鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部 女神の化身Ⅲ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第五部「女神の化身Ⅲ」を読みました。

ローゼマインの後見人だったフェルディナンドが結婚のためアーレンスバッハに旅立った後を描く第5部の第3巻で、2020年10月に刊行されています。第2巻に続いて読んでみました。

 

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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ダンケルフェルガーとのディッター勝負で倒れたローゼマインが目を覚ます。諸問題は解決したものの、乱入した中央騎士団にトルークを使われた可能性が浮上した。その対応は大人達に任せつつ、本人は領地対抗戦の準備に取りかかる。様々な領地や王族との社交が次々と始まるのだった。けれど、ローゼマインの心はどこか落ち着かない。それもそのはず。対抗戦の夜にフェルディナンドがエーレンフェストのお茶会室に宿泊予定なのだ。「わたくし、フェルディナンド様を全力でお迎えします!」

待ちわびた再会に成人式の奉納舞と、イベント目白押しで相変わらずの大激走!

書下ろし短編×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた16節からなり、巻末に番外編の書き下ろし短編が3編(帯の紹介では2本とありますが、実際は3本です)、著者によるあとがきの後にはイラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

ダンケルフェルガー(順位2位の大領地)とのディッター(騎士が騎獣に乗って戦う競技)はエーレンフェスト順位8位の中領地)の勝利に終わり、ローゼマイン(主人公。エーレンフェストの領主候補生3年生で神殿長)が奪われることを防いだが、マティアス(ローゼマインに名を捧げた側近の中級騎士見習い5年生)は、ディッターに乱入した中央騎士団の騎士がトルークを使っていたことに気づき、ともに側近のブリュンヒルデ(上級側仕え見習い5年生)、レオノーレ(上級護衛騎士見習い6年生)、ユーディット(中級護衛騎士見習い4年生)、ラウレンツ(ローゼマインに名を捧げた中級騎士見習い4年生)に声をかけ、口々にヴィルフリート(ジルヴェスターの息子・ローゼマインの義兄のエーレンフェストの領主候補生3年生でローゼマインの婚約者)への不満を漏らす側近たちに、そのことを話す。

目覚めと報告

目覚めたローゼマインは、リーゼレータ(ローゼマインの側近の中級側仕え見習い6年生)が持ってきたライムント(アーレンスバッハの中級文官見習い4年生で、貴族院のエーレンフェストの寮監・ヒルシュールの弟子)が設計したシュミル(貴族に人気の可愛らしい魔獣)のぬいぐるみの録音の魔術具にフェルディナンド(ジルヴェスターの異母弟で元神官長。ローゼマインの後見人だったが、王命により、順位6位の大領地・アーレンスバッハの領主候補生6年生のディートリンデの婚約者となった)へのメッセージを録音し、レティーツィア(順位3位の大領地・ドレヴァンヒェルから養子に入ったアーレンスバッハの領主候補生)からの手紙を読む。回復し、マティアスからトルークが使われた可能性があることを聞いたローゼマインは、ゲオルギーネ(アーレンスバッハの第一夫人でジルヴェスターの姉)が中央のどこかとつながっている可能性を考え、ジルヴェスター(エーレンフェストの領主でローゼマインの養父)の許可を求めた上で、王族に伝えることにする。

領地対抗戦の準備

領地対抗戦が近づき、ローゼマインは、共同研究の状況について話を聞き、ドレヴァンヒェルとの共同研究を担当している文官見習いたちに魔術具のアイデアを提案したりする。話し合いの後、隠し部屋でフェルディナンドからの手紙を読み、返事を書く。

ライムントの研究とヒルシュールの注意

エーレンフェストから、王族との話し合いはアウブ(各領地の領主)が行うので余計なことはするな、とのトルークについての返事が届く。ライムントの研究の状況を確認にヒルシュール貴族院の教師で、エーレンフェストの寮監)の研究室に行ったローゼマインは、貴族院での最近のエーレンフェストの評判などを聞き、忠告を受ける。

