2025年1月から3月までの2025冬クール、4月から6月までの2025春クールの連続2クールで日本テレビで放送が始まった「薬屋のひとりごと」、先に紹介した第2期第1クールに続いて、4月4日(金)から5月9日(金)にかけて放送された第2期第2クールの前半、第37話から第42話までを紹介します。
繰り返しになりますが、2011年10月から小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載され、2014年から主婦の友社の「ヒーロー文庫」で文庫本が刊行されている日向夏さんの同名ライトノベルを原作にアニメ化した作品で、2023年10月から2024年3月までの連続2クールで第1期が放送され、本年1月から第2期の放送が始まっています。主要スタッフは、キャラクター原案:しのとうこ、総監督・シリーズ構成:長沼範裕、監督:筆坂明規、副監督:中川航、脚本:柿原優子/千葉美鈴/小川ひとみ、キャラクターデザイン:中谷友紀子、アニメーション制作:TOHO animation STUDIO×OLMなど。第2期第2クールのオープニングテーマはMrs. GREEN APPLE「クスシキ」、エンディングテーマがOmoinotake「ひとりごと」となっています。
公式サイトで紹介されている主要登場人物・キャストのうち、第37話から第42話までのエンドクレジットで名前が出てくるのは、次のとおりです。< >内が、それぞれのキャラクターがエンドクレジットで登場(声優が出演)する放送回です。
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猫猫(マオマオ)【悠木 碧】:毒と薬に異常なまでの執着を持つ、花街育ちの薬師。玉葉妃の娘の命を毒から救ったことで、壬氏にその才を見抜かれ、毒見役となる。一度は後宮を解雇されるも、壬氏付きの侍女として再び宮中に戻り、玉葉妃の妊娠判明後は再び翡翠宮で毒見役として仕えている。好奇心と知識欲、そしてほんの少しの正義感から、事件に巻き込まれることもしばしば。<第37~42話>
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壬氏(ジンシ)【大塚 剛央/潘 めぐみ(幼少期)】:後宮を管理している宦官。その美貌は、もし女性だったら傾国と言われるほど。後宮で起きるやっかいごと・問題を猫猫に持ち込んでは解決させている。その立場や出生には謎が多く、壬氏の命を狙った事件では、猫猫の機転で一命をとりとめた。最初は猫猫のことを都合のいい駒と考えていたが…?<第38~42話>※幼少期は第42話のみ
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高順(ガオシュン)【小西 克幸】:マメで気が利き、仕事への信頼も厚い壬氏の補佐役兼、お目付け役。時折幼い言動を見せる壬氏を諫める一方で、特殊な立場にいる壬氏を心配している。各所からの無茶ぶりに振り回される苦労人。<第38・39・41・42話>
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玉葉妃(ギョクヨウヒ)【種﨑 敦美】:最も皇帝の寵愛を受けていると言われている上級妃・四夫人の一人「貴妃」。娘・鈴麗の命を救ってくれた猫猫のことを強く信頼しており、ふたたび懐妊が分かってからは猫猫を毒見役として呼び戻した。聡明で思慮深いが、年相応の好奇心を見せることも。<第37~39・41話>
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里樹妃(リーシュヒ)【木野 日菜】:現帝の四夫人の一人「徳妃」。幼い故に自身の振る舞いはもちろん、後宮の風習やしきたりの知識が浅い。そのため侍女たちからも軽んじられてしまっている。<第37・38話>
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小蘭(シャオラン)【久野 美咲】:貧しい農村の出身で、親に売られる形で後宮に入った下女。猫猫の数少ない友人の一人。明るく天真爛漫な性格で、噂好き。甘いものが大好きで、よく猫猫からおやつをもらっている。<第37~39話>
