鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部 貴族院の自称図書委員Ⅱ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第四部「貴族院の自称図書委員Ⅱ」を読みました。

ローゼマインが貴族院に進んでからを描く第4部の第2巻。第1巻の「貴族院の自称図書委員Ⅰ」に続いて読んでみました。

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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貴族院に入学したローゼマインは図書館に通いたい一心で、勉強に試験に大奮闘を続けていた。が、貴族の常識を知らない振る舞いに、側近や教師たちからも心配の声が高まっていく。

そんな折、魔術具のシュバルツ達を巡り、大領地ダンケルフェルガーの学生と衝突が勃発!騎士見習い達の模擬戦「宝盗りディッター」で勝負することに。

おまけに領地関係に配慮せず、他の領主候補生から秘密の相談を受けたり、王子の恋の相談にまで乗ったりと……。ローゼマインの奔放さにエーレンフェストで待つ保護者達は頭を抱えるのだった。

図書館を守るためには手段を選んでいられません!騒動続きで大賑わいのビブリア・ファンタジー

書き下ろしSS×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた19節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に番外編2編、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

写本にやってくるエーレンフェストの学生たちに、ローゼマインの指示だと考える司書のソランジュは、学生たちが変わった紙を使っているのを見て、エーレンフェスト特有の物が一気に出てきたと思う。閉館時間となり、シュバルツとヴァイスと図書館を閉め、側仕えのカトリーンが運んできた夕食を自室で食べる。

お茶会の打ち合わせ

ローゼマインが全ての講義に合格した夜、まだ座学を終えていない女の子たちは。シュバルツとヴァイスの採寸に行けないことを残念がるが、採寸の日までまだ猶予があると知って少し安心する。図書館に行けると浮かれるローゼマインだが、ヴィルフリートは、社交に向けてどの程度の情報を流行として発信するのか打ち合わせる。エーレンフェストの立場を有利にするために、騎士見習いたちに魔物などの情報を書き残して情報を蓄積するよう促すローゼマインは、旧ヴェローニカ派の子供も取り込んでいくことを考える。

図書館へ行こう

浮かれて図書館に行ったローゼマインは、シュバルツとヴァイスに魔力を注ぎ、2階の蔵書を見て目を輝かせる。ソランジュの手伝いをして本の分類や整理をしたいと申し出るローゼマインに、ソランジュは顔を真っ青にして固辞する。お昼になり、寮に戻る途中で、社交の勉強が足りない、お願いの仕方は領主候補生にふさわしくないとリヒャルダに注意されたローゼマインは、ソランジュをお茶会に招こうと考える。

図書委員になりたい

ソランジュをお茶会で歓待し、図書委員になりたいとお願いしたいと側仕えに話すローゼマインだが、リヒャルダから、完全に間違っている、上位の立場で歓待し要求するのは絶対に逆らえない命令を突きつけることになる、相手のことを考えなければと諫められ、ソランジュと交流を深めるところから始めるよう助言される。

ソランジュとのお茶会に向けて

午後にも図書館に向かったローゼマインは、リヒャルダの助言で、ソランジュとの距離を詰めすぎないよう注意し、お茶会を開いたり参加したりしているか尋ねると、ソランジュは図書館の管理のため、参加したり主催したりすることはないと答える。フィリーネと騎士物語が書かれた本を読み、大金貨3枚の保証金を払って借りて帰る。次の日は、騎士物語があると聞いたコルネリウスとハルトムートも同行して図書館に向かう。ハルトムートはフィリーネにも手伝わせて宝盗りディッターの領地対抗戦の資料を書き写し、コルネリウスは魔物に関する資料をレオノーレと書き写す。その様子から、レオノーレがコルネリウスが好きなのだと察するローゼマイン。帰り際、ローゼマインは、ソランジュに執務室でお茶会をすることを提案し、2日後の午後、お茶会をすることになる。

貴族院での初めてのお茶会

ソランジュとのお茶会の日。ローゼマインはリンシャンや髪飾り、植物紙などを紹介し、シュバルツとヴァイスの採寸について相談し、3日後にエーレンフェスト寮に連れ出して行うことになる。そして、書きかけの騎士物語をソランジュに見せ、意見を聞く。ソランジュに喜んでもらえ、ローゼマインは満足してお茶会を終える。

音楽の先生方とのお茶会

午後、ローゼマインは反省会と2日後の音楽の先生方とのお茶会に向けた打ち合わせを行う。ブリュンヒルデからは、お茶会には大領地クラッセンブルクの領主候補生エグランティーヌも参加すると聞かされる。お茶会の当日、会場の部屋に行くと、なぜかアナスタージウス王子もいた。ロジーナのフェシュピールの腕前は先生方の賞賛を受け、お菓子のカトルカールやリンシャンは興味を引く。アナスタージウスからエグランティーヌの卒業式までに新しい曲を作るよう迫られたローゼマインは、その場でメロディを歌い、ロジーナに書き留めさせるが、エグランティーヌが気に入ったことに興ざめしたアナスタージウスは出て行ってしまい、エグランティーヌもそそれを取り成そうと後を追って出ていく。その後、先生方から、エグランティーヌが政変で亡くなった第3王子の末娘で、クラッセンブルクの領主である祖父と養子縁組して領主候補生になった元王女で、射止めれば王座が近付くため、アナスタージウスとその兄の第1王子が振り向かせようと必死になっていると聞かされる。

