鷺の停車場

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映画「夜明けのすべて」

休日の朝、MOVIX亀有に行きました。


8時半すぎの時間帯、まだロビーのお客さんは少なめでした。(なお、11時前に観終えて出たころには大混雑になっていました。)


上映スケジュールの一部。この日は、29作品・種類の上映が行われていました。


この日観るのは「夜明けのすべて」(2月9日(金)公開)。全国223館と大規模での公開です。


スクリーンに向かう途中の通路の壁には、タペストリーも飾られていました。


上映は147+2席のシアター1。お客さんは40人ほどでした。


(チラシの表裏)

 

2019年の本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの同名小説を原作に、実写映画化した作品で、監督は三宅唱、脚本は和田清人

 

映画情報サイトで役名が公表されている登場人物・キャストは、次のとおりです。

  • 山添 孝俊【松村 北斗】:パニック障害となり、栗田科学に転職してきた青年。
  • 藤沢 美紗【上白石 萌音】:PMS月経前症候群)のため、新卒で入った会社を辞め、栗田科学で働く女性。
  • 辻本 憲彦【渋川 清彦】:山添の前の会社での上司。姉を自殺で失っている。
  • 大島 千尋【芋生 悠】:山添の前の会社の同僚で恋人。
  • 岩田 真奈美【藤間 爽子】:美紗が転職を相談する転職エージェント。
  • 藤沢 倫子【りょう】:美紗の母親。
  • 栗田 和夫【光石 研】:栗田科学の社長。弟を自殺で失っている。

また、公式SNSなどで確認できた範囲では、次の方も出演されています。

  • 宮川 一朗太:藤沢の主治医。

  • 内田 慈:山添の主治医で、つぼいメンタルクリニックの医師・坪井絵里子。

  • 久保田 磨希:栗田科学の同僚の住川雅代。

  • 足立 智充:栗田科学の同僚でデザイン職の平西謙介。

  • 矢崎 まなぶ:栗田科学の同僚で営業職の鮫島博。

  • 斉藤 陽一郎:10年前に自殺した栗田の弟。

  • 中村 シユン:栗田科学の同僚で製品開発担当の猫田欣一。

  • 大津 慎伍:栗田科学の同僚で副社長・経理担当の鈴木譲。

このほか、丘みつ子、山野海も出演していますが、私にはどの役だったのか分かりませんでした。

 

チラシで紹介されていたストーリーによれば、

 

「出会うことができて、よかった」

人生は想像以上に大変だけど、光だってある―—

月に一度、PMS月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さんはある日、同僚・山添くんのとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。

 

・・・というあらすじ。

 

メンタルな症状によって生きにくさを感じている2人が、少しだけお互いを支え合うようになり、友達でも恋人でもない、戦友と言ってもいいような関係になっていく様子を、温かい眼差しで描いた作品。大きな出来事や恋愛の駆け引きなどの劇的な展開があるわけではありませんが、2人が勤める職場の社長や同僚たちが2人を見守る距離感が心地よく、何気ない日常を切り取った情景も美しく映り、心に沁み入るような作品でした。

映画オリジナルの設定が加えられるなど、原作小説からのアレンジも入っているようなので、原作小説も読んでみたいと思いました。

 

以下は、ネタバレになりますが、備忘も兼ねて、以下、作品のあらすじを紹介します。(多少の記憶違いはあるだろうと思います)

 

雨が降る中、傘もささずに駅前のバス停のベンチに座る藤沢。これといった野心もないのに、どう振る舞ったらいいか悩んでしまう藤沢は、いったい私は周りにどういう人間だと思われたいのだろうかと思う。警官たちがやってきて声を掛けるが、自暴自棄になったように何かを探して鞄の中のものを投げ捨てる。藤沢は警察に保護され、母親が引取りにやってきて、雨の中一緒に警察署を出る。

