鷺の停車場

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森沢明夫「おいしくて泣くとき」

森沢明夫「おいしくて泣くとき」を読みました。

月刊「ランティエ」2019年11月号から2020年5月号にかけて連載され、2020年6月に単行本が刊行された長篇小説で、2022年5月に文庫本化されています。

春に本作を原作として実写映画化された作品「おいしくて泣くとき」をスクリーンで観て、原作も読んでみようと思い、手に取ってみました。

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文庫本の背表紙には、次のような紹介文が掲載されています。

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無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』。店のオーナーの息子・心也は、怪我で大好きなサッカーができなくなり、中学最後の夏休みを前に晴れない気持ちを持て余している。また心也は、時々こども飯を食べにくる同級生のことを気にしていた。一人は夕花。クラスから疎外され、養父との折り合いも悪い。もう一人は金髪パーマの不良、石村。友情と恋心、夏の逃避行。大人たちの深い想い。〈子ども食堂〉から始まる思いやりの連鎖が、温かな奇跡を呼ぶ。傑作長編、待望の文庫化!

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主な登場人物は、次のとおりです。

  • 風間心也:中学3年生の男の子。怪我でサッカー部を引退して帰宅部だったことで、夕花とともに学級新聞の編集責任者を押し付けられ、夕花に「ひま部」の部長にされる。37年後の現在は、父の店を継いで「カフェレストラン ミナミ」を営み、子ども食堂も開いている。

  • 新井夕花:心也の幼なじみのクラスメイト。2年生の時にテニス部を辞め、帰宅部だったことで、学級新聞の編集責任者を押し付けられ、心也を誘って「ひま部」を結成する。現在は、結婚して高梨姓になっており、タカナシ工務店の社長。

  • 風間耕平:心也の父。「大衆食堂かざま」を営み、「こども飯」として子供たちに無償で食事を提供していた。現在では既に亡くなっている。

  • 風間南:心也の母。心也が小学生のときに病気で亡くなった。

  • 景子:「大衆食堂かざま」で配膳係として働いていた女性。

  • 風間ゆり子:心也の同い年の妻で、一緒に「カフェレストラン ミナミ」を切り盛りしている。

  • 高梨萌香:タカナシ工務店で営業を担当する26歳の女性で、夕花の娘。

  • 石村蓮二:心也の隣のクラスの同級生で「こども飯」の常連だった。

  • 夕花の母:夕花の母。生活を支えるため、昼間の派遣の仕事と夜の仕事を掛け持ちし、深夜まで身を粉にして働いていた。

  • 夕花の義父:夕花の母の再婚相手。定職に就かず、酒に酔っては母や夕花に暴力を振るったりしていた。

  • 幸太:夕花の小学4年生の弟。夕花の父親の連れ子で、夕花と血のつながりはない。現在は、婿養子入りして阿久津姓となっており、タカナシ工務店で大工をしている。

  • おばあちゃん:夕花のおばあちゃん。転倒事故で半分寝たきりになっていた。

  • 矢島先生:心也と夕花のクラスの担任の音楽教師。通称ヤジさん。

  • 江南 :心也と夕花のクラスメイトで、女子バスケ部。

  • 高山:心也と夕花のクラスメイトで、バスケ部。

  • 辻村:心也と夕花のクラスメイトで、男子バレー部。

  • 青井:心也と夕花のクラスメイトで、サッカー部。

  • 陽平:石村と同じクラスの心也の同級生で、サッカー部。

  • 川田:石村の取り巻きだった同級生。

  • 岡田先生:中学校の体育教師。

  • 恩田ひとみ先生:中学校の美術教師。

  • 藤巻さつき先生:心也たちのクラスで教える大学卒業2年目の若い国語教師。

  • ミキ:「こども飯」をよく食べに来ていた小学4年生くらいの女の子。

  • おばさん:心也と夕花が龍浦に向かう電車で乗り合わせた40代後半くらいのおばさん。

  • 反町:タカナシ工務店の大工。幸太とともに、「カフェレストラン・ミナミ」の修繕工事にやってくる。

  • 内藤:「カフェレストラン・ミナミ」の常連客で、52歳のフリーライター

  • みゆ:子ども食堂によく食べに来る小学2年生の女の子。

  • 彩音子ども食堂によく食べに来る小学3年生の女の子。

 

