世間的には平日の午前、MOVIX柏の葉に行きました。
11時ちょっと前の時間帯、ちょうど上映中のスクリーンが多かったのか、ロビーの人はまばらでした。
この日の上映スケジュールの一部。この日は22作品・27種類の上映でした。
この日観たのは、「そばかす」(12月16日(金)公開)。今後上映館も増えるようですが、公開当初からの上映館は全国10館のみとかなり小規模での公開、千葉県内での上映館はここだけですが、この映画館での上映も12月29日(木)までの2週間で終了してしまうようです・・・と思ったら、ひとまずもう1週間上映が延長されました。
上映は103+2席と比較的小さめのシアター1。お客さんは15人ほどでした。
(チラシの表裏)
アサダアツシの企画・原作・脚本によるオリジナルドラマで、監督は玉田真也。玉田真也監督の作品は、2年前にスクリーンで観た「僕の好きな女の子」に続いて2本目となります。
公式サイトのストーリーによれば、
「恋愛をしたことがない、そういう感情もない。 だけど楽しく生きていける―」 それが私だと思っていた。
私・蘇畑佳純(そばた・かすみ)、30歳。チェリストになる夢を諦めて実家にもどってはや数年。コールセンターで働きながら単調な毎日を過ごしている。妹は結婚して妊娠中。 救急救命士の父は鬱気味で休職中。バツ3の祖母は思ったことをなんでも口にして妹と口喧嘩が絶えない。そして母は、私に恋人がいないことを嘆き、勝手にお見合いをセッティングする。
私は恋愛したいと言う気持ちが湧かない。だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。でも、周りはそれを信じてくれない。
恋する気持ちは知らないけど、ひとりぼっちじゃない。大変なこともあるけれど、きっと、ずっと、大丈夫。進め、自分。
・・・というあらすじ。
主な登場人物は、
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蘇畑 佳純【三浦 透子】:主人公の30歳の女性。チェリストになる夢を諦めて実家に戻り、コールセンターで働いている。
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世永 真帆【前田 敦子】:佳純の中学校時代の同級生で、元AV女優。
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篠原 睦美【伊藤 万理華】:佳純の妹。結婚しているが、妊娠中でよく実家に帰ってくる。
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小暮 翔【伊島 空】:母親が強引にセッティングした佳純のお見合い相手。ラーメン店を開いている。
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八代 剛志【前原 滉】:佳純の小学校時代の同級生。教師だったが、ゲイであることで辞めざるを得なくなり、地元の幼稚園に転職した。
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天藤 光【北村 匠海】:幼稚園に新しく入ってきた佳純の同僚。
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蘇畑 宮子【田島 令子】:佳純の祖母。バツ3。
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蘇畑 菜摘【坂井 真紀】:佳純の母。佳純に結婚を迫る。
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蘇畑 純一【三宅 弘城】:佳純の父。救急救命士だが、鬱のため休職中。
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春日先生【浅野 千鶴】:佳純が八代の誘いで転職した幼稚園の責任者。
- 篠原 健人【前原 瑞樹】:睦美の夫。密かに浮気している。
というもの。(それぞれの登場人物の説明は加筆しました)
多少ネタばれになりますが、記憶の範囲でもう少し詳しめに紹介すると、
蘇畑佳純は、チェリストを目指して音楽大学に進んだが、自信を失くしてその夢を諦め、今は実家に戻ってコールセンターで働いている。恋愛感情や性的欲求を抱かない佳純は、誘われて合コンに行っても、違和感を感じながら話を合わせるだけ。
一方、母の菜摘は、佳純が一向に結婚する気配がないことに焦りを感じ、本人には内緒で見合いをセッティングし、服を買いに行くと言って佳純を無理やり見合いの場に連れていく。その相手・小暮は、今は恋愛や結婚なんて考えられない、仕事を優先したいと打ち明け、意気投合した2人は友だちとして付き合い始める。小暮との友人関係に居心地の良さを感じる佳純は、街中で偶然出会った小学校時代の同級生・八代に声を掛けられて、コールセンターを辞めて幼稚園で働き始める。
しかし、付き合っているうちに佳純を好きになってしまった小暮が告白したことで、2人は別れることになる。落ち込む佳純に、中学校時代の同級生・真帆が声を掛け、佳純をキャンプに連れていったことをきっかけに、2人は仲良くなる。
園児のためにデジタル紙芝居を作ることになった佳純は、シンデレラの紙芝居を作り始め、声のいい真帆にナレーションをお願いする。真帆は快諾するが、台本を読んで、貧しい女性が王子様に見初められて結婚し幸せになるというシンデレラの物語の価値観に異議を唱える。それに同感した佳純は、自分たちの価値観を盛り込んだオリジナルのシンデレラの紙芝居を作ることにする。
しかし、保護者や県議会議員である真帆の父が参観する中で紙芝居を上映すると、保護者たちはざわめき、真帆の父はまだ幼い子どもに多様な価値観を教えることに苦言を呈する。それを聞いた真帆は、キレて選挙活動で街頭演説中の父に詰め寄り、不満のたけをぶちまける。佳純は、真帆と一緒に暮らすことを提案し、一度は真帆もそれをOKして、一緒に住む部屋を探し始める。しかし、真帆はかつての恋人とよりを戻して結婚することになり、一緒に住む話は立ち消えとなる。
その一連の経緯から、妹・睦美は佳純がレズだと考える。家族一同が集まる場で、睦実は夫・健人の浮気を本人の前で暴露する。その場は修羅場と化し、佳純と言い合いになった睦美は、佳純がレズではないかと指摘する。そこで初めて佳純は、自分に恋愛感情がないことを家族にカミングアウトすることになる。
佳純は、真帆の結婚式でチェロを演奏するのを最後に、チェロと決別することを決め、披露宴の場でスピーチの代わりにチェロを演奏する。その後、幼稚園に新しく入ってきた天藤は、先輩職員からの歓迎会の誘いを断り、佳純に声をかける。どうして声をかけたのか尋ねる佳純に、天藤は、シンデレラのデジタル紙芝居を見て共感したことを話し、佳純の気持ちは前向きになる。
・・・という感じ(記憶違いの部分もあるかもしれません)。
いわゆるセクシャルマイノリティ(性的少数者)は、最近では「LGBT」(レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスセクシャルの頭文字)と総称されることも多いですが、それにも当てはまらないさらにマイノリティである、アセクシャル(他者に性的欲求を抱かない人)の女性を主人公に、その生きづらさ、そして自分を理解してもらえない周囲と向き合って、自分を見つめ直していく姿を描いています。佳純のセクシャリティ(性的指向)を深く理解したとは思いませんが、無理解な周囲から自分を守るためにセクシャリティを押し隠し、違和感・生きづらさを感じるその姿には、共感できる部分が多くありました。父親に文句をぶちまける真帆、健人の浮気を暴露する睦美など、キレるシーンが要所に出てくるのは、過剰な演出のようにも感じましたが、本質的な救いのないこの物語の中では、その閉塞感を発散する要素としては効果的だったかもしれません。主人公・佳純を演じた三浦透子、真帆を演じた前田敦子の演技も印象的でした。
なお、他者に性的欲求を抱かないアセクシャルの人がすべて、佳純のように恋愛感情や結婚願望も持たないのかといえば、必ずしもそうではないようです。逆に言えば、恋愛感情や結婚願望は持っていても、性的欲求は抱かない人もいるということでもあります。今後そうした方と実生活で関わる機会があるのかは分かりませんが、頭の片隅には置いておきたいと思います。