぱいの毎日を過ごしていた。しかし、彼のようなイマジナリはいつか人間に忘れられると、消えていく運命…。ラジャーは自分の運命に戸惑いながらも一縷の望みを抱いて進む。彼がたどり着いたのは、人間に忘れさられた想像たちが身を寄せ合って生き続けるイマジナリの町…。ラジャーは、大切な人と家族の未来を懸けた最期の冒険へと旅立ち…。

 

・・・というもの。

 

主な登場人物・キャストは、次のようなもの。

  • ラジャー【寺田 心】:アマンダの友達のイマジナリ。

  • アマンダ【鈴木 梨央】:想像でラジャーを生み出した少女。書店の2階に住んでいる。

  • ジー【安藤 サクラ】:アマンダの母。夫を亡くした後、シャッフルアップ書店の店主となったが、閉店を決めて、再就職活動中。

  • エミリ【仲 里依紗】:図書館にあるイマジナリの町でラジャーが出会った少女。

  • オーロラ【杉咲 花】:謎に包まれたオーロラ。

  • ジンザン【山田 孝之】:ラジャーの前に現れ、イマジナリの町に案内した猫のイマジナリ。

  • ダウンビートおばあちゃん【高畑 淳子】:リジーの母。田舎で暮らしている。

  • 老犬【寺尾 聰】:老犬の姿のイマジナリ。かつてリジーが生み出したイマジナリで、「冷蔵庫」と呼ばれていた。

  • ミスター・バンティング【イッセー尾形】:ラジャーを追い回す謎の男。イマジナリを食べて想像力を維持している。

  • 骨っこガリガリ【一龍斎 貞友】:可愛い骸骨の姿をしたイマジナリ。

  • 小雪ちゃん【かぬか 光明】:カバの姿をしたイマジナリ。

  • ドロン【大谷 育江】:屋根の上に上ったラジャーが出会ったロボットの姿をしたイマジナリ。

  • ジュリア【平澤 宏々路】:アマンダの友達。

  • ジョン【川原 瑛都】:イマジナリの町に来たラジャーが最初に想像の世界で一緒に遊ぶ仕事をした少年。

 

ネタバレになりますが、備忘も兼ねて、詳しめにあらすじを紹介してみます。

 

ラジャーは、3月と3週間と3日前に少女アマンダの想像によって生み出された、アマンダ以外には見えないイマジナリ。

父が急死し、母のリジーは営んでいた書店の閉店を決める。リジーと2人で暮らすアマンダは、想像の世界でラジャーと冒険する。2人は「忘れないこと、守ること、泣かないこと」を約束していた。アマンダのことを心配するリジーは、ラジャーは見えないがラジャーがいるというアマンダに話を合わせてあげていた。

そんな中、閉店セールをしている書店に、ミスター・バンティングと名乗る男が子どもの調査のためと言ってやってきて、イマジナリがいることを確認して帰っていく。アマンダとラジャーは、バンティングの隣に不気味な少女がいるのを見たが、リジーにはそれは見えない。
その夜、リジーが面接のため外出している間、アマンダたち書店でかくれんぼをしていると、突然停電になってしまう。すると、昼間に見た不気味な少女が、ラジャーを捕らえて連れ去ろうとする。

新たな職探しがうまくいかず、心の余裕がなくなったリジーは、ラジャーの存在を否定するような発言をし、アマンダとラジャーもけんかをしてしまう。
屋根の上に登って物思いにふけるラジャーは、隣の建物の屋根の上に、ロボットの姿をしたイマジナリがいるのを見る。ラジャーが声を掛けると、うなだれているそのロボットは、自分がもう必要とされなくなったことを話す。その姿は透け始めており、消えようとしていた。

その翌日、買い物にスーパーマーケットに行ったリジーとアマンダたち。駐車場に車を停めて、リジーが駐車券を取りに行っている間に、ラジャーに他のイマジナリとは違う何かを感じて目を付けたバンティングが姿を現し、ラジャーを捕らえて食べようとする。アマンダはそれを邪魔してラジャーと走って逃げ出すが、アマンダは駐車場の構内で、車にひかれ、救急車で運ばれてしまう。

