鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部 領主の養女Ⅳ」

香月美夜の小説「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第三部「領主の養女Ⅳ」を読みました。

第3部の第4巻、前巻「領主の養女Ⅲ」に続いて読んでみました。

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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春は恋が芽生える季節!ローゼマインの側近や専属達が何だか色めき立って、衣装を作ったり、お披露目したりと華やいだ様子。神殿の工房では新しい印刷機もついに完成し、本作りは広がりを見せていく。絵本に、楽譜、騎士物語等、様々な本を販売するにまで到った。今後の領地内における印刷業の拡大を見据え、まずは製紙業を広げることに。ローゼマイン一行は紙の作り方を教えたり、新素材の研究をするため、イルクナーへ向かう。少しずつローゼマインを取り巻く環境が改善される一方、現領主の姉が来訪したことで、エーレンフェストには不穏な空気が流れ始めるのだった。

第三部完結に向けて貴族達の想いが交錯する、ビブリア・ファンタジー転変の章!

大増書き下ろし番外編2本+椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた19節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に番外編3編(紹介文では2編とされていますが…)、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

コリンナの工房に移るため、衣装や仕事道具、日用品などを準備するトゥーリ。同行したルッツは、ベンノが紙作りや本作りをコリンナの店・ギルベルタ商会から切り離して独立させるつもりで、自分もそれに付いていくと語る。ローゼマインに付いていきたいトゥーリはダプラ契約がいいのか悩み始める。

新しい衣装

ベンノやコリンナたちがブリギッテのために作る服の裁断のために孤児院長室にやってくる。女性たちが隠し部屋で裁断している間、ローゼマインはベンノと新しい紙の研究のためにイルクナーを訪れる相談をし、マルクとルッツをイルクナーに派遣することにする。そこに、新しい印刷機が完成したとの知らせが入り、ローゼマインは興奮するが、ルッツに止められる。裁断が終わったブリギッテの服について意見を聞こうとダームエルに見てもらうと、ダームエルは一目で恋に落ちるが、ブリギッテは魔力の差が大きいので対象外、とバッサリ切り捨てる。

新しい印刷機の試運転

ギルベルタ商会の人たちが帰った後、ローゼマインは神殿長室で印刷機の試運転のための本の原稿として、子供部屋で子供達から聞いた話を下敷きに騎士物語の短編を書く。短編が完成すると、ローゼマインはフランが残してくれていた巫女見習い時代の衣装に着替え、金属活字を使って組版を行い、試し刷りを行い、無事成功する。

ベンノからのお願い

ローゼマインは別々の鍛冶工房にいるザックとヨハンが組んで工房が作れないかと考えるが、2人とも終身雇用の契約であるダプラであるため難しいとわかる。ローゼマインは井戸の水くみが楽になる手押しポンプの設計をザックに依頼する。そこに、フーゴが宮廷料理人になりたいと言っている、ローゼマインに紹介してほしいとの手紙が入る。3日後にベンノがフーゴたちを連れてやってくるが、ローゼマインはフーゴを口説いて、自分の専属料理人にする。ベンノは、貴族との取引も増えたので、印刷関係を請け負う店を分けたいと話し、新しい店の名前を付けるよう頼み、ローゼマインはプランタン商会という名前を提案する。

領主会議のお留守番

領主夫妻が領主会議のために中央に行くため、ローゼマインは春の成人式までの間、城で生活することになる。城に着いたローゼマインは、ジルヴェスターに連れられ、礎の魔術に魔力を注ぐ方法を教わる。夕食時、フェルディナンドはリヒャルダにローゼマインを監視するよう指示して神殿に帰っていく。領主夫妻が出発した後、ローゼマインはエルヴィーラをお茶に誘う。エルヴィーラは、ブリギッテのために作っている衣装を流行させようと、仮縫いを急がせるよう話す。