その日、藤沢はPMS月経前症候群)でイライラを抑えることができず、新卒で入った会社でコピーをお願いした同僚に当たり散らしてしまっていた。翌日、その様子を携帯で撮った映像を上司が確認すると、そこには藤沢をなだめようとする同僚の言葉に、藤沢の苛立ちは更に増大し、攻撃的な言葉を吐く様子が記録されていた。藤沢はその同僚に謝罪する。

主治医に診察に訪れた藤沢。処方されていた漢方薬にあまり効果がなく、ピルを処方してほしいとお願いするが、母親の既往症から処方を断られ、代わりに違う薬を処方される。しかし、その薬は眠たくなる副作用があり、猛烈な眠気に襲われた藤沢は仕事中に寝入ってしまい、ミスをしてしまう。そして入社間もなくその会社を辞めることになる。

3年後、藤沢は「栗田科学」という科学工作玩具を作る中小企業で商品管理などの仕事をしていた。周囲の温かい理解を得て働いていた。ある日、藤沢はお菓子を買ってきて同僚に差し入れするが、3か月ほど前に転職してきたやる気なさそうに働く山添は、生クリームは好きじゃないと、お菓子を断る。

その山添は、自宅でエアロバイクを漕ぎながら、元の会社の上司である辻本とWebで話をする。今の会社への不満を漏らし、元の会社に戻れるようお願いする山添に、辻本は調整してみると返事する。

山添は、「つぼいメンタルクリニック」を訪れる。心配する元同僚の恋人・千尋も同伴する。山添はパニック障害になっており、その経過観察だった。ネットなどの情報から、行動療法はどうかと言う山添に、主治医は、簡単に手に入る情報は声が大きい人のものばかりだからあまり鵜呑みにしないでほしい、と言い、パニック障害の治療法としては暴露療法というものがあると話す。それを聞いた山添は、その帰り、乗ることができなくなっていた電車に乗ろうと挑戦するが、やはり足がすくんで乗ることができない。

栗田科学の社長の栗田は、10年前に右腕だった弟を自殺で失い、自殺で家族を失った人たちが集まる自助グループに参加していた。その集まりで、栗田は姉を自殺で失った辻本から話しかけられ、山添の様子を尋ねられる。

そうしたある日、藤沢は、山添が愛飲するペットボトルの炭酸水のキャップを開ける音を引き金に、山添に当たり散らしてしまう。

その後、迷惑を掛けた職場に差し入れしようと和菓子店に入った藤沢は、前に差し入れを断った山添のために、甘くないお菓子はないかと店員に尋ねる。そして、買って山添に渡したのは、漬物だった。

千尋が差し入れを持って山添のアパートを訪ねてくる。外で話がしたいと言う千尋は、ロンドンに転勤になったことを伝える。祝意を伝える山添だったが、内心は複雑だった。

その山添も、職場でパニック障害の発作を起こしてしまう。流し場に以前自分も飲んだことがある薬が落ちているのを拾った藤沢は、それが山添のものだと直感し、山添にその薬を飲ませる。栗田が外に連れ出して発作が収まった山添は早退するが、藤沢は社長に頼まれて山添が無事に帰宅できるか送っていく。山添は、自宅アパートの近くで、もう大丈夫だから、と藤沢に帰ってもらうが、アパートに着いた山添に、コンビニで飲み物など差し入れを買ってきた藤沢が訪れる。山添が、薬がなぜ自分のものだと分かったのか尋ねると、藤沢は自分も飲んだことがある薬だと言い、自分がPMSであることを明かす。パニック障害PMSは違うと思う山添だったが、藤沢はPMSもまだまだだね、と言って帰っていく。

それをきっかけに、なかなか他人に言えない病気を抱えている2人の距離は近くなっていく。藤沢は、使っていなかった自転車をきれいに掃除して電車に乗れない山添にあげ、美容室に行けず自分で髪を切っていた山添に、自分が切ると説き伏せてカットを始めるが、素人の藤沢は見事に失敗し、鏡を見た山添は大笑いする。