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子翠(シスイ)【瀬戸 麻沙美】:おしゃべりで明るい新入りの下女。<第37・39~41話>
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虞淵(グエン)(やぶ医者)【かぬか 光明】:後宮唯一の医官で宦官。とても人がいいが、医局の薬の管理が甘く、死体を怖がるなど、医師としての技量は低いため、猫猫は心の中で“やぶ医者”と呼んでいる。<第38~42話>
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羅漢(ラカン)【桐本 拓哉】:軍部の高官でまわりから軍師などと呼ばれている。とても胡散臭く、理解不能な行動もとるため周囲からは迷惑視されているが、その慧眼・采配は確かなもので、今の地位に上り詰めた実力者。猫猫の実の父。<第40・42話>
以上の主要登場人物のほか、第37話から第42話までに登場する個別に名前などが付けられているキャラクターとして、次のような人物がいます。< >内がそれぞれのキャラクターが登場(声優が出演)する放送回です。
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紅娘(ホンニャン)【豊口 めぐみ】:玉葉妃の侍女頭。<第37~39・41・42話>
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桜花(インファ)【引坂 理絵】:玉葉妃の侍女。<第39~42話>
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貴園(グイエン)【田中 貴子】:玉葉妃の侍女。<第39~42話>
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愛藍(アイラン)【石井 未紗】:玉葉妃の侍女。<第39・41話>
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白羽(ハクウ)【佐藤 聡美】:新たに入った玉葉妃の侍女。黒羽・赤羽とは三姉妹。<第37・41話>
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黒羽(コウウ)【上田 瞳】:新たに入った玉葉妃の侍女。白羽・赤羽とは三姉妹。<第37・41話>
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赤羽(セキウ)【伊藤 美来】:新たに入った玉葉妃の侍女。白羽・黒羽とは三姉妹。<第37~39・41話>
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河南(カナン)【庄司 宇芽香】:里樹妃の侍女頭。かつては毒見役だった。<第37・38話>
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羅門(ルオメン)【家中 宏】:猫猫が「おやじ」と呼んで慕う養父。かつて後宮で医官を務めていたが、追放された過去があり、今は花街で薬屋をしている。<第39~42話>
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馬閃(バセン)【橘 龍丸】:高順の息子の武官で、壬氏とは幼なじみ。<第40・42話>
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阿多(アードゥオ)【甲斐田 裕子】:現帝最初の妃で「淑妃」であったが、新たな「淑妃」楼蘭妃と入れ替わる形で後宮を去った。中世的な雰囲気で、男装の麗人のような振る舞いが後宮で人気を誇っていた。<第40話>