衣装のお披露目と報酬

本を読み、ヴィルフリートと一緒に訓練や勉強をする日々を送り、お休みの日は貴族院から戻ってくるアンゲリカの勉強会をするローゼマイン。エルヴィーラの手配で、ブリギッテのために作っている衣装のお披露目会がお茶会を兼ねて開催されることになる。やってきたベンノはオットーを次代店主として紹介し、ローゼマインは祝福を与える。始まったお披露目会で、仮縫いのブリギッテの衣装は好評を博する。そして、アンゲリカが補講に合格し、戻ってくる。ローゼマインは、約束どおり、ダームエルに小金貨1枚を渡し、コルネリウスにはモンブランのレシピを教える。

アンゲリカの魔剣

翌日、訓練場に向かったローゼマインは、魔力量が少ないダームエルのために、魔力の圧縮の方法を教える。護衛騎士に復帰したアンゲリカがやってくると、ローゼマインは約束どおりアンゲリカの魔剣に魔力を込める。アンゲリカに足りないものを補おうと願って魔力を込めると、我が主に足りない知識は私が補う、とフェルディナンドそっくりに語る魔剣に成長する。

印刷物を増やそう

アンゲリカの魔剣に知識を蓄えるために、ダームエルとコルネリウスはアンゲリカへの教育計画を立て始める。ローゼマインは学生向けの参考書を作ることを思いつくが、下級貴族の小遣い稼ぎになっているので金銭的に困る学生が出てくると言われ、やめることにする。そこに、ベンノから面会依頼が入る。久しぶりに神殿に戻ったローゼマインは、側仕えたちから不在の間の状況の報告を受け、どんな印刷物を作るかを考える。フェルディナンドに面会したローゼマインは、楽譜とレシピ集の印刷に向けて準備を進めることにする。

プランタン商会との話し合い

孤児院長室でプランタン商会を出迎えるローゼマイン。オットーはトゥーリがコリンナの工房に移るのに、基本的に待遇はいいが終身契約で他の店に移動できないダプラ契約か、保障は少ないが3年契約で他の店に移動できるダルア契約のどちらがいいかをローゼマインに相談する。ローゼマインは自分はダルア契約でいいと思うが、ダプラとして確保しておきたいなら、2号店を作る「のれん分け」というやり方もあると提案する。ベンノはイルクナーにルッツを派遣する環境が整ったので話を付けてほしいと話し、イルクナーで植物紙を作る相談をする。

領主夫妻の帰還

城に戻って数日後、領主夫妻が帰還すると知らせが入り、ヴィルフリートやローゼマインたちはそれを出迎えるが、ジルヴェスターは神殿に関することで話があるとローゼマインを呼び出す。ジルヴェスターは、ローゼマインが叔父である前神殿長が亡くなったことをアーレンスバッハに嫁いだ姉上に知らせたために、領主会議の間、姉上から散々詰られたと責め、姉上が夏の終わりに叔父の墓参りに来ると言う。そして、星結びの儀式を機に、フェルディナンドを還俗させた上で、再び神官長に付けると話す。神殿に戻ったローゼマインはフェルディナンドにその話をすると、フェルディナンドは利点の多い方を選択する、と還俗を受け入れる。

神官長の還俗と衣装のお披露目

星結びの儀式を前に、神殿ではフェルディナンドの還俗の儀式が内々に行われ、フェルディナンドはいったん貴族街に戻っていく。星結びの儀式の日、ローゼマインは午前中に神殿で儀式を行い、午後には城に移動して儀式を行い、ブリギッテの衣装のお披露目も行うことになっていた。大広間で星結びの儀式を行ったローゼマインは、翌日、エルヴィーラにブリギッテの衣装の評判について聞き、ブリギッテに元婚約者が復縁を申し出たが、ダームエルが割って入ってふさわしい魔力を身に付けるから1年まってほしいと求愛したと聞かされる。

会食と販売会

星結びの儀式の2日後、本の販売会が行われる。ローゼマインはブリギッテの衣装のお礼に面会を申し込まれていたブリギッテの兄で領主のギーベ・イルクナーと会い、収穫祭までの間、植物紙を研究する傍ら、植物紙の作り方を教えることで話がまとまる。販売会では、眷族の絵本、楽譜、騎士物語が大量に売れる。絵を販売できないのを残念がるエルヴィーラは、イラストの販売を禁止されたローゼマインに代わり、兄のギーベ・ハンデルツェルに頼んでイラストを印刷することを考える。