一方の山添も、経過観察に訪れたクリニックで主治医にPMSについて尋ねて本を借りて読み、年末最終日の大掃除の日、藤沢のPMSの前兆を察知した山添は、藤沢を外に連れ出し、誰かに当たり散らさないように、しばらく1人で怒っててもらっていいですか?と言って車の洗車をしてもらう。

会社が年末年始の休みに入り、帰省した藤沢は母親が入所しているリハビリ施設を訪れ、母親を引き取って実家のアパートに帰る。

一方の山添は、実家に帰らず、自宅近くの広場で辻本の子どもの相手をしていた。その山添に、辻本はおせち料理のお裾分けを渡す。

戻ってきた藤沢は、山添のアパートを訪れるが、山添は不在で、買ってきたお守りをポストに投函する。そこで藤沢は、山添の部屋を訪ねてきた千尋と出会う。山添と席が隣の同僚だと自己紹介して帰路についた藤沢がみかんを食べながら歩いていると、藤沢を追いかけてきた千尋に呼び止められる。藤沢は神社でいっぱいお守りを買ったからと、おもむろに千尋にお守りをプレゼントし、千尋はあなたのような人が山添のそばにいてくれてよかったと話す。

そんな頃、栗田科学で年1回行っている、小学校の体育館にテントを張って上映する移動プラネタリウムで、藤沢は上映時の解説を、山添はその原稿作りを担当することになる。

藤沢は、友人の紹介で、転職エージェントの女性と会う。体が不自由になった母親を介護するため、地元での転職を考えていたのだった。

ある日曜日、山添は栗田に頼んで、しばらく開けていなかった倉庫を開けてもらい、栗田の弟がプラネタリウムの解説を担当していた当時の資料を探すと、天体観測の記録や、プラネタリウムの解説を録音したカセットテープなどが見つかる。そのテープを聞いて、軽妙な語り口に思わずクスっとしながら、山添は原稿を起こしていく。

一方、その日ヨガ教室に通っていた藤沢は、教室の終了後、ちょっとしたきっかけで、同じ教室の生徒の女性にイライラをぶつけてしまう。イライラを抑えようと会社に向かい、車を洗い始める藤沢に、気づいた山添は声をかける。

2人は同志のような思いを抱くようになっていき、藤沢は山添のアパートを訪れてともに時間をすごすようになる。病気になって良かったことが何かあるか話題となり、藤沢は、治療の一環でヨガをしているので体は柔らかくなったと言い、山添は、3回に1回くらいは藤沢のことを止められると話す。

藤沢は、再び会った転職エージェントの女性に、プラネタリウムを見に来てほしいと誘い、山添も辻本をプラネタリウムに誘う。山添が今の会社に残ることを決めたことを辻本に伝えると、辻本は山添が前向きになったことに感極まり涙する。

ある日、藤沢はPMSの症状で体調が悪くなって早退する。山添は藤沢が職場に置き忘れたスマホなどを届けに、藤沢からもらった自転車に乗って藤沢のアパートを訪れる。山添は玄関のドアノブにスマホなどが入った袋を掛けて帰っていくが、その後ろ姿をベランダからそっと見送る藤沢は温かい気持ちになる。

そして、プラネタリウム上映会の当日、解説を行う藤沢は、その最後、倉庫で見つけた栗田の弟が残していた「夜明け前がいちばん暗い」との一文から始まる「夜についてのメモ」を朗読する。
上映が終わり、テントから出てきた観客たちは、よかったよ、と藤沢たち声を掛け、子どもと来ていた辻本も山添に声を掛ける。

そして、母親を介護しながら働くため、藤沢は栗田科学を辞めて転職していき、山添は引き続き栗田科学で働いていた。栗田科学では、社員の住川の息子・ダンと同じく放送部の女生徒の中学生2人が社員へのインタビューなどを重ねて制作したドキュメンタリーの上映会が開かれる。山添は、栗田のことを回想し、出会うことができてよかったと思うのだった。

 

(ここまで)


なお、入場者プレゼントをいただきました。オリジナルフィルム風フォトシートでした。公開初日の2月9日(金)から3連休最終日の2月12日(月)の4日間限定で配布されたそうです。