領地対抗戦の始まり(三年)

領地対抗戦を迎え、厨房では朝からお菓子を作り、学生たちは準備に動きはじめ、ローゼマインはこの日フェルディナンドたちが泊まることになっているお茶会室の様子を確認する。正装したハルトムート(ローゼマインの側近の上級文官でエーレンフェストの神官長)コルネリウス貴族としてのローゼマインの兄で、側近の上級護衛騎士。レオノーレの婚約者)、アンゲリカ(ローゼマインの側近の中級護衛騎士でリーゼレータの姉)が到着し、さらにジルヴェスターも到着するが、フロレンツィア(ジルヴェスターの第一夫人で、貴族としてのローゼマインの養母)は、体調が悪く休ませていると聞かされる。

ダンケルフェルガーとの社交

領地対抗戦が始まり、エーレンフェストの場所には、ハンネローネ(ローゼマインの図書委員仲間のダンケルフェルガーの領主候補生3年生)を連れてダンケルフェルガーの第一夫人・ジークリンデがやってくる。ジークリンデは、ディッターの結果やハンネローネの扱いについての話を始め、いろいろと認識の違いが明らかになるが、レスティラウト(ダンケルフェルガーの領主候補生6年生でハンネローネの兄)の絵をお詫びに渡すこと、ディッター勝負を持ち掛けないことなどで話がまとまる。

アーレンスバッハとの社交

そこにディートリンデ(順位6位の大領地・アーレンスバッハの領主候補生6年生で、ヴィルフリートの従姉)とフェルディナンドがやってくる。ディートリンデはシュミルのぬいぐるみの録音の魔術具が欲しいと言い出して聞かず、リーゼレータの提案で領地対抗戦で展示中のシュミルを渡すことにする。

王族との社交

さらに、アナスタージウス(中央の第二王子)がやってきて、盗聴防止の魔術具を使い、ローゼマイン、ジルヴェスター、ジークリンデ、ハンネローネと、エーレンフェストとダンケルフェルガーとの間の騒動について話を始める。ローゼマインは嫁取りディッターの際にトルークが使われた可能性があること、ジルヴェスターは反逆者とゲオルギーネが通じている可能性があることをアナスタージウスに話す。エーレンフェストの貢献に感謝するアナスタージウスが来年の順位について希望を尋ねると、ジルヴェスターは上位領地として動ける貴族がほとんどいない現状から、順位を上げない代わりに政変の勝ち組領地と同じ扱いにすることを求め、アナスタージウスはそれを了承する。

他領との社交

王族やダンケルフェルガーが去った後、アウブ・クラッセンブルク(順位第1位の大領地)がやってくる。来年も儀式を行うことを要望されるが、ジルヴェスターは貴族院で儀式を行うことで王族と中央神殿の溝が深まる可能性があると断り、ポンプの設計図の要望は領主会議で話をすることにする。その後も、ドレヴァンヒェル(順位3位の大領地)、ハウフレッツェ(順位5位の中領地)、ギレッセンマイアー(順位4位の大領地)のアウブたちが次々とやってきて、取り引き枠を増やすよう要望されるが、やんわりと断る。昼食のために寮に戻ったローゼマインは、共同研究の様子を学生たちに尋ねる。

フレーベルタークとの社交

午後になり、ローゼマインはディッターの後半戦を観戦しに行くが、アウブに呼び戻されると、フレーベルターク元は上位領地だったが政変で負け組となった順位15位の中領地)の領主夫妻(領主の夫はフロレンツィアの兄、妻はジルヴェスターの姉)が待っていた。そこでローゼマインはフロレンツィアが懐妊している可能性が高いことを知り、フレーベルタークで急速に神殿の改革が進んでいることを聞かされる。

