鷺の停車場

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バルトーク&ルトスワフスキーのオケコン

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1.バルトーク管弦楽のための協奏曲[1943]
2.ルトスワフスキ管弦楽のための協奏曲[1954]
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団
(録音 1:1988年4月・2:1989年3月、クリーヴランド

バルトークのオケコンは、当時ボストン交響楽団を率いていたクーゼヴィツキーの依頼により作曲されたもの。依頼は、ナチスから逃れてアメリカに移住後、健康を損ね経済的に困窮するバルトークを助けるため行われたそうです。
曲名のとおり、随所で各パートがコンチェルト的に際立つだけでなく、オーケストラの技量(アンサンブル)を試すようなところもあります。
1楽章「序奏」は、神秘的な雰囲気の導入部、盛り上がってからの金管のカノンなど、聴きどころが多いです。
2楽章「対の遊び」は、それぞれ2人のバス―ン、オーボエクラリネット、フルート、トランペットが吹くメロディーが、中間部の金管のコラールを挟んで繰り返されますが、2回目の後半部は、背景に3人目の役回りが加わって変化するところがまた面白い。
3楽章「エレジー」は、バルトークの緩徐楽章によくみられる夜を思わせる神秘的な雰囲気の曲。
4楽章「中断された間奏曲」は、中間部に、先日紹介したショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」の1楽章展開部のテーマがパロディ化されて出てきます。
同曲が第二次大戦下のこの時期、一種のプロパガンダ音楽としてアメリカでも広く流通していたことが伺えます。
なお、そのアメリカ初演は1942年7月のトスカニーニ指揮NBC交響楽団。当時ラジオ中継された歴史的な録音もCD化されています(私の好みではありませんが…)。
5楽章「フィナーレ」は、プレストで、弦楽器をはじめ各楽器の細かい動きが大変そうで、それなりの腕前のオケでないと厳しそうな曲。スコアには、エンディングとしてより短いバージョン(これは初演時のものだそう)も記載されていますが、一般には(このCDも)長いバージョンで演奏されています。

ルトスワフスキの方は、一般に広く知られた曲ではありませんが、彼の初期の代表作。当時の共産主義政権下では、前衛的な作品を書くのには自ずと制約もあったのかもしれませんが、バルトークと並べても違和感(現代音楽っぽさ)はあまりなく、バルトークほどの派手さはないですが、十分聴きごたえのある曲。
1楽章「イントラーダ(導入)」は、ティンパニが拍を刻む上に弦楽器が奏する力強い旋律が印象的。
2楽章「カプリッチョ(奇想曲)、夜想曲とアリオーソ」は、冒頭、弦楽器が弱奏で刻む細かい音符が半端ない。バルトークの5楽章冒頭の弦楽器の比ではありません。
3楽章「パッサカリアトッカータとコラール」は、力強いトッカータの威力が圧倒的で、その後のコラールとのコントラストも素晴らしい。

演奏は、シャープな録音もあいまって、精緻な響きでオケの技量が冴えわたります。決して機械的な演奏ではないですし、迫力も申し分ない。(より重量感や力強さを求めるのであれば、例えばシカゴ響(バルトークならショルティほか多数、ルトスワフスキ―もバレンボイムが振ったCDがありました)の方が向いてそうですが…)
冒頭の画像は初発売時のもの(輸入盤)ですが、国内盤の再発売時に、バルトークのオケコンと、このコンビでその後に録音した弦チェレ(弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽)とのカップリングとなってしまったので、残念ながら、ルトスワフスのオケコンは、今では中古盤でしか入手できないかもしれません。

Bartok & Lutoslawski :Concertos for Orchestra

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