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子昌(シショウ)【チョー】:楼蘭妃の父親。<第40話>
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翠苓(スイレイ)【名塚 佳織】:外廷で働いていた薬草に詳しい謎の官女。蘇りの薬を飲んで姿を消していた。<第40・41話>
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毛毛(マオマオ)【引坂 理恵】:医局で飼われている猫。<第38話>
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深緑(シュンリュ)【勝生 真沙子】:後宮の診療所の女官。<第40~42話>
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思思【高橋 咲貴】:梨花妃の侍女。<第40話>
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響迂(キョウウ)【藤原 夏海】:猫猫が連れていかれた里にいた子供。<第41話>
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羅半(ラハン)【豊永 利行】:羅漢の養子。<第42話>
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音操(オンソウ)【江越 彬紀】:羅漢の副官。<第42話>
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漣風(レンプウ)【伏見 はる香】:楼蘭妃の侍女。<第42話>
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双凜(ソウリン)【河村 梨恵】:楼蘭妃の侍女。<第42話>
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元侍女頭【生天目 仁美】:里樹妃の元侍女頭。<第38話>
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金剛宮の侍女1【中井 美琴】:里樹妃の侍女。<第38話>
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金剛宮の侍女2【中野 さいま】:里樹妃の侍女。<第38話>
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老宦官【安原 義人】:手習所の講師も務めている老宦官。<第40話>
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年嵩の女官【久川 綾】:怪談を主宰した女官。<第40話>
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検査官【中務 貴幸】:新しく後宮に入ってきた宦官を検査する役人。<第37話>
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中級妃【山口 立花子】:湯殿に入浴に来た中級妃。<第37話>
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下級妃【石井 未紗/田中 貴子】:湯殿に入浴に来た下級妃。<第37話>
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先輩宦官【内野 孝聡】:噂の宦官の様子を見に視察に来た壬氏を出迎えた先輩宦官。<第38話>
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宦官【岡井 カツノリ】:楼蘭妃に献上される氷を荷車で運んでいた宦官。<第38・39話>