アマンダから引きはがされてしまったラジャーは、アマンダが意識を失ったことで、体が透け始める。ラジャーはアマンダが死んでしまい、死んだことで自分は消えてしまうのではないかと不安に怯える。

そこに、猫のイマジナリのジンザンが現れ、ラジャーをイマジナリが消えない安全な「イマジナリの町」である想像力に満ちた図書館に導く。そこでは、人間たちが静かに本を読んでいる中で、数多くのイマジナリが、にぎやかに過ごしており、ラジャーはエミリ、小雪ちゃん、骨っこガリガリと仲良くなる。

図書館の閉館後、人間の想像力が生み出した本の世界が現れる。この日はヴェネツィアの街並みが姿を現し、イマジナリたちは焚き火を囲んでにぎやかに過ごす。そこで、ラジャーがミスター・バンティングに食べられそうになったことをエミリに話すと、一同は恐怖にうろたえる。
みんなが眠りについたころ、眠れないラジャーがひとり佇んでいると、そこにジンザンがやってくる。ジンザンは、夜を恐れる子どもが眠る自分を見守るために生み出されたイマジナリだったことを話し、見守っているから眠るよう諭す。

翌朝、小雪ちゃんに起こされたラジャーは、みんなが集まる掲示板の前に遅れてかけつける。掲示板には、イマジナリの友達を求める子どもたちの写真が現れ、その写真を取るとそれが切符代わりになって、その子の想像の世界に行くことができるのだ。ラジャーはジョンという名の男の子の写真を取り、エミリ、小雪ちゃん、骨っこガリガリとともにジョンの想像の世界に入ると、そこは宇宙船の中だった。ジョンの指揮のもと敵と戦うラジャーたちだが、骨っこガリガリが見当たらない。すると、パンダ姿の宇宙服を着た骨っこガリガリが宇宙船の外に登場し、敵を一網打尽にする。

ラジャーたちはそのまま図書館に戻れるはずだったが、ラジャーが切符代わりの写真を手放してしまったことで、夢を見ているジョンの部屋に戻ってしまい、図書館まで自分たちで向かわなければならなくなる。ジョンの部屋を出ようとするラジャーたちだが、骨っこガリガリは、ジョンに手を掴まれて、パンダの姿に変わる。1日だけのイマジナリではなく、本当のジョンのイマジナリになったのだ。

外に出ると、エミリは病気で病院から出ることができずに亡くなった子のイマジナリで、その子はもう死んでしまったことをラジャーに話す。エミリたちはバスに乗って図書館に帰ろうとするが、ラジャーは、エミリたちと別れ、アマンダの家に走って向かう。
アマンダの家には、リジーと訪ねてきた母のダウンビートおばあちゃんがいた。2人の話からアマンダが入院していることを知るラジャー。リジーは2階のアマンダの部屋に行く。アマンダがラジャーに開けないよう注意書きを貼っていた缶をリジーが開けると、亡き夫とアマンダが写った写真が一番上に置かれていた。そして、クローゼットに置かれていたアマンダ愛用の雨傘を広げると、その内側には、父親を忘れないこと、母親を守ること、泣かないこと、と自分に言い聞かせるように誓いの言葉が書かれていた。それを見たリジーは、アマンダのことを思い涙し、それを目の当たりにしたラジャーは自分が生まれた理由を知る。

その日のうちに図書館に帰らないと消えてしまうラジャーは、アマンダの家を出て図書館に向かうが、その途中で、ラジャーを捕食しようと狙うミスター・バンティングに見つかってしまう。心配したエミリとジンザンも加勢してくれるが、図書館への入口である扉が開いたところで、エミリはバンティングによって撃たれ、姿は消えていってしまう。