本作は、プロローグ・エピローグと5章から構成されており、第1章~第5章は中学生時代の心也・夕花と現在のゆり子の視点で、エピローグは現在の萌香と夕花の視点で、入れ替わり描かれる形になっており、それぞれ視点を示す小見出しが付いています。

ネタバレになりますが、おおまかなあらすじについて、各章ごとに概要を簡単に紹介すると、次のとおりです。

プロローグ

プロローグでは、誰の視点か明示されていませんが、心也の母親の南の視点から描かれています。

心也が小学3年生に進級した始業式の日。病室の窓から見舞いにやって来る心也の姿を見つけた入院中の南は、自らを鼓舞して笑顔で心也を出迎え、心也を産んでからのことを回想しながらその話を聞き、授業参観に行く、ときっと嘘になってしまう約束をする。サッカーチームの練習に向かう心也を笑顔を作って送り出した後、南は涙を流し、日記を書いているノートを取り出して開き、授業参観への思いなどを書き始めるのだった。

第一章 夏のトンボ

心也

中学3年生の心也。夏休みまであと1週間となったホームルームで、「学級新聞コンクール」に参加するため「学級新聞」の編集責任者を決めることになり、2年生の時にテニス部を辞めた夕花と、4月に大怪我をしてサッカー部を辞めた心也が押し付けられる。

放課後に教室に残り、夕花と新聞作りについて話し合うことになるが、夕花は、暇な2人で「ひま部」を作ろうと言い出し、部長に心也を指名する。

学級新聞のメインテーマをざっくり決めた2人は、一緒に話しながら下校し、父親が「大衆食堂かざま」を営んでいる心也の家の前で別れる。

帰宅し自室に入った心也は、よく「こども飯」を食べに来る夕花とその弟の幸太のことを思い浮かべる。

夕花

心也と別れた夕花は、心也と一緒にひま部の活動をしている間は、心がホッとする時間を味わえるはず、と思いながら、自宅のアパートに帰る。おばあちゃん、幸太と他愛のない話をしていると、義父が帰ってくる。しばしば暴力を振るう義父の帰宅に怯える3人の顔から笑顔が消えるが、義父がパチンコで勝って景品を持って帰って来たのを察した夕花は、機嫌が悪くないはずだと義父におかえりなさいの挨拶をして、景品のお菓子をもらって子ども部屋に逃げ込み、そのお菓子を食べるのだった。

ゆり子

2日後に台風が直撃しそうなある日、「カフェレストラン・ミナミ」に突然ダンプカーが突っ込み、怪我人は出なかったものの、店の壁を完全に破壊してしまう。

第二章 台風が来る

心也

ひま部を結成した翌日の昼休み、心也は隣のクラスの石村から呼び出され、自分が「こども飯」を食べているのを誰に言った?と詰め寄られる。

夕花

その放課後、学級新聞の内容について話し合うために教室に残った2人。夕花は昼休みの一件で取れてしまった心也のワイシャツのボタンを縫い付けてあげるが、夕花は2人きりの時間に内心ドキドキする。

心也

その翌日、心也が登校すると、自分の机に黒マジックで「偽善者のムスコ」と落書きがされていた。心也は職員室でシンナーを借りてその落書きを消すが、犯人は石村だと思う心也はこれからどう対応すべきか考えるが、父が吊るし上げられたと怒りを感じ、石村のクラスに向かう。しかし、石村は休みで、その机には「ビンボー野郎」と落書きがされており、前日の朝には書かれていたという。石村も被害者だと思った心也は、夕花がひま部の活動に誘うを受け入れ、教室に誰もいなくなるのを待って石村の教室に行こうとするが、夕花も一緒に行くと言い張る。仕方なく、夕花が見守る前でシンナーで机の落書きを消した心也は、前日の昼休みからの出来事を夕花に話す。