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下女【清都 ありさ】:小蘭が氷を積んだ荷車にぶつかった現場でヒソヒソ話をしていた下女。<第39話>
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宦官【丹羽 正人/いとう さとる】:壬氏の下で猫猫などの捜索を行った宦官。<第41・42話>
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侍女【柚木 尚子】:お面作りなどをする響迂を伝っていた侍女。<第41話>
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侍女【大南 友希】:壬氏の幼い頃、壬氏が不義の子だと噂話をしていた侍女。<第42話>
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ナレーション【島本 須美】<第40話>
各話ごとのあらすじは、次のとおりです。< >内が公式サイトのストーリーで紹介されている内容になります。
第37話 湯殿
<猫猫はもうすぐ後宮での年季が明ける小蘭から、次の働き口について相談を受けていた。その話を一緒に聞いていた子翠から突然、伝手を作りに行こうと湯殿へと誘われる。下女だけでなく、下級妃や中級妃たちも利用している大浴場で、小蘭は妃たちへの“とある奉仕“で仕事の伝手探しを始める。そして風呂場で気の緩んだ妃たちからは、上級妃たちの懐妊、そして新しく入った美麗な宦官の噂が聞こえてきて…。>
後宮に新たに宦官が入ってくる。そのうちの1人は足が不自由だった。そして、柘榴宮では、楼蘭妃が侍女から何かを耳打ちされ、そう、とだけ答える。
あと半年で後宮の年季が明ける小蘭は、どこかにいい働き口がないかと猫猫に相談する。伝手があるといえばある、と言う猫猫は、緑青館の妓女なら歓迎されるだろうが、生半可に勧める仕事でもないと思い、最後の最後の伝手かなあ、と答える。そこに顔を出した子翠にも小蘭が相談すると、子翠は伝手を作りに行く、と2人を湯殿に連れていく。
身体を洗って湯船に浸かった後、子翠は妃専用の露天風呂に2人を連れていく。石台の上にうつ伏せになった妃に香油をすりこみ、マッサージをする。こうして普段お近づきになれない妃と接するのが子翠の狙いだったのだ。風呂場でマッサージを終えた後、子翠は、この間までマッサージをしていた女官が年季が明けて辞めたが、中級妃の1人に気に入られてその実家で働いているのだと話す。
翡翠宮に戻った猫猫は、2日に一度湯殿にマッサージをしに行く話をすると、侍女頭の紅娘は機嫌を悪くするが、玉葉妃は、いいじゃない、ああいう場では気が緩んで思わぬ話が飛び出すもの、面白い話があったら聞かせてね、と歓迎する。
湯殿では、玉葉妃の懐妊のことは既に広まっており、梨花妃も、という話もちらほら聞こえてくる。そして、楼蘭妃も懐妊しているのではとの噂も出ていた。また、新しく宦官が30人も入ってきて、そのなかにかっこいい宦官もいるという噂もあった。宦官となる手術は行われなくなっていたが、子翠はそれらは異民族に去勢された元奴隷なのだろうと話す。そんな話をしているとき、猫猫は、里樹妃が湯殿に向かう姿を目にする。
翡翠宮に戻った猫猫は、白羽、黒羽、赤羽の3姉妹から、どういう経緯で翡翠宮にいるのかと尋ねられ、話の流れで、猫猫は赤羽を湯殿に一緒に連れていくことになる。人前で前掛けだけの姿になるのを恥ずかしがる赤羽も連れて小蘭たちとマッサージをしていると、里樹妃が侍女頭の河南を連れて湯殿にやってきたのを見る。猫猫が声をかけると、里樹妃の腕が剃刀負けになっているのに気づき、石台に連れていき、糸を使った脱毛を施す。
そのお礼にジュースをご馳走になった猫猫が、どうして大浴場に来たのか尋ねると、金剛宮の湯殿には幽霊が出ると話すのだった。
原作小説では、シリーズ第2巻の「薬屋のひとりごと 4」収載の「一話 湯殿」と「二話 赤羽」におおむね対応する部分になっています。
第38話 踊る幽霊