ディッターとダンケルフェルガーの実演

ディッターがエーレンフェストの番となり、ローゼマインたちは競技場で観戦する。グンドルフ貴族院の文官コースの教師で、ドレヴァンヒェルの寮監)はグミモーカという魔木を出すが、魔物に詳しいレオノーレの指示の下的確に対応し、ディッターを終える。全ての領地のディッターが終わった後、ダンケルフェルガーの騎士たちによる神事の実演が行われる。

初めての表彰式

ローゼマインは、3年生にして初めての表彰式に臨む。エーレンフェストはディッターで3位に、研究発表では共同研究が1位と3位に入る。領地対抗戦の表彰の後、貴族院の成績優秀者の表彰となり、エーレンフェストの学生たちも成績優秀者として表彰され、ローゼマインは3年連続で最優秀となり、から表彰を受ける。

フェルディナンドとの夕食

領地対抗戦から戻ったローゼマインは、寮のお茶会室に泊まることになっているフェルディナンドとお小言混じり夕食を食べる。夕食後、シュミルのぬいぐるみを強引に手に入れるディートリンデの償いにと、フェルディナンドは録音の魔術具を猛烈なスピードで作り上げる。ローゼマインは、その魔術具をレティーツィアに贈ることにする。翌日の卒業式でディートリンデが髪飾りを王族より豪華にする可能性が高いこと、奉納舞で魔石を光らせて舞う可能性があることをフェルディナンドに伝える。

別れと成人式

翌朝、ローゼマインはフェルディナンドを起こして一緒に朝食を食べる。フェルディナンドは以前のようにローゼマインの熱や脈を測り、無理をしないようにと話す。朝食後、寮には卒業生の保護者、そしてエスコート相手たち、さらにジルヴェスターとフロレンツィアが到着する。講堂で行われた卒業式、卒業生の入場となり、ディートリンデは頭を髪飾り、リボンなどで豪華に飾り立てて入場し、ものすごい注目を浴びる。中央神殿の神殿長による成人式の後、音楽の奉納、そしてレオノーレも参加する剣舞が行われる。

ディートリンデの奉納舞

領主候補生たちによる奉納舞が始まると、ディートリンデが身に付けている魔石が光り、点滅する。光が消えるたびにディートリンデは顔をしかめ、少しずつ魔力が魔法陣に吸い込まれていく。ついには、大きくふらついてディートリンデは倒れてしまうが、その時、舞台の魔法陣が一瞬光る。ディートリンデは運び出され、補欠の領主候補生が交代して奉納舞が再度行われる。奉納舞が終わり、寮に戻ってジルヴェスターたちと昼食を食べていたローゼマインのところに、エグランティー(アナスタージウスの第一夫人で貴族院の教師。順位1位の大領地・クラッセンブルクの元領主一族から知らせが入り、アナスタージウスからの手紙が届く。そこには、中央神殿の神殿長と神官長が昼食時に、奉納舞で浮かび上がった魔法陣は次期ツェントの選別をするための魔法陣で、今最もツェントに近い人物はディートリンデだと言ったこと、その言い分が正しいのか話を聞きたいと書かれていた。ジルヴェスターは、手紙を持ってきた使いの者にフェルディナンドも呼び出すように伝える。

エグランティーヌとの話し合い

午後、呼び出されたローゼマインはアナスタージウスの離宮でエグランティーヌと会い、ツェント・トラオクヴァールはディートリンデが本当にグルトリスハイト(本来はツェントになるために必要とされる古の聖典を得た場合は王座を明け渡すつもりだと述べたと聞かされる。遅れて到着したフェルディナンドは、エグランティーヌからの問いに、奉納舞で浮かび上がった魔法陣がツェント候補を選出するものだが、魔法陣を浮かび上がらせることができたディートリンデが一番ツェントに近いというのは間違いだ、奉納舞の儀式でツェントに相応しい魔力を持ち、光の柱を立てることができた者だけが次の段階に進むことができる、それができなかったディートリンデに候補の資格はないと語る。

