鷺の停車場

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映画「長崎の郵便配達」

少し前になりますが、シネスイッチ銀座で映画を観ました。


東京メトロ銀座駅から歩いて数分の場所。この映画館に来たのは初めてだと思います。


この日の上映スケジュール。シネスイッチ1は地下、シネスイッチ2は3階にあるようです。


エレベーターで3階のシネスイッチ2へ。


この日観たのは、「長崎の郵便配達」(8月5日(金)公開)。182席のスクリーンですが、上映最終週とあってか、お客さんは15人ほどでした。


公式サイトによれば、

 

 『ローマの休日』のモチーフになったといわれるタウンゼンド大佐が長崎の少年に出会い、生まれた物語

はじまりは1冊の本だった。著者はピーター・タウンゼンド氏。戦時中、英空軍のパイロットとして英雄となり、退官後はイギリス王室に仕え、マーガレット王女と恋に落ちるも周囲の猛反対で破局。この世紀の悲恋は世界中で話題となり、映画『ローマの休日』のモチーフになったともいわれる。その後、世界を回り、ジャーナリストとなった彼が、日本の長崎で出会ったのが、16歳で郵便配達の途中に被爆した谷口稜曄(スミテル)さんだった。生涯をかけて核廃絶を世界に訴え続けた谷口さんをタウンゼンド氏は取材し、1984年にノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」を出版する。 映画『長崎の郵便配達』は、タウンゼンド氏の娘であり、女優のイザベル・タウンゼンドさんが、父親の著書を頼りに長崎でその足跡をたどり、父と谷口さんの想いをひもといていく物語だ。 2018年8月、長崎。イザベルさんは本をなぞり、 時に父のボイスメモに耳を傾けながら、スミテル少年が毎日歩いた階段や神社、そして被爆した周辺などを訪ね歩く。また、長崎のお盆の伝統行事、精霊流しでは谷口さん家族と一緒に船を曳いた。旅の終わりに彼女が見る景色とは――。 川瀬監督は、谷口さんより出版についての相談を受け、ニューヨークでの講演を聞いたり、父の意志を受け継ぎたいと願うイザベルさんと出会ったことで、映画の制作を決心した。「核兵器」という言葉がリアルに響く今この時こそ、平和の願いを誰かに“配達”してほしい。父から娘へのメッセージは、今、あなたの元へと届きます。

 

・・・というドキュメンタリー映画

 

 主な登場人物は、

  • イザベル・タウンゼンド:1961年フランス生まれの女優。ピーター・タウンゼンドの長女。

  • 谷口 稜曄:1929年福岡県生まれ。14歳で長崎市の本博多郵便局に就職し、郵便局員として働き、1945年8月9日、自転車に乗って郵便物を配達中に被爆し、背中一面に大火傷を負う。退院した翌月の1949年4月から郵便局へ復職、約60年にわたり被爆者運動をけん引。2017年8月に88歳で亡くなる。

  • ピーター・タウンゼンド:1914年英領ビルマのラングーン(現ミャンマーヤンゴン)生まれ。第二次世界大戦では英空軍で英雄的活躍をする。後年は作家に転じ、来日して長崎を訪れた際に、谷口稜曄さんと出会い、1984年にノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」を出版する。1995年に亡くなる。

など。

 

映画は、2018年8月に長崎市の高台に到着し、長崎の風景を見下ろすイザベル・タウンゼンドの姿で始まりますが、すぐに、少し前の時期に戻って、この映画を製作することになった経緯・背景が、イザベルへのインタビューという形で語られます。父親のピーター・タウンゼンドが、マーガレット王女との破局から、世界一周旅行を経て、文筆家となった経緯、そして1984年に谷口稜曄さんの半生を描いたノンフィクション小説「The Postman of Nagasaki」を書き、その翌年にフランスのテレビ番組に谷口さんを招聘したときの記憶・・・。そして、父親の取材メモのカセットテープを発見したイザベルは、それをデジタル化します。2018年8月、夫と2人の娘とともに長崎にやってきたイザベルは、テープに残された父の声を聞きながら、かつて谷口少年が歩いた階段や街を歩き、谷口さんの家族や、父の通訳を務めた男性などを訪ね、父と谷口さんの思いを追体験していきます。

ドキュメンタリーではあるのですが、長崎の風景の中に赤い郵便配達の自転車に乗った少年を登場させるなど演出されたシーンもあり、ドラマとの融合といった感じもありました。テーマがテーマなだけに、背中全面に火傷を負った谷口さんのカラー映像など、刺激が強い映像ももちろんありますが、声高に原爆の悲惨さや核兵器廃絶を訴えるということではなく、淡々と、谷口さんとピーター・タウンゼンドさんの足跡をたどっていく描き方は、私にはかえって心に響きました。