<小蘭の伝手作りに付き合い一緒に通っていた湯殿で、猫猫は里樹妃から「金剛宮の湯殿に幽霊が出る」という話を聞く。怯え切った里樹妃の様子に、壬氏に相談するように伝えると、後日、猫猫は壬氏から謎を解き明かすよう命を受ける。幽霊調査のために金剛宮に訪れ話を聞くと、里樹妃は脱衣所の隣にある締め切られた部屋の帳が揺れ、笑う白い顔を見たと言う。猫猫が原因を調査し始めると、そこには幽霊の正体だけでなく、里樹妃が抱える金剛宮の問題も露わになっていき…。>
湯殿から戻り、玉葉妃以外の上級妃の世話をするなんて信じられないと赤羽に文句を言われる猫猫は、あんなことを言われて首を突っ込むなという方が無理だと思う。直接相談を受けるわけにはいかない猫猫は、壬氏に相談するように里樹妃に伝えたが、案の定、壬氏が翡翠宮にやってきて、猫猫を金剛宮に連れていく。
侍女頭の河南が壬氏たちを湯殿に案内し、説明を始めるが、そこに元侍女頭が現れ、里樹妃と河南に偉そうに嫌味を言い始める。すると、壬氏はそれを宥めて、お茶が飲みたいと言って他の侍女たちをうまく追い出し、その間に里樹妃から事情を聞く。湯浴みを終えて脱衣所に入って窓の御簾を開けると、隣の部屋でゆらゆら揺れるカーテンを衣に白い顔の幽霊が踊っていたのだという。
隣の部屋を見ると壁の下の方には黒いカビが生えていた。それを見た猫猫は、風呂からつながる水路が床の下を通っており、腐敗した床の隙間から立ち上る湯気がカーテンを揺らしたのだと突き止める。そして、白い顔は、里樹妃の母親の形見の銅鏡が月の光に反射して映したものだった。魔鏡とも呼ばれる、顔を映す高度な細工が施された銅鏡が反射して映す顔を見た里樹妃は、その顔が母親の顔に似ていることに気づき、涙を流す。
そこにお茶を持って戻ってきた元侍女頭は再び嫌味を言い始めるが、壬氏はそれを止め、元侍女頭が上級妃の紋の付いた簪を差しているのを見てそれを引き抜き、上級妃の紋が付いたものを一侍女風情が身に着けるのは分不相応、立場をわきまえない行動は止めていただきたい、と釘を刺す。
幽霊の一件が解決して、医局に行った猫猫は、やぶ医者から、新しい宦官は若くて綺麗どころが多いからみんな受かれてしまって、と聞かされる。
その頃、壬氏は、高順から、いったいいつ猫猫に話すのか、この間は、干からびたミミズを見るような顔をしていた、と猫猫に早く素性を明かして引き入れるよう迫る。壬氏も、猫猫に本当のことを知ってもらいたいと思いながらも、どういう反応を示すのか多少恐ろしくもあった。
新入りの宦官に色目を使う女官がいると苦情を受けた壬氏は、湯運びの仕事をする噂の顔立ちの整った宦官の様子を見に行く。ひどい折檻を受けたようで体の左側がしびれているのだというが、女官たちの人気者となっていた。壬氏が宦官たちにねぎらいの言葉をかけると、そのこに、ガシャンという音が聞こえ、どうしてくれるんだ、上級妃のための氷だぞ、と宦官が怒鳴り声をあげる。その脇では、青ざめた小蘭が震えて立ちすくんでいた。
原作小説では、シリーズ第4巻の「薬屋のひとりごと 4」収載の「三話 踊る幽霊」と「四話 噂の宦官」におおむね対応する部分になっています。
第39話 氷菓
<小蘭の不注意により、楼蘭妃に献上されるはずの氷が地面に落ちて割れてしまった。猫猫は青ざめ立ち尽くす小蘭を助けるため、楼蘭妃が所望する氷菓子の代替品を、割れた氷から作ることを思いつくが、それには食材が必要となる。猫猫は嫌な予感はしながらも、背に腹は代えられないと壬氏に相談すると、“とあること”を条件に協力を得る。>
湯殿で妃から簪をもらって浮かれるあまり、前をよく見ずに楼蘭妃に献上される氷を積んだ荷車にぶつかってしまった小蘭。その場に居合わせた猫猫は、楼蘭妃が夕涼みに氷菓子を所望されたのだと聞き、代わりとなるものを用意しようと考え、その氷を持って小蘭を医局に連れていく。その様子をのぞきにきた壬氏に、猫猫は調理場と材料を貸してほしいと頼む。壬氏は、自分が贈った簪を着けることを条件に、それを認める。
調理場を貸してもらった猫猫は、砂糖と果物と牛乳を用意してもらい、氷を砕いて器を冷やして、材料をかき混ぜてアイスクリームを作り、宦官に楼蘭妃のもとに届けさせる。そこに、騒ぎを聞きつけた子翠もやってきて、小蘭とアイスの味見を始めるのだった。