イルクナーへ行く

神殿に戻ったローゼマインはイルクナー行きの準備に取りかかる。出発日当日、ギルド長やフリーダも見送りに来る中、ローゼマインは、ベンノ、ルッツとフリーダの兄でプランタン商会のダルア・ダミアン、フラン、ギル、モニカ、フーゴ、ダームエル、ブリギッテと孤児院の灰色神官4人を連れてイルクナーに出発する。到着したベンノたちはギーベ・イルクナーと植物紙の打ち合わせを行い、契約を交わす。

イルクナーのブリギッテ

その夜、周囲の住民も交じっての歓迎のバーベキューが開かれるが、自分から取って食べることのない孤児院育ちのギルたちは戸惑う。翌日、住民の案内で野山を散策し、エーレンフェストにはない魔木を採集する。魔木のエイフォンを討伐するダームエルに、ローゼマインは魔力を使って攻撃力を上げるようアドバイスする。その次の日、ローゼマインは、ベンノ、フラン、モニカ、フーゴと護衛騎士のブリギッテ、ダームエルと一緒にエーレンフェストに戻る。

ローエンベルクの山

神殿に戻ったローゼマインに工房や孤児院を見学したいユストクスが興味津々にやってくるが、ローゼマインはユストクスに孤児院への立ち入りを禁ずる。ローゼマインはフェルディナンドやユストクスと夏の素材採集の打ち合わせをする。ローエンベルクという山にいる、火の神ライデンシャフトの怒りを鎮めると言われているリーズファルケの卵を採るのだが、ローエンベルクの魔物はなるべく殺さないようにしなければ、山が噴火してしまうという。その2日後、ローゼマインたちは騎獣でローエンベルクに向かう。翌朝、ローエンベルクの麓を出発し、山の中腹にある裂け目のような入口から洞窟に入る。奥に進むにつれて温度も湿度も上昇する中、リーズファルケの親鳥が餌を探しに飛び立ったすきに、ローゼマインはエックハルトと卵を採りに向かう。

リーズファルケの卵

エックハルトと洞窟を進むと、地下からお湯が沸き出ている泉に出る。その泉の中にある卵を採集することに成功するが、バートアッフェという子猿のような魔獣が卵を奪おうと襲ってくる。さらにリーズファルケも戻ってくるが、何とかフェルディナンドたちのもとに戻ることに成功し、一行は急いで洞窟の中を直走って洞窟を出る。簡単に昼食を食べた後、熱を出したローゼマインは騎獣のレッサーバスの中で卵を抱いて眠ると、熱が下がるころには、卵に魔力が注ぎ込まれ、青い魔石になっていた。

手押しポンプ

ローゼマインは神殿に戻って再び熱を出して寝込むが、回復したころ、ベンノたちが孤児院長室にやってくる。ザックから井戸用ポンプに試作品ができたとの伝言を聞いたローゼマインは、設計図の管理を鍛冶協会に任せ、1つ作るたびに自分とザックに設計料が入るよう契約魔術を結ぶつもりだと話すと、ベンノは養父の領主に頼んで貴族の契約魔術を結んだ方がいいとアドバイスされる。それをフェルディナンドに話すと、まず自分のところに試作品を持ってこさせる。実物を見て感心したフェルディナンドは領主への謁見の予約を入れる。謁見の当日、ザックと鍛冶協会の会長を連れてフェルディナンドと一緒に領主のもとに向かうローゼマインは、実物をジルヴェスターに見せ、契約魔術を結んでもらうことに成功する。

ゲオルギーネの来訪

ローゼマインはフェルディナンドに呼び出され、夏の終わりにジルヴェスターの姉が来ることについて問い詰められる。フェルディナンドはエーレンフェストより上位で大領地のアーレンスバッハの領主に第三夫人として嫁いだゲオルギーネが第一夫人に繰り上がったこと、これからはアーレンスバッハからの干渉が増えるだろうこと、ゲオルギーネは相当面倒な人柄らしいので、側仕えと護衛騎士を連れて決して1人にならないよう注意する。ゲオルギーネが到着し、ローゼマインも歓迎の宴に出席し、ジルヴェスターたちとともに、ゲオルギーネと挨拶を交わす。

