- ラッソ:死者のためのミサ曲[34'19"]
- ラッソ:巫女の予言[28'43"]
ヒリヤード・アンサンブル(カウンターテノール:デイヴィッド・ジェイムズ/テノール:ロジャーズ・カーヴィー=クランプ、ジョン・ポッター/バリトン:ゴードン・ジョーンズ)
(録音:1993年11月、イングランド、チチェスター、ボックスグローヴ・プライオリー)
以前に紹介したペロタン作品集と同様、一時期、ECMへの録音を中心にヒリヤード・アンサンブルのCDを買ったもののうちの1枚。
16世紀後半に活躍した後期ルネサンスのフランドル楽派の作曲家オルランド・ディ・ラッソ(1532~1594)の2曲を収録したアルバム。ラッソは多数のミサ曲をはじめ、全部で2,000以上の作品を残しているようですが、この2曲は、必ずもその代表作ということではないようです。
ペロタン作品集と同様に、国内版は既に廃盤になっていますが、輸入盤であれば、入手は可能なようです。
ブックレットに収載されているジョン・ポッターによる解説(の日本語訳)によれば、「死者のためのミサ曲」は、ラッソは2つ作品を書いており、いずれも作曲年は必ずしも明らかではないそうですが、このCDに収録されているのは1578年の版とのこと。
作品は、次の9曲から成っており、冒頭と最後の典礼聖歌の間に、ラッソが作曲した6つの曲が挟まる形で構成されています。
- レスポンソリウム:メメント・メイ・デウス
- イントロイトゥス(入祭唱)
- キリエ
- グラドゥアーレ(昇階唱)
- オッフェルトリウム(奉納唱)
- サンクトゥスとベネディクトゥス
- アニュス・デイ
- コムニオ(聖体拝領唱)
- アンティフォナ:イン・パラディスム
いずれの曲も、4声が織り成す精緻で豊かな色彩と、そのポリフォニックな変化が美しい演奏です。
「巫女の予言」は、次のとおり、プロローグとなる「半音階的カルミナ」と巫女の住む各地の地名が付された12のモテットから構成されています。
- 半音階的カルミナ
- ペルシャの巫女
- リビアの巫女
- デルフィの巫女
- キンメリアの巫女
- サモスの巫女
- クーメの巫女
- ヘレスポントの巫女
- フリギアの巫女
- ヨーロッパの巫女
- ティブルの巫女
- エリトリアの巫女
- アグリッパの巫女
ラッソの20歳頃の作品と推測されていますが、パトロンに献呈された作品であり、出版されたのはラッソが亡くなった後のことだそうです。上の「死者のためのミサ曲」と比べると半音階的な音楽で、解説を読むと、おそらく当時としては革新的であったのだろうと思いますが、やはりポリフォニーが美しく、色彩の変化が鮮やかな音楽になっています。