一方、お腹が大きくなった玉葉妃から、この子はお腹の下ばかり蹴っていると聞いた猫猫は、逆子の可能性があることを指摘する。玉葉妃の要望で見よう見まねの触診を行い、何とも言いがたいが逆子の可能性が高いと判断した猫猫は、羅門を推薦する。罪人と聞いた紅娘は猛反対するが、2人を落ち着かせて猫猫から事情を聞いた玉葉妃は、羅門を呼べないか壬氏に相談することを決め、紅娘も説得を諦める。そして、2日後、羅門が臨時の医官として後宮にやってくる。
そのころ、噂の宦官は、後宮の一角にある女官たちの墓の前にいた。
原作小説では、シリーズ第4巻の「薬屋のひとりごと 4」収載の「五話 氷菓」と「六話 逆子」におおむね対応する部分になっています。
第40話 巣食う悪意
<逆子の疑惑もある玉葉妃の出産を援護するため、猫猫の薬の師であり、養父の羅門が後宮の医局へとやってきた。羅門はすぐに今の後宮の問題点をまとめ、手習所に通う女官たちの練習も兼ねて、書き移せるようにと手本を作る。それを手習所へ届けると、猫猫は羅門が後宮を追放される前にも同様のことをしていたと手習い所の老宦官から聞く。ふと猫猫の頭の中に浮き上がる違和感。その違和感の真相を知るために、猫猫はとある人物を訪ねにいき…。>
氷菓子を作るために調理場と材料を借りる条件にされた簪を髪に差すため、猫猫は部屋の引き出しから園遊会の時に壬氏から贈られた簪を取り出し、約束だし仕方ない、と懐に入れる。
臨時の医官として後宮の医局にやってきた羅門は、後宮の問題点を小さな紙に筆で書き出し、同じくらいの大きさの紙をやぶ医者に頼んで実家から取り寄せてもらう。そして自分が書いた紙を手習所の書き取り練習の手本にできないか聞いてもらうよう猫猫に頼む。
医局で玉葉妃のお灸に使うもぐさを作り終えた猫猫は、消毒用に蒸留したアルコールをもらって翡翠宮に帰る途中、手習所の講師を務める老宦官を訪れて、羅門から頼まれた話をする。老宦官は、それが羅門の字だとすぐに分かり、羅門が以前後宮にいたときも同じようなことをやっていた、20年以上前、自分も羅門を手伝って後宮内に貼る書いたと話す。それを聞いて違和感を抱いた猫猫は、慌てて老宦官のもとを飛び出す。羅門は良かれと思って注意書きを貼ったはずだが、逆に、悪意ある者に害をなすものを教えることになる、当時の貼り紙を知っている者は、と走りながら考え、診療所の深緑を訪れる。
猫猫は、消毒用のアルコールを渡して警戒心を解き、まず、診療所の女官がなぜ長くいるのか聞き出そうとする。深緑は、自分は10歳のときに後宮に入った、他の女官も同じような歳に後宮に入れられた人ばかり、私たちは誰も迎えに来てくれないと話す。猫猫は、幼い娘が好みだった先帝のお手付きとなれば、後宮を出られない、巣食っていた悪意がここにある、と気付き、深緑が水晶宮の元侍女頭・杏に何が毒になるのかを教えたのだろう、殺意とまでいかない悪意が少しずつ後宮内を蝕み、巣食っていたのだろうと推理する。証拠もない猫猫は、貼り紙について切り出すのをやめるが、診療所内に積まれた本の中に、子翠が置いていったと思われる虫の図鑑があるのを見つけ、下女の身で持てるような本ではない、字も読める、何で下女をやっているんだ?と考えをめぐらす。
そこに、噂の若い宦官がやってきて、深緑に、そいつには気を付けた方がいい、さっきの会話でお前が何をしたか察しているぞ、と警告する。猫猫は、その宦官が以前に蘇りの薬を飲んで姿を消した翠苓だと確信する。翠苓は、蘇りの薬で仮死状態となった後遺症で身体の左側が不自由になっていたのだ。翠苓は、子翠を人質にして猫猫を脅して、後宮を一緒に出てもらう、と言い、蘇りの薬の作り方をエサに、猫猫を連れていく。
一方、宮中では、東にある軍部の高官で「東の狐」とも呼ばれる羅漢が、覆面をした壬氏と「西の狸」とも呼ばれる子北州を治める子昌をお茶に誘う。その席で羅漢は、子北州であった王弟暗殺未遂の調査で手に入ったと、飛発(フェイファ)の設計図を取り出して見せ、西方の最新型だと話し、どうやって手に入れたのか?と子昌にゆさぶりをかける。その話が終えると、羅漢は妻と打った棋譜を得意げに見せて饒舌に話し始める。子昌は仕事があると席を立つが、羅漢はその会話の中で、子昌が赤と緑の判別ができないことを見抜く。
