鷺の停車場

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映画「世界の終わりから」

仕事帰りにシネスイッチ銀座で映画を観ました。


東京メトロ銀座駅から歩いて数分の場所。この映画館に来るのは、昨夏に「長崎の郵便配達」を観て以来、二度目になります。


この日の上映スケジュール。シネスイッチ1は地下、シネスイッチ2は3階にあります。前回と同じく、エレベーターで3階のシネスイッチ2へ。


この日観たのは、「世界の終わりから」(4月7日(金)公開)。全国41館と比較的小規模での公開。以前から気になっていたのですが、上映時間の都合が合わず、なかなか観に行くことができませんでした。そうしているうちに、上映も終了してしまいそうなので、観に行くことにしました。


上映されるシネスイッチ2は182席。お客さんは7~8人とちょっと寂しい入りでした。


(チラシの表裏)


事故で両親を亡くし、自身も生きる希望を失いかけている女子高生が、世界を救う使命を託され、戸惑いながらも世界を救うために奔走する姿を描いた作品で、監督・原作・脚本は紀里谷和明


公式サイトのストーリーによれば、

 

高校生のハナ(伊東蒼)は、事故で親を亡くし、学校でも居場所を見つけられず、生きる希望を見出せずにいた。ある日突然訪れた政府の特別機関と名乗る男から自分の見た夢を教えてほしいと頼まれる。
心当たりがなく混乱するハナだったが、その夜奇妙な夢を見る。。。

 

・・・というあらすじ。

 

 主な登場人物は、

  • 志門 ハナ【伊東 蒼】:交通事故で両親を亡くした17歳の高校3年生。祖母をも亡くしてひとり暮らしで、学校でも居場所がない。

  • 江崎 省吾【毎熊 克哉】:政府の特別機関の男性。ハナの護衛を務め、精神的にもハナの支えとなる。警視庁警備局の所属で、妻子がいると説明するが、本当は防衛省の人間で、独身。名前も偽名。

  • 佐伯 玲子【朝比奈 彩】:江崎の同僚で、ともにハナの護衛を務める。

  • ユキ【増田 光桜】:ハナが夢で見る戦乱の世の世界で出会った少女。侍に両親を殺され、侍がいなくなればいいと願っている。

  • タケル【若林 時英】:ハナのクラスメイト。右足が不自由。ハナに好意を寄せている。

  • 老婆【夏木 マリ】:ハナが見る夢で世界を救おうとする輪廻師の老婆。

  • 是枝 智史【高橋 克典】:官房長官。ハナの夢によって政治的な判断が行われることを面白く思わず、ハナに接近する。

  • ソラ【冨永 愛】:現代の人類が滅びた後の地球に現れる謎の女性。

  • 無限【北村 一輝】:ハナが夢で見る戦乱の世での侍の頭領格。実は輪廻師で、現代のハナの前にも姿を現す。

  • シロ【阿見201】:ハナが夢で見る戦乱の世の世界で出会った男。顔が醜いために母親に山に捨てられた。ハナとユキを侍から救う。

  • ラギ【柴崎 楓雅】:ハナが夢で見る戦乱の世の世界で出会った少年。ハナを祠に案内する。

など。役名は不明ですが、冒頭の教室のシーンで相対性理論について説明する教師役で岩井俊二、事故で亡くなったハナの母親役で市川由衣も出演しています。又吉直樹も出演しているそうですが、どの役かは分かりませんでしたが、後になってみると、ソラと会話する人工知能(コンピューター?)の声だったような気もします。

 

ネタバレになりますが、記憶の範囲で、もう少し詳しめにあらすじを紹介すると、

 