ディルクの魔力と従属契約

ゲオルギーネの歓迎式が終わって神殿に戻ったローゼマインに、フリッツがディルクのことで至急お耳に入れたいことがあるとやってくる。ローゼマインはフェルディナンドに面会予約を入れ、フリッツ、フランとダームエルを連れて面会に向かう。ディルクの魔力が急に増えてきていると報告し、フェルディナンドにディルクの従属契約が破棄できないか尋ねるローゼマインだが、ローゼマインを恨んでいるシキコーザの母親がゲオルギーネにいろんな噂を吹き込んでいると注意を促すが、ビンデバルト伯爵との従属契約は破棄し、ローゼマインが従属契約をいつでも結べるよう準備しておくことになる。

ゲオルギーネ様の見送り

フェルディナンドからゲオルギーネの見送りが明日だと知らされたローゼマインのもとに、イルクナーから新しい紙ができたがインクがどのように付くか分からないとの報告が入る。その紙は硬くてつるつるとした素材だった。ローゼマインはインク工房のハイディにインクを研究してもらうことにする。ゲオルギーネの見送りで、社交辞令の挨拶が続く中、ヴィルフリートの軽はずみな挨拶で、来年もゲオルギーネがやってくることが決まってしまう。ハッセの街から届いた手紙に危機感を感じたローゼマインは、灰色神官をハッセに派遣することにする。

エピローグ

シキコーザの敵を討ちたいと願っている母親のダールドルフ子爵夫人グローリエは、自分の息子の処刑の原因となった巫女見習いを領主が養女としたことが許せず、ゲオルギーネを主として心に決めていた。ゲルラッハ子爵夫人ロイエーアからゲオルギーネからの手紙が届いたとの知らせが入り、ゲルラッハの夏の館に行くと、手紙の内容は、エーレンフェストの礎へ至る道を見つけた、というものだった。グローリエたちは、ゲオルギーネをエーレンフェストに迎えるため、ヴィルフリートを使ってジルヴェスターを揺さぶろうと考える。

 

最後に番外編が3編。

お茶会

ジルヴェスターの妻・フロレンツィアが、ジルヴェスターとともにゲオルギーネとのお茶会に出席する。ゲオルギーネは叔父である前神殿長が処刑された原因を聞き、幽閉されている母・ヴェローニカに面会したいと申し出て、フロレンツィアは魔術を封じる手枷をしたゲオルギーネを幽閉されている白い塔に案内する。また別の日、エルヴィーラとのお茶会で、フロレンツィアはゲオルギーネについて話を聞く。

ダームエルの申し出

星結びの儀式が終わり、成人ばかりの夜の雰囲気に変わった大広間で、領主のジルヴェスターはフェルディナンドの還俗を発表する。新しい衣装で注目されるブリギッテのもとに、かつて婚約を破棄したハスハイトがやってきて復縁を迫るが、ダームエルとその友人たちが割り込み、ダームエルはブリギッテに求愛する。その後、ローゼマインとともにイルクナーにやってきた2人は、言葉を交わす。

イルクナーでの滞在

イルクナーにやってきたルッツやダミアン、ギルたちが、慣れない生活に苦労しながら、新しい紙の研究を進め、ネバネバした液が出るトラオペルレという白い実を使って様々な配合を試し、新しい紙を生み出す。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「百面相」「ねこみみめいど」「体力温存」の3本の四コマ漫画が収録されています。


新しい印刷機が完成して本作りが本格化し、素材採集も順調に進みますが、ゲオルギーネの来訪で不穏な雰囲気が漂ってきます。次巻で第三部は完結するようですが、おそらくゲオルギーネが絡んで大きな波乱が起きるのでしょう。続きも読んでみたいと思います。