◯ペロティヌス(ペロタン)作品集 中世ノートルダム楽派のポリフォニー音楽
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Viderunt omnes(地上のすべての国々は)[4声オルガヌム](ペロティヌス)
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O Maria virginei(おお、処女マリアよ)[コンドゥクトゥス](作曲者不詳)
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Dum sigillum(いと高き御父のしるし)[コンドゥクトゥス](ペロティヌス)
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Isaias cecinit(イザヤの歌)[コンドゥクトゥス](作曲者不詳)
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Beata viscera(祝福されたる子よ)[コンドゥクトゥス](ペロティヌス)
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Sederunt principes(支配者たちは集まって)[4声オルガヌム](ペロティヌス)
ポール・ヒリアー指揮ヒリヤード・アンサンブル
(録音:1988年9月、イングランド、サセックス州、ボックス・グローヴ・プライオリー)
かなり前にこのブログでも紹介した、アルヴォ・ペルトのCDで聴いたヒリヤード・アンサンブルの演奏に触発されて、一時期、ECMへの録音を中心にヒリヤード・アンサンブルのCDを買ったもののうちの1枚。
12世紀の終わりごろにパリで活躍していたと推測されるペロティヌスのものと確認されている6曲のほか、作曲者不詳の12世紀ごろのパリのノートルダム楽派の作品3曲を収録したアルバム。
国内版は既に廃盤になっていますが、輸入盤であれば、入手は可能なようです。
3声と4声のオルガヌムが計4曲、コンドゥクトゥスが5曲が収録されていますが、ブックレットの解説によれば、オルガヌムとは、グレゴリオ聖歌を歌う際に、対旋律を加えてポリフォニー風に演奏するもの、コンドゥクトゥスとは、歩きながら歌う行列歌(必ずしもポリフォニーとは限らない)ということだそうです。当時、実際にどのような形で演奏されていたのかについては、必ずしも明らかにはなっていないようですが、このCDでは、カウンターテノール1人、テノール4人、バリトン2人の男声7人による無伴奏の重唱という形で演奏されています。
ノートルダム楽派は、長短2種類の音符を区別して記譜するようになったのがそれ以前の音楽とは異なる特徴で、キリスト教の「三位一体」の思想を反映して、長い音符を三分割する形になっているのだそうです。確かに、このCDを聴いてみると、多くは8分の6拍子のように聞こえます。
当時記譜に用いられた音符の種類が限られていたという記譜上の制約も大きいのだろうと思いますが、800年以上前の音楽でありながら、ミニマルミュージックとの共通点も感じさせるのは興味深いところですが、ヒリヤード・アンサンブルの精緻な演奏で、透明な落ち着いた響き、美しいハーモニーで、心が落ち着く演奏になっています。