2030年2月7日、ハナの祖母は病気で臨終を迎える。ハナは生活費を稼ぐために居酒屋でバイトをしていたが、アパートに帰ってくると、警視庁警備局の江崎と佐伯がハナの帰りを待っていた。江崎たちは、夢を見たら教えてほしいと言って帰っていく。
ハナは、ヘアメイクを学ぶために美容専門学校に行くのが夢だったが、ひとりになった自分には無理と感じ、学校のパンフレットをゴミ箱に捨てる。そして、ハナが湯舟に浸かっている間に夢を見る。そこは戦乱の世で、侍から逃げるが、弓矢で肩を撃たれ、意識を失う。意識が戻ると洞窟の中で、老婆とユキという名の少女がいた。老婆は、たどりついてくれてありがとう、と言い、手紙を届けてほしいとハナに託す。
学校に行くと、ハナをいじめる不良から、5万円を渡さないと動画を拡散すると脅される。ハナは気分が悪くなって意識が薄れると、そこに現れた江崎たちがハナを連れていく。
連れていかれた場所には、戦乱の世で出会った老婆とそっくりな老婆が待っていた。老婆は事情を説明し、ハナは求めに応じて、見た夢の内容を話す。それを聞いた老婆は、どこかに電話を掛け、シナリオ13を推奨する、と伝える。2週間で世界の終わりが来ると、救えるのはハナだけだと協力を要請されるが、一度は無理と断る。
その帰り、江崎に車で家まで送られるハナは、その途中、ハナが見た夢によって、計画停電交通機関の運行停止などが決まったことを知る。家に着くと、緊急地震速報が流れ、江崎からの電話で、関西で大地震が起きたが、ハナの夢のおかげで被害が最小限に食い止められたことを知らされる。
卒業した小学校が廃校になるため、ハナたちは小学生の時に埋めたタイムカプセルを掘り起こす。ハナがタイムカプセルに入れたのは、未来の自分へのメッセージを吹き込んだカセットテープだった。タケルと話をして少し前向きになったハナは、江崎にやらせてください、と返事する。
ハナは、見た夢の内容を老婆に報告する。夢の世界で、ハナはユキとともに、手紙の届け先である祠に向かう途中で、罠に嵌ったシロを助ける。村に入ったハナとユキは侍たちに捕まってしまうが、シロによって助けられる。夢の内容を聞いた老婆は、再びどこかに電話をかけ、コード1067と告げる。その帰り、突然官房長官の是枝が話をしたいとハナの前に現れるが、江崎はそれを遮ってハナを連れて帰る。
ハナには学校にも護衛が付くようになる。不良からはトイレで再び脅されるが、佐伯が助けに入る。助かったハナだったが、意識が遠のき、気が付くと学校の保健室のベッドで横になっていた。夢の世界では、ユキが、死んだら星になる、こんな世界は早く終わればいい、そしたら自分も両親と同じように星になるから、と話す。
佐伯の運転する車に乗っていると、そこに無限が現れる。死なない無限は、ピストルなどで応戦する佐伯を逆に殺し、ハナに、目を覚ませ、と告げて去っていく。佐伯が死ぬ運命だったことを江崎や老婆が知っていたことにショックを受けるハナ。
ハナの夢の世界では、ラギと名乗る白装束の少年が現れ、ハナを祠まで案内する。祠に着いたハナは、出迎えた男性に託された手紙を渡す。
願いが叶ったユキは、村に戻り、現れた侍たちを次々と殺していく。両親を殺した侍たちがいなくなるのがユキの願い、祠は自分の心だったのだ。
ハナの夢の内容で、全面的な渡航禁止などが決定される。占いで政治的決定が行われると、批判が次第に高まり、ハナの個人情報もネットで拡散されるようになっていく。そんな中、現れた無限によって江崎は倒れ、是枝に捕まってしまったハナは、両親が交通事故で亡くなった現場で是枝に知っていることを話すよう迫られるが、そこにやってきた無限によって是枝も倒れる。
動画が拡散されてしまい、ショックを受けたハナは部屋に引き籠る。しかし、高校の卒業式、そして世界の終わりが来る日の前の日に、老婆がハナの部屋を訪ねてくる。自分やハナと同じ輪廻師だったハナの母親が、心臓病で幼くして亡くなるはずだったハナを救うため、自分と夫の命を差し出し、ハナの運命を変えたことを話し、母親がメッセージを吹き込んだカセットテープを渡す。それを聞いたハナは、自分がひとりぼっちではなく愛されていたことを感じ、涙を流す。
世界の終わりが来る日、ハナは運命を変えようと老婆のもとを訪れ、夢を見ようとするが、ネットは炎上し、老婆たちを襲おうとする男たちが来襲する。江崎たちが必死に防戦するが、防ぎきれず、老婆は自分が囮になってハナを救おうとする。ハナは何とか脱出するが、世界の終わりはやってくる。ハナは、カセットテープにあるメッセージを吹き込み、タイムカプセルに入れて土に埋める。
人類がいなくなった未来の世界、そこに宇宙船らしき乗り物に乗ってやってきたソラという女性は、タイムカプセルを発見し、ある女の子を助けてほしい、というハナのメッセージを聞く。何やら計算したソラが向かったのは、ユキがいる戦乱の世だった。そこでソラは、ユキの両親を殺そうとしていた侍たちを討伐し、姿を消す。運命が変わったことによって、ハナの両親は間一髪で交通事故を免れるのだった。

(ここまで)

 

紀里谷監督が「最後の作品」としているそうですが、独特の世界観が際立った、作家性の濃い作品でした。インタビュー記事を読むと、ひとりぼっちで世界に絶望しているハナの姿には、作品が日本の映画界になかなか受け入れられない紀里谷監督自身の心情も投影されているようです。現実のハナの世界、そして夢で見るユキの世界のいずれも、救いのない閉塞感に満ちていますが、自分を認め、自分を救うことが、世界を救うことにもつながるというメッセージを強く感じました。135分とちょっと長めの時間の映画ですが、時間の長さを感じさせられることなく、最後まで引きつけられました。