シュバルツとヴァイスの採寸

採寸の日、シュバルツとヴァイスを狙う他領の貴族がいると聞いたローゼマインたちは隊列を組んで図書館に行き、無事にエーレンフェスト寮に連れていく。服を脱がせて採寸を始めると、お腹の部分に複雑な魔方陣があり、脱がせた服の刺繍にも魔法陣が縫い込まれていた。ヒルシュール先生はハルトムートたちも使いながら、それらの魔法陣の図案を写していく。午後も胴体の複雑な魔法陣を写し、終わったヒルシュール先生は飛び出すように自室に戻っていく。図書館に戻すときに争奪しようと他領が待ち構えていることを知って、護衛に付く騎士見習いに祝福を与える。

シュバルツとヴァイスの争奪戦

シュバルツとヴァイスを連れて寮を出たローゼマインたちは、図書館に続く回廊で待ち構えている100人ほどの他領の学生たち。先頭に立つ第2位の大領地のダンケルフェルガーの領主候補生のレスティラウトは、13位のエーレンフェストが主になれるならもっと優れているダンケルフェルガーの方が主にふさわしいと、反逆罪もちらつかせて明け渡しを要求するが、図書館に興味のないレスティラウトの要求をローゼマインは拒否し、図書館に向かう。攻撃を受けるが、シュバルツとヴァイスの魔力の守りもあって図書館に戻すことに成功するが、アナスタージウス王子の裁定を受けることになる。リヒャルダに王族の魔術具の主として認められるということは、王族の遺物の管理を任される名誉なこと、王族の覚えがめでたくなると考えられていると聞かされる。王族の魔術具を寮内に取り込み我が物にしようとしたと主張するレスティラウトに、宝盗りディッターで勝負を決めることになる。

宝盗りディッター

騎士見習いの専門棟の競技場に行ったエーレンフェストとダンケルフェルガー。宝となる魔物を狩ってきて、自陣の魔物を守りつつ、敵の魔物を倒すか盗むと勝つとルールの説明を受け、ディッターが始まる。ローゼマインは、魔物を自分のレッサーバスに乗せて自陣にとどまって守る作戦を立て、敵が魔物を陣に連れ帰る時を見計らって奇襲をかけるが、連携が取れないエーレンフェストの奇襲は成功せず、防御に徹するが、連携を取って攻めるダンケルフェルガーに押される状況に、ローゼマインはユーディットを使って敵の魔獣に魔石を投げ、魔獣を巨大化させてから、コルネリウスたちに全力で攻撃させ、勝利する。

王子からの呼び出し

ディッターが終わった後にやってきたアナスタージウスは、魔術具の主としてソランジュとローゼマインに話しておくことがある、自分の部屋に来るようにとを呼び出す。翌日、ローゼマインがアナスタージウスの部屋に行くと、なぜローゼマインが魔術具の主になったのか説明を求められる。経緯を話しても理解してもらえないが、貴族院に在学中はローゼマインを主と認め、正式な管理者ではなく善意の協力者として管理することになる。ソランジュを帰した後、アナスタージウスは、エグランティーヌがお茶会に招くだろう、その際に将来の展望、特に卒業式のエスコートについて意向を確認してほしいと頼まれる。

リヒャルダの激怒

図書館に通い、シュバルツとヴァイスに魔力を注ぎながら本を読むことに時間を費やすローゼマイン。お供のコルネリウスとレオノーレはいい雰囲気だが、ブリュンヒルデに主の贔屓はよくないとレオノーレを応援しないよう助言される。寮に戻ると、リヒャルダがトラウゴットに激怒していた。夕食の席で、エグランティーヌからのお茶会の招待状をローゼマインに渡し、わたしも護衛がしたいと言うアンゲリカに、早く座学を終える褒美に、もう一段階魔力を圧縮する方法を教えると伝えると、俄然やる気になる。食事後、リヒャルダは、トラウゴットの言動は側近として失格、と解任を申し出る。ハルトムートも、トラウゴットは魔力圧縮を教えてもらった後はさっさと辞任するそうだと明かす。

トラウゴットの言い分

ローゼマインは盗聴防止の魔術具を使い、トラウゴットの言い分を聞く。トラウゴットは魔力圧縮を教わって強くなり、祖父・ボニファティウスのように騎士団長になりたい、祖父も素質があると言っていたと語るが、周囲が見えず、ダームエルの努力を鼻で笑うトラウゴットにローゼマインは、解任することで周囲の者に傷が付かないよう、辞任する代わりに魔力圧縮方法を教えることにし、トラウゴットは辞任を宣言する。それには、魔力圧縮方法を教えるときに結ぶ契約魔術でトラウゴットを敵に回らないよう縛る狙いもあった。ローゼマインは、ハルトムートにも集めた情報を都合の良い時に勝手に公開しないよう釘を刺す。

