香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第一部「兵士の娘Ⅲ」を読みました。
テレビアニメ版を見て読み始めたシリーズの第3巻、第2巻「兵士の娘Ⅱ」に続いて読んでみました。
単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。
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病に倒れたマインは一命を取り留めたものの、その「身食い」の影響は大きかった。完治はできないばかりか、治療には貴族が所有する高価な魔術具が必要という。再発までに残された期間は一年。それまでに家族の元を離れて、貴族と共に生きるのか、運命に身を委ねるかの決断を迫られてしまう。限られた時間の中で、マインは「本に囲まれて、本を読んで暮らすこと」を夢見て奔走するのだった。
やがて、季節は流れ、彼女の世界が大きく動き出す出会いが訪れる……。
少女の夢と家族の愛が試されるビブリア・ファンタジー。大増ページで贈る、感動の第一部完結編!短編集+書き下ろし番外編×2本収録!
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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた24節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に短編が4編と番外編2編も収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。
プロローグ
マインが倒れた知らせを聞いたフリーダは、貴族から買い集めていた魔術具の1つを取り出す。フリーダは、マインを自分の商会に取り込みたいという気持ちの一方、初めて見つけた仲間に近くにいてほしいという思いもあった。
フリーダと身食いの話
魔術具のおかげで一命を取りとめたマインが目を覚ますと、そこはギルド長の家だった。やってきたフリーダは、魔術具がなければあと1年くらいしか持たない、わたしは成人したら貴族の愛妾になることが決まっている、と話す。
フリーダとケーキ作り
次の日の朝、魔術具の代金を払ったマインは、フリーダと料理人のイルゼと一緒に、卵と砂糖を使ってカトルカール(パウンドケーキ)を作る。
フリーダとお風呂
ケーキ作りの後、フリーダと一緒にお風呂に入り、リンシャンを使って髪を洗ってあげる。お風呂から出た後、やってきたルッツはマインの体調があまり良くないことを見抜き、ベッドで休ませる。
フリーダの洗礼式
次の日、目覚めたマインは、洗礼式に参列するフリーダの髪を結って髪飾りを付けてあげ、部屋の窓から洗礼式の行進を眺める。フリーダの髪飾りはとても目立って見えた。マインはトゥーリの洗礼式を思い出し、家族に会いたい気持ちになり、迎えに来た家族を見てホッとする。
冬の始まり
ルッツと一緒にベンノの店に行ったマインは、ギルド長の家の料理人にケーキのレシピをタダで教えたことを責められる。家に帰ると、母がマインの洗礼式に向けた晴れ着を作り始めようとしていた。マインはトゥーリの晴れ着をお直しすることを提案する。
晴れ着の完成と髪飾り
マインの提案に乗り気になり、熱心にお直しをする母の横で、マインは自分の洗礼式のための髪飾りを作る。トゥーリとの身長差で布が余った部分をタックにしたりして、とても豪華な晴れ着が完成する。
ルッツの家庭教師
冬の手仕事の髪飾り作りをしていると、簪部分を作ったルッツがやってくる。商人になることを反対する両親に認めてもらおうとするルッツの力になろうと、マインは文字や計算を教える。
オットー相談室
吹雪が止んだ日、父に連れられてオットーの手伝いに門に向かったマインは、休憩の時に、自分とルッツが同じ商会で仕事することがいいのかオットーに相談する。オットーは、マインはベンノの店には入らない方がいい、まずは自分の生き方を決めないと、とアドバイスする。
家族会議
マインは、家族に自分が身食いで治らないこと、魔術具がなければあと1年くらいで死んでしまうことを打ち明け、家でできる仕事を探して残りの時間を家族とともに過ごすことを選ぶ。
ここまでが、おおむねテレビアニメ版の第11章「究極の選択と家族会議」に対応する部分になります。
ルッツへの報告
パルゥ採りに出かけた日、マインはルッツにベンノの店に入らないことにしたことを報告する。これでルッツも店に行く必要がなくなると思った母親に、ルッツは商人になりたい気持ちを訴え、母親の理解を得る。
紙作りの再開に向けて
雪が融け始めたころ、マインはルッツと冬の手仕事の清算にベンノの店に行き、紙作りに向けた準備を始める。
既得権益
紙作りを進めるマインたちだったが、羊皮紙協会から商業ギルドに文句が入る。マインは正式な契約書は羊皮紙に限ることにして棲み分けることをベンノに提案する。