ラジャーが図書館に戻ると、この日は長崎の出島の世界が広がっていた。自分のせいでエミリが消えてしまったことで落ち込むラジャーだったが、小雪ちゃんもジンザンも、エミリの記憶がなくなっていた。そこに老犬が現れる。老犬は自分がリジーのイマジナリだったことを話し、ラジャーを励ます。

翌日、ラジャーは自分が消えることを覚悟して、アマンダのために病院に向かおうと心に決める。掲示板でアマンダの友達のジュリアの写真を手にしたラジャーは、劇場のバレリーナになっていた。ラジャーはジュリアに病院に連れて行ってほしいと訴えるが、ジュリアはバレエの舞台が近い、と聞き入れない。しかし、ラジャーはジュリアの本物のイマジナリになりかけ、瞳の色も茶色から青に変わってしまう。そこで、ジュリアは習い事のために母に呼ばれ、想像の世界は終わるが、ラジャーはアマンダのイマジナリとしての記憶を失いかける。

ジンザンの叱咤激励で何とか記憶を取り戻したラジャーは、ジュリアの家を出て、アマンダが入院している病院に向かう。リジーが飲み物を買うために病室を出た隙にラジャーがアマンダの病室に入ると、アマンダはまだ意識を取り戻しておらずベッドで寝ていた。ラジャーはアマンダに気づいてもらおうと声を掛けるが、そこにミスター・バンティングが入ってくる。
ラジャーがバンティングから逃れようとしている間に、アマンダは意識を取り戻すが、すぐにはラジャーを思い出すことができず、その姿を見ることができない。しかし、ラジャーを食べようとするバンティングの言葉からラジャーのことを思い出すと、ラジャーとそれを捕らえようとする不気味な少女が見えるようになる。アマンダはラジャーを取り戻し、ベッドをボート代わりに、想像の世界へ飛び立つ。

想像の世界でバンティングから逃げているところで、リジーが病室に帰ってくる。苦しんでいる様子のアマンダを見て、リジーはバンティングに出ていくよう求めるが、ラジャーを捕らえて食べようとするバンティングは聞き入れない。アマンダの言葉から、自分が子どものころに「冷蔵庫」と名付けた老犬のイマジナリがいたことを思い出すと、図書館の掲示板でリジーの写真を取った老犬が病室に現れ、アマンダたちに加勢する。
それでも、ラジャーはバンティングに捕らえられ、危うく食べられそうになるが、その様子を見ていた不気味な少女が、ラジャーの代わりにバンティングに食べられる。一度はそれを飲み込んだバンティングだったが、すぐに異変が生じ、バンティングは姿を消してしまう。

ジーはかつて自分のイマジナリであった冷蔵庫との再会を喜ぶ。それを見ていたアマンダは、ラジャーを最後の冒険に行く、と誘うのだった。

(ここまで)

 

普通の大人は夢や想像の世界をすっかり忘れてしまうわけですが、それをすっかり捨ててしまわず、現実と向き合っていくことを訴える物語と受け取りました。正直に書くと、あまり期待を持たないようにして観て良かった、という感じでした。話自体はいい話だと思いますし、悪くはなかったのですが、私にはいまひとつ響きませんでした。

スタジオポノックの制作ということで、キャラクターデザイン、画調などは、宮崎駿が監督を務めたかつてのスタジオジブリ作品とかなり相似している印象ですが、それを超える魅力が感じられないのは、劇中のリジーなどと同じく、自分が子ども時代の夢や想像力を失ってしまったということなのかもしれませんが、このスタジオのある種の限界のような気もしました。

イマジナリは、忘れられたら消えてしまう存在ですが、子どもたちが成長して想像の世界に逃げ込まずに生きていけるようになるまでの間、子どもたちを支えてくれる存在として描かれています。明示まではされていませんが、3月と3週間と3日というラジャーの年齢は、父が亡くなった時、アマンダが父を失った悲しみから想像の世界に逃げ込んだことで生まれたことを示しています。エミリが飛行機のパイロットのようなゴーグルをつけて滑空する元気な少女なのも、病院から出ることもできずに死んでしまった子が想像の世界で生み出したからなのでしょう。