エグランティーヌとのお茶会

流行発信に力を入れるブリュンヒルデをはじめ側仕えたちが張り切って準備して、エグランティーヌとのお茶会を迎える。ローゼマインが神殿の奉納式には戻らなければいけないと話すと、エグランティーヌは神殿に興味を示し、盗聴防止の魔術具を出して、ローゼマインが神殿で何をしているのか尋ね、私も神殿に入れるかしら、権力争いの結果家族を失い、これ以上権力争いを見たくない、自分が争いの種になるのを避けたいと語る。深刻な話の後は、エーレンフェストの流行の話をして、お茶会は終わる。

王子への報告

図書館通いの日を続けるローゼマインだったが、アナスタージウス王子に報告に来るよう求められ、あわてて図書館を出てアナスタージウスの後を追う。顔色が悪くなり、途中からリヒャルダに抱きかかえられてアナスタージウスの部屋に行ったローゼマインは、エグランティーヌが卒業式のエスコートは親族にお願いしたいと考えていること、権力争いの種になることを忌避し、平穏を望んでいることを報告し、互いが望むものについて直接話し合うこと、釣り合いを考えるともっと真剣に奉納舞の稽古をすることを助言するが、そこでローゼマインは意識を失ってしまう。目が覚めるとエグランティーヌのお見舞いの言葉が添えられたアナスタージウスの詫び状が届いていた。

エーレンフェストへの帰還命令

回復に3日を要したローゼマインは、ヴィルフリートからジルヴェスターとフェルディナンドの帰還を命ずる手紙を渡され、すぐに帰還するよう指示されるが、アンゲリカの最後の試験が終わる3日間の猶予をもらう。その間に、アナスタージウスにお見舞いのお礼の手紙とロジーナ手書きの楽譜を届け、シュバルツとヴァイスに魔力を注ぎ、アンゲリカの試験も何とか合格し、ローゼマインはエーレンフェストに戻る。戻ったローゼマインは早速領主の執務室に連れていかれる。

尋問会

領主の執務室で、ジルヴェスター、フェルディナンド、カルステッドから貴族院での出来事を尋問されるローゼマイン。ジルヴェスターたちは早くも王族たちとかかわり、権力争いに巻き込まれかねない状況にしたローゼマインの振る舞いに頭を抱えるが、ローゼマインは、何年も先の中央情勢より商売上の取引が先に求められる、確実に起こる事態に対応した方が良いと進言する。

神殿への帰還

ボニファティウスやフェルディナンドも交えた夕食で、ローゼマインは騎士見習いの訓練を見直した方が良いと進言する。翌日、神殿に帰還したローゼマインは、側仕えたちから状況の報告を受け、ギルにベンノたちを呼び出す手紙を届けさせる。

神官長とヒルシュールのお土産

ヒルシュールからのお土産に魔術具やシュバルツとヴァイスの魔方陣についての資料をもらったフェルディナンドは自室に籠っ食事も採らず研究に没頭して出てこない。側仕えに懇願されたローゼマインは、旧ヴェローニカ派の学生も取り込みたいと相談を持ちかけ、フェルディナンドを食事に連れ出す。

呼び出された商人達

ローゼマインに呼び出され、ベンノやマルク、ルッツたちは孤児院長室にやってくる。ローゼマインは今後の商品作りについて話し、エグランティーヌの髪飾りをオットーに発注するが、今後の発展のために、震える手をきつく握り、契約魔術の破棄の可能性を示唆する。

エピローグ

ベンノは、ローゼマインが以前のように隠し部屋で打ち解けて話すのではなく、貴族らしい振る舞いで契約魔術の破棄にも触れたことに動揺するルッツに、平然としているように見えてもローゼマインは不安定になる可能性がある、安心させてやれるのはルッツしかいない、ぶれるなと諭す。

 

ここまでが本編。その後に、番外編の書き下ろしが2編。

直接の求愛

エグランティーヌと会い、ローゼマインの助言を踏まえて率直に思いを伝えて話をするアナスタージウス王子のエピソード。

主が不在の間に

ローゼマインがエーレンフェストに戻って主が不在となった貴族院で、他の領主候補生からの誘いへの対応を押し付けてくるヴィルフリートに対応するブリュンヒルデ、ハルトムートたち側近のエピソード。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「いやし系」「愛の伝道師」「心当たり」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

ジルヴェスターやフェルディナンドたち保護者の想定外のスピードで、ローゼマインは良くも悪くも貴族院で注目される存在になり、元王族で大領地の領主候補生のエグランティーヌから秘密の相談を受け、彼女に恋するアナスタージウス王子からは恋の相談を受けるまでになってしまいます。保護者たちは頭を抱えますが、後の祭りです。この後も、ローゼマインはおそらく保護者たちの頭を抱えさせることをいろいろ仕出かしてくれるのでしょう。先が楽しみです。