既得権益と会合の結果
羊皮紙協会との会合に向かったベンノの結果を心配するマインだったが、棲み分ける案で話がまとまったと知って安心する。そして、ベンノからは工房を作って紙を大量生産すると聞かされる。
工房選びと道具
工房の場所や道具などを決めるため、ベンノはマインたちの紙作りに同行し、工房の準備を進めていく。工房がある程度の形になるころには、季節は夏になろうとしていた。
ルッツの見習い準備
洗礼式が終われば見習いに入ることになるルッツは、貯めたお金を使って見習いに必要な道具を揃えていく。
フリーダとの契約
フリーダの迎えで彼女の家に遊びに行ったマインは、貴族に飼い殺されるのではなく、家族と一緒に暮らすことを選んだことを話す。マインはフリーダにカトルカールを独占販売する権利を小金貨5枚で売る契約をする。
洗礼式の行列
迎えた洗礼式の日、マインは父に抱き上げられて神殿まで行進する。
静かに大騒ぎ
神殿での洗礼式に参列したマインは、神殿長のところに本があるのを見つけ、興奮する。礼拝のポーズがグリコのポーズに酷似しているのがツボにはまってしまったマインは、笑いすぎで洗礼式をリタイアする。
入れない楽園
神官に抱き上げられて寝台に運ばれたマインがトイレを探しに部屋を出ると、本棚が並んでいる図書室を見つける。マインは神官に巫女見習いになることを神殿長に直訴するが、興奮して倒れてしまう。
ここまでが、おおむねテレビアニメ版の第12章「洗礼式と神の楽園」に対応する部分になります。
反対と説得
家に帰ったマインは巫女見習いになりたいと話すが、巫女は孤児がなるものだと父に反対され、諦めることにする。ルッツと一緒に神殿に断りに行くマインだったが、自分が身食いであることを話すと、神殿長と神官長の態度が変わる。
ベンノのお説教
ルッツが迎えに来て、両親あての招待状を渡されて神殿を出たマインは、ベンノの店に連れていかれる。ベンノに神殿での出来事を話すと、ベンノは、神殿は強い魔力を持つ身食いを必要としていると話し、マインが作ったものはルッツが売る契約魔術とギルドへの工房登録を勧める。
契約魔術と工房登録
マインは、ベンノの勧めに従って契約魔術を結び、ベンノに連れられてギルドに向かい、工房をギルドに登録する。その帰り、ルッツはマインへの思いを打ち明ける。
ここまでが、おおむねテレビアニメ版の第13章「巫女見習いという選択肢」に対応する部分になります。
対策会議と神殿
家に帰ったマインは家族に、神殿での出来事や、ベンノに貴族に近い扱いにしてもらえるよううまく交渉するよう助言されたことなどを話す。神殿から呼び出しを受けた日、両親と神殿に行ったマインだったが、両親を捕まえて強引にマインを取り上げようとする神殿長の態度に、怒りが抑えられなくなる。
決着
怒りでマインが無意識に放った魔力によって、神殿長の顔色が真っ青に変わり、崩れ落ちてしまう。神官長が、魔力が漏れている、感情を抑えろと叫ぶが、どうやって怒りを抑えればいいか分からないマイン。神官長が必死に止めて、ようやく怒りが収まる。強力な魔力を見せつけたことで、マインは希望どおりの条件で巫女見習いになることが認められる。
エピローグ
神殿との交渉事を終えた父・ギュンターは、オットーと酒場に行く。オットーは、妻・コリンナが妊娠したこと、コリンナの兄であるベンノがマインの作ったものを売るために自分の店を持ち、今の店をコリンナに譲るつもりであることを話す。
ここまでが本編。テレビアニメ版の第1クール、第14章「決着」までに対応する部分になります。
本編の後には「それから神殿に入るまで」と題した短編集が収録されています。次の4編からなっています。
トゥーリ コリンナ様のお宅訪問
針子見習いのトゥーリが、母・エーファ、マインと一緒に憧れの針子でもあるコリンナの家を訪問するエピソード。
イルゼ お菓子のレシピ
ギルド長の家の料理人・イルゼが、フリーダの招きでやってきたマインの新しいレシピを知りたがるエピソード。
ベンノ カトルカールの試食会
ベンノは、ギルド長に誘われ、フリーダが開いたカトルカールの試食会に行くエピソード。
マルク 私と旦那様
ベンノの店を支えるマルクが、ギルド長へのライバル心から菓子職人の育成にやる気になったベンノに巻き込まれるエピソード。
最後に番外編が2編。
商人見習いの生活
商人見習いとしてベンノの店で働くルッツの一日を描いたエピソード。
ギルド長の悩みの種
自店の売り上げを伸ばすのに必死なベンノに頭を悩ませるギルド長のエピソード。
(ここまで)
本に埋もれて命を落とした大学生・本須麗乃が5歳の少女・マインに転生してから神殿に入るまでを描いた第一部「兵士の娘」は本巻で完結です。深刻な苦悩や葛藤といったシリアスな要素は少なく、物事がうまくいき過ぎな感もありますが、面白く読むことができました。
続く第二部では、テレビアニメ第2クールで描かれた、神殿の巫女見習いとなったマインが描かれるのでしょう。ちょっとずつ読み進めてみようと思います。