台風の接近で横殴りの雨となり、びしょ濡れで帰宅した心也は、学校での出来事は隠して、こども飯を止めるよう父に訴えるが、心也が学校で嫌なことを言われたことを察した父は、南は生前に人の幸せは学歴や収入で決まるのではなく自分の意思で判断して生きているかどうかに左右されると言っていた、俺は自分の意思を尊重してやりたいようにやるが、心也が不幸になれば俺も不幸になる、心也が不幸になるのならやめると話す。

ゆり子

ダンプカーが店に突っ込んだ日の夜、事故がテレビのニュースでも流れ、ゆり子は事故後の対応に追われる。そこに、タカナシ工務店の高梨と名乗る女性から電話がかかってきて、2日後に来ると予想されている台風に備えて無償で壁の穴をふさぐ応急処置をしたいと申し出があり、ゆり子はありがたくその申し出を受けることにする。

第三章 孤独のライオン

心也

1学期の終業式の日、心也は担任の矢島から、誰かは言えないが落書きの犯人が見つかったと聞かされる。帰りのホームルームの後、夕花は、夏休み中の新聞のことは後で連絡すると心也に言って帰っていく。その後も教室に残ってクラスメイトと笑いながら話をしていると、石村がやってきて心也を呼び出す。石村は、心也を落書きの犯人だと疑ったことを謝り、紙切れを差し出す。

夏休みに入って3日が経ったが、夕花からの連絡がないままだった。夕花たちがこども飯に来る予約が入っているか景子に聞いても、予約は入っていないという。すると、その翌日、心也は父からお遣いを頼まれ、お釣りで映画を観てこいと余分にお金を渡される。いまだ連絡のない夕花の家の前を通ってみようとふと思い立った心也は、行きに少し遠回りをして夕花の家の方に向かうと、その直前で、石村にばったり出会う。これからこども飯を食べに行くと石村が言うのを聞いて、心也は、父が石村と自分が店で顔を合わせないで済むよう気を遣ってお遣いを頼んだのだと知る。そこに、夕花の家から男の怒鳴り声が響き、外に飛び出した夕花を追って出てきた義父が暴力を振るう。それを見た石村が義父に襲い掛かって地面に転がし、その隙に心也は夕花を連れてその場から逃げると、夕花は、遠くに逃げたい、と言うのだった。

ゆり子

事故の翌日、タカナシ工務店の高梨萌香が大工の阿久津、反町を連れてやってきて、手際よく壁の穴をベニヤ板などでふさいでいく。応急処置が終わった後、心也はゆり子と萌香を2階のリビングに連れていき、修繕工事をする資金があまりないことを正直に伝える。萌香は思い切り安くすると言って大雑把な見積もりを示すが、心也に今支払える金額はその半分くらいだった。それを話すと、萌香はいったん持ち帰り社長と話し合ってみると言って帰っていく。

夕花

夕花は涙をこぼしながら、遠くに逃げたい、もう安心したい、と思いを明かす。夕花の血だらけの顔を手当てするため、心也はドラッグストアに必要な物を買いに行く。1人になった夕花は、置き去りにした幸太のことが気になるが、今戻っても義父を余計に怒らせるだけ、戻らないのはこれ以上ひどい状況にならないようにするだけ、と自分に言い聞かせる。