本の貸し借りと心の拠り所

話し合いを終えたローゼマインが寮に戻ると、ヴィルフリートから、ハンネローネがダンケルフェルガーの本やレスティラウトの絵を持ってきたいという話があったと聞かされる。ヴィルフリート、シャルロッテ(ジルヴェスターの娘の領主候補生2年生。ローゼマインの義妹)とともにジルヴェスターに呼び出されたローゼマインは、卒業式で中央神殿の神殿長が奉納舞で浮かんだ魔法陣が次期ツェントを選ぶためのものだと発言して大騒ぎとなったことを聞かされ、エグランティーヌとの話し合いの内容を報告する。その2日後、やってきたハンネローネと会ったローゼマインは、本の貸し借りをし、心を寄せる人がいるか聞かれ、洗礼式より前から支えてくれて、共に歩んできた方がいると話す。

エピローグ

奉納式の2日後に目覚めたディートリンデを領地に送り出し、ホッとした側近のマルティナ(アーレンスバッハの上級側仕え見習い5年生)は、同じ側近のファティー(アーレンスバッハの上級文官見習い6年生)とゲオルギーネ派に属するようになった経緯などを話し合う。マルティナが貴族院に戻って数日後、ディートリンデはゲオルギーネの離宮に呼び出される。戻ったディートリンデは、グルトリスハイトを探して次期ツェントを目指す、ゲオルギーネは自分の決意を応援してくれたが、次期ツェントを目指せるのは1年だけで、その間に見つけることができなければ、次期アウブになると側近たちに話す。それを聞くマルティナは、ゲオルギーネの真意がつかめず身震いする。ディートリンデは、ツェントになったら婚約を破棄するためフェルディナンドに名を捧げさせようとするが、フェルディナンドは自分の行動を縛るためにヴェローニカ(現在は幽閉中のジルヴェスターの母親。ディートリンデの祖母)に名捧げを求められたため、名を捧げることができないことを話す。

 

さらに、番外編の書き下ろしが3編収められています。

領地対抗戦での決意

ミュリエラ(ローゼマインに名を捧げた側近の中級文官見習い5年生)と仲良くなったリュールラディ(順位10位の中領地・ヨースブレンナーの上級文官見習い3年生)が、領地対抗戦でのローゼマインとフェルディナンドの様子に恋の訪れを感じ、女神の恋物語としてローゼマインの切ない恋を書くことを決めるエピソード。

娘の意見と覚悟

ジークリンデが、領地対抗戦でエーレンフェストや王族と話をした後、娘・ハンネローネにエーレンフェストとの今後の関係について意見を聞く。ハンネローネはこれまでのダンケルフェルガーとエーレンフェストの関わりについて説明し、嫁がない選択をした覚悟を語る。

不信感とゲヴィンネン

オズヴァルト(ヴィルフリートの筆頭側仕え)は、ヴィルフリートに対し、アーレンスバッハに移ったフェルディナンドのローゼマインへの態度を批判し、ローゼマインには婚約者としての自覚を持ち、ヴィルフリートを差し置いて次期領主に相応しいと他領から言われるような振る舞いは控えてもらうべきだと意見する。嫌な気分になったヴィルフリートは話を切り上げるが、誘われてオルトヴィーン(ドレヴァンヒェルの領主候補生3年生)とゲヴィンネン(騎獣に乗った騎士に見立てた駒を魔力で動かすボードゲームをする中で、ローゼマインが次期領主ではないかと疑うオルトヴィーンの言葉に、ヴィルフリートはオズヴァルトの忠告が正しかったと思うようになる。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「数ヶ月ぶりに会ったワンコ」「横でもダメ」「疑惑」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

次の国王に最も近いと言われてその気になった自己中心的なディートリンデ。名捧げを求めて断られたことで、フェルディナンドとの溝は一層深くなっていきます。一方で、ローゼマインは、豊富な魔力と神殿務めで身に付けた聖典の知識で、王族から頼られる存在にもなってきます。このあたりの関係が、次巻以降どう動いていくのか、楽しみにしたいと思います。