同行していた馬閃とともに執務室に戻った壬氏が覆面を取ると、それは壬氏ではなく、元上級妃の阿多だった。猫猫が急に行方不明になり、壬氏はその対応に追われ、阿多はその代わりを務めていたのだ。
原作小説では、シリーズ第4巻の「薬屋のひとりごと 4」収載の「七話 巣食う悪意 前編」と「八話 巣食う悪意 後編」、「九話 狐と狸の化かし合い」におおむね対応する部分になっています。
第41話 狐の里
<猫猫が後宮から突然姿を消した。翡翠宮にも手がかりはなく、壬氏は医局で猫猫の直前の行動を尋ねると、猫の毛毛もいなくなっていることに気づく。壬氏たちの話を聞いていた羅門は、毛毛を探せば猫猫の行方を探す手がかりとなるかもしれないと、猫猫が直前に手にしていた生薬を手に後宮内を探索し始める。一方、翠苓に囚われた猫猫と子翠は、後宮からどこかへと連れていかれる。目的のわからない翠苓の行動から、猫猫はとあることに気づき…。>
翡翠宮から猫猫が帰ってこないとの連絡を受けた壬氏は、高順を連れて翡翠宮に向かい、玉葉妃と紅娘から事情を聞く。前日の昼に手習所に行ってから行方が分からず、猫猫が行きそうなところは探したが見つからないという。理由もなくいなくなった場合には処罰せざるを得ないが、壬氏は、その前に探し出すのが先決だと、猫猫の足取りを洗うことにする。
壬氏はまず医局を訪れ、羅門から話を聞いても、翡翠宮で聞いた以上の情報はなかったが、猫の毛毛もいなくなっていることに気づく。虞淵と壬氏の話を聞いていた羅門は、毛毛を探せばついでに猫猫も探せるかもしれないと、猫猫が手にしていた生薬を手に外に出る。宦官も動員して捜索すると、北側の雑木林で毛毛が見つかり、近くの木の洞の中に、羅門が手にしていたものと同じ生薬と、ぐしゃぐしゃに丸められた紙があった。紙を広げても何も書かれていなかったが、羅門は、猫猫が残したものだろうと言い、医局に戻って、その紙を蝋燭の火で軽く炙ると、紙に字が浮かび上がる。羅門は、猫猫が昔気に入っていた遊びで、果汁や茶などで紙に書くと、炙ったときにその部分が燃えやすくなり字が浮かび上がる、生薬は疲労回復や冷え性に効果がある木天蓼(マタタビ)で、猫はこれが好きで酔っぱらったようになる、猫猫は毛毛が目印になると思って利用したのだろうと話す。
その紙には「祠」という字と、もう1文字が書かれていたが、書きなぐったようで判読できない。自分にできることをするだけという羅門の言葉を聞いた壬氏は、自分もできることをするだけ、と自分に言い聞かせ、医局を出る。翡翠宮に向かい、玉葉妃とその侍女たちにその紙を見せると、赤羽はもう1文字は「翠」ではないか、猫猫とよく一緒にいる下女が「子翠」という名だと話す。それを聞いた壬氏は、宦官に命じて子翠という下女を探させる。
そのころ、猫猫は子翠とともに船の船倉にいた。翠苓に連れてこられたのは子翠と初めて会った場所の近くの祠だった。猫猫は、羅門が気が付いてくれればと思い、持っていた消毒用のアルコールを指につけて紙に文字を書いて木の洞に突っ込み、それをふさぐように木天蓼を押し込む。そして、祠の下にあった抜け道を通って、船に乗せられたのだった。
船を乗り換えて、川に入り、船を下りて森の中を歩かされる猫猫。北上していると思っていたが、空気は温かく、湿度が高くなっていた。近くを這っている蛇を見た翠苓がビクッと反応したのに気づいた猫猫が、蛇を捕まえて翠苓の足元に投げつけると、翠苓は顔が真っ青になって座り込んで呼吸が激しくなり、子翠は蛇をすかさず掴んで投げ捨てる。それを見て、翠苓と子翠が元からの知り合いだと確信した猫猫が2人にそれを質すと、子翠は翠苓が姉であることを認める。猫猫は、毛毛が隠し通路から後宮に入ったこと、子翠が湯殿に行き始めたのも、宦官として湯運びをさせられていた翠苓と接触しやすくするためだったのだと推理する。猫猫は、もう1つ確かめていないことがあったが、確信はなく口にすることはやめる。
森を抜けてさらに歩くと、木塀で囲われた里があった。翠苓の合図で扉が開き、橋が下ろされて、中に進むと、その里は湯治場で、かつての後宮に来た異国の特使のような異国人もおり、特使の護衛だった男もいた。