心也

夕花の手当てをした後、心也はかつて母の生前に家族でいった思い出の地である龍浦の海に向かうことにする。ボックス席で夕花と向かい合って座った心也は、どうして自分が夕花の家の前にいたのか事情を説明する。夕花は、ピンチのときはまた助けてとお願いするが、心也は、助けたいけど約束はできない、本当に守れるかどうか分からない、と答える。入院していた頃の母との出来事から、心也は、たとえ「やさしい嘘」であろうと、約束ほど結果的に人を傷つけるものはない、と感じていたのだ。

その途中、心也と夕花が座るボックス席に、喪服のおばさんが座ってくる。2人は、いとこ同士でおじいちゃんのところに行くとごまかすが、2人が15歳だと知ったおばさんは、交通事故で死んだ2人と同い年の姪の四十九日の法事に行くところだと話し、生きてさえいればきっといいことがたくさんあったのに、とこぼす。それを聞いた夕花が、生きていたらいいことがありますか?と尋ねると、おばさんは、必ずある、と答え、その言葉に夕花の目は潤む。

龍浦駅に着いた心也は、駅前の公衆電話で父に電話をかけ、今日は家に帰れない、明日戻ったら全部話すから信じてほしい、と訴える、夕花と一緒にいると察した父は、それを許し、背中を押す。

第四章 わたしのヒーロー

ゆり子

萌香たちが応急処置をしてくれた日、夕食を終え、ゆり子が、人生の拠り所のひとつであるお店を失おうとしている、とぼんやり考えていると、萌香から電話がかかってきて、社長といろいろ話をして、一括払いでよければ、心也から提示した金額で修繕工事をやらせてもらうと伝え、ゆり子は安堵で泣き笑いの顔になる。

心也

駅を出て海に向かって歩く途中、お屋敷のような二階屋の脇を通りかかると、夕花は、2階にバルコニーがある家に住むのが夢だと口にする。心也がそんな家を買ってどうするのかと尋ねると、夕花は、ふつうに結婚してふつうに幸せに暮らしたい、と話す。

海に着いた2人は、裾をたくし上げて海に浸かってはしゃぐ。いろいろ話をしているうちに、夕花は、心也の父が自分と幸太のヒーローだと話す。

夕花

駅前の雑貨店で夕食に食べるパンを買い、再び海に向かうと、夕立ちが降り始め、2人は漁港の建物で雨宿りをする。夕花は、心也に隠していることを話そうと思ったが、雷鳴でタイミングを逸し、心也と2人きりで遠くにいるという嘘みたいな現実をしっかり味わっていたいと思う。

心也

雨がやんで夜になり、漁港を後にした2人は、手をつないで夜道を歩き、たまたま見つけた海辺の小さな公園に立ち寄り、ブランコに座る。心也の追及に、夕花は石村の机に落書きを消したのが心也だと知らせる手紙を忍ばせたことを認め、四つ葉のクローバーを捜しながら、夏休み中に母の田舎に引っ越すことになったこと、学級新聞があるから引っ越しを遅らせてほしいとお願いしたら義父が怒って暴力を振るったことを明かす。心也も四つ葉のクローバー探しに加わり、2人は探しながらたくさんの話をする。

夜明けが近づいても、四つ葉のクローバーを見つけることができなかった夕花に、心也は、幼少期に見つけてお守りとして財布に入れていた押し花にした四つ葉のクローバーを差し出し、すごく大事なものだから夕花が持っていてくれと話す。夕花は声を上げて泣き、心也も泣き顔になる。

夕花

翌朝、龍浦駅から帰りの電車に乗った2人。夕花は充実感に近いような心地よい疲れを感じ、心は不思議なくらいにすっきりしていた。心也の肩の上に頭を乗せて狸寝入りしているうちに本当に寝てしまった夕花が目を覚ますと、心也も夕花の頭の上に自分の頭を乗せて寝ていた。安堵を味わいながら目を閉じた夕花は、ずっとこの電車に乗り続けていたいと願うのだった。

ゆり子

店舗の修繕工事が始まって3日後、心也とゆり子は、萌香の提案で「オープンカフェ」をお店の裏庭で開くことにする。

工事が始まって1週間が経ち、工事も終盤に差し掛かってきた頃、タカナシ工務店の人たちとバーベキューを開く。阿久津が先に帰った後、ゆり子と萌香は恋愛話で盛り上がり、知り合って2か月の彼がいると話す萌香に、ゆり子は高齢での妊娠・流産など、自分のことを話す。そして、萌香は、あるお願いをゆり子に話し、それを聞いて胸がいっぱいになったゆり子はそれを受け入れる。

第五章 さよなら、そして……

心也

2人が地元のターミナル駅に戻ってくると、心也の父、夕花の母、そして警官が待っていた。警官に事情聴取を受ける心也は、母に連れていかれる夕花を見送るが、それが夕花との永遠の別れになってしまう。警官の事情聴取を終えると、父は全く心也を責めることなく逆に褒め、帰宅すると南が亡くなる前に書いていた日記を心也に差し出す。四つ葉のクローバーの栞が挟まっていたページを読んだ心也は、「こども飯」が母の夢であったことを初めて知る。その夜、心也は母の日記を最初のページから読み、涙する。

8月に入り、心也は夕花が家族で引っ越したこと、石村も2学期から転校することを知り、学級新聞コンクールは棄権することになる。

ゆり子

工事の最終日、すべての作業が終了し、阿久津と反町が先に帰った後、萌香は、支払いはもう済んでいる、社長が出世払いをさせてもらった、と話し、嬉しそうな顔で社長の名刺を差し出す。それを見た心也は、社長が夕花であることに気づいて驚きで声を失う。

エピローグ

萌香

工事を終えて約半月が経ったある日、萌香は夕花を助手席に乗せて「カフェレストラン・ミナミ」に向かう。車の中で、夕花は、トラックが突っ込んだニュースで、店の前の桜の樹があったおかげで店主の命が救われたと言っているのを見てピンときた、あの桜は、心也の母・南が心也を産んだ年に植えた記念樹で、店名で心也の店だと確信したと話す。夕花は、中学3年生の夏に鳥取の田舎町に引っ越し、それを契機に夕花の母は離婚して幸太も引き取って育て、夕花は高校を出た後東京の有名大学に進み、建築会社で経験を積んで一級建築士の資格を取って独立したのだった。

店に近づくと、夕花は、一人で行きたい、と萌香にどこかで待っているようお願いする。

夕花

「カフェレストラン・ミナミ」の前に立った夕花。心也とゆり子には知らせずに来た夕花は、心也が気づかなかったら、ふつうのお客さんのふりをすればいいと勇気を振り絞って、店内に入る。カウンターの中の男性がひと目で心也だと分かってさらに緊張する夕花は、カウンターに座ると、「こども飯」で一番人気だった裏メニューが正式なメニューになっているのを見て、それをオーダーする。

到着した「バター醬油味の焼うどん」をひと口食べると、あの頃とまったく同じ味に、当時の記憶がつながっていく。そして、夕花だと気づいていた心也と懐かしい会話を交わす。すると、そこに萌香と幸太が入ってくる。大工として来ていた阿久津が幸太だと知った心也は驚き、ぽかんとする心也とゆり子を見て、夕花はクスっと笑うのだった。

(ここまで)

 

実写版の映画では、心也と夕花は中学3年生ではなく高校1年生で、夕花は引っ越した後、義父の暴力で記憶を失ってしまい、心也の店に連れられてきてお勧めのバター醤油焼うどんを注文して口にし、かつてこども飯で食べたその懐かしい味がきっかけで当時の記憶が蘇る、といったことなど、細部のエピソードには本作とは相違があり、アレンジが加えられていました。映画を観た時には、直視するのが辛い描写もあったり、劇的な展開もあったのですが、本作では、そうした要素は相対的には控えめで、心也と夕花の心情がよりシンプルに伝わってくる印象を受けました。