一方、後宮では、高順が、紙切れがあった雑木林のそばに古い祠が見つかり、そこを入口に使われていない水路を抜け道にしていたようだ、猫猫がいなくなった日から新入りの宦官が1人行方不明になった、子翠という名の下女は登録がなかった、と壬氏に報告する。
原作小説では、シリーズ第4巻の「薬屋のひとりごと 4」収載の「十話 足跡」と「十一話 狐の里」におおむね対応する部分になっています。
第42話 鬼灯
<猫猫の行方がわからないまま、十日が過ぎた。玉葉妃が産気づき、羅門はつきっきりで世話をすることに。一方、壬氏は猫猫と同時に姿を消した宦官が北側の墓所で手を合わせていたと聞く。そこは先帝のお手付きとなり、後宮で最期を迎えた者たちの墓であった。猫猫への手がかりを求めて向かうと、墓前に女官の姿があった。さらに彼女から猫猫が持っていたのと同じ酒精の香りを感じ取った壬氏は、さらに情報を聞き出そうとするが……。>
玉葉妃が産気づいたと知らせを受けた壬氏は、高順たちを連れて翡翠宮を訪れる。診察した羅門から、陣痛はおさまっていつ生まれるかわからない状況だが、猫猫の治療が功を奏したようで逆子の心配はないと聞いた壬氏は、猫猫が姿を消してから10日、無事なのか、と内心気が気でないが、うろたえる虞淵を見て少し心が落ち着く。壬氏が翡翠宮を出ようとしたところに、高順が姿を消した宦官の件で報告があるとやってくる。
執務室に戻って報告を聞くと、その宦官の名は天(ティエン)、異民族の奴隷という話だったが、一緒に来た誰とも面識がなかった、おそらくどこかで紛れ込んだのだろう、後宮の北側の墓地で手を合わせるのを見た者がいるという。そこは先帝のお手付きになり後宮で最期を迎えた者たちの墓地だった。
壬氏がその墓地に向かうと、ある墓の前で深緑が手を合わせていた。壬氏たちに気づいた深緑は慌てて立ち去ろうとするが、深緑に猫猫と同じ消毒用のアルコールの匂いを感じた壬氏は、深緑の手首を掴んで、猫猫について知っていることはないか聞き出そうとする。壬氏の顔を見上げ、壬氏の姿が若いころの先帝の姿と重なった深緑は、古い記憶を思い出した、と言って、先帝から甘い異国の菓子をもらったことなどを話し、涙を流す。そして、一瞬の隙を見て、消毒用のアルコールを飲んで自殺を図るが、取り押さえられる。
壬氏が深緑がいた墓を見ると、「大宝」との名前があった。前年に亡くなり、怪談話をするのが楽しみだった侍女だった。壬氏は、大宝の血を引く者は、先帝の時代に医官との密通で生まれた娘ただ1人、その娘が生きていれば…と考えを巡らせ、あることに気づき、急いで柘榴宮に向かう。大宝が仕えていた妃は、後に子昌に下賜されて娘を産んだ、それが楼蘭妃だった。大宝と医官の子は医官が引き取ったが、消息はわかっていない。楼蘭妃なら知っているかもしれないと直感したのだ。
楼蘭妃に面会した壬氏は、そのこめかみに楼蘭妃にはないはずのほくろがあることに気づき、本物はどこに行った?と詰め寄ると、申し訳ありません、漣風は本当に何もしらないのです、侍女頭が止めに入る。その後、侍女頭から事情を聞くと、もう戻らないと言われた、どこに行ったのは分からない、という。後宮からの逃走は重罪、柘榴宮の他の侍女や下女も一か所に集められる。
一方、猫猫が行方不明だと聞いた羅漢は、後宮に乗り込もうと突撃する。馬閃からその報告を受けた壬氏は頭を抱える。馬閃は、、子昌の足取りもつかめていないこと、深緑の意識はまだ戻っていないが、大宝と面識があったことは分かっており、謀反に加担していたと思われることなども報告する。
そこに、羅漢の養子の羅半が面会にやってる。羅半は、国庫の出納帳を見せ、穀物や鉄の値がなぜか上がっていることを指摘し、その差額を子昌が横領していたことを示唆する。私ならこの流れがどこに集約しているかもっと詳しく調べることができる、と言い、壬氏は、羅漢が壊した後宮の壁の修理費用を負担することを条件に提示した羅半の提案に乗ることにする。
原作小説では、シリーズ第4巻の「薬屋のひとりごと 4」収載の「十二話 鬼灯」におおむね対応する部分になっています。
(ここまで)
続きはまた改めて。