カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」を久しぶりに聴いてみました。
◯オルフ:カルミナ・ブラーナ
マイケル・ティルソン・トーマス指揮クリーヴランド管弦楽団
クリーヴランド管弦楽団合唱団・児童合唱団(合唱指揮:ロバート・ペイジ)
ジュディス・ブレゲン[Sop]、ケネス・リーゲル[Ten]、ピーター・ビンダー[Bar]
(録音::1974年8月5・6日、9月4日 クリーヴランド、メイソニック・オーディトリアム/ニューヨーク、30丁目スタジオ)
この曲は、もうだいぶ昔の高校時代に、吹奏楽部の先輩に勧められてCDで聴いたのが最初でした。
その後、コンサートで生で聴く機会もあって、すっかり好きになり、輸入楽譜を扱っている楽譜店でスコアも購入していました。
今ならAmazonでも輸入盤のスコアが購入できるようですが、7,150円と結構なお値段です。昔買ったときはそこまで高くなかった気がしますが・・・。
スコアの最初のページ。3管編成に混声合唱、児童合唱、ピアノ2台、打楽器、弦5部と大編成ですが、マーラーの交響曲ほどではありません。
1847年に編集・刊行された、ベネディクト・ボイレン修道院で発見された写本に記されている、ラテン語・ドイツ語による13世紀の歌と詩から選んだ24編をテクストとして、舞台用の作品として1937年に書き上げられた作品。ヒットラー率いるナチス・ドイツ時代にドイツで作曲された作品の中で、高い評価を受け後世に残ったものは、この曲が唯一ではないでしょうか。当時のドイツにあったであろう制約を逆手に取ったような、対位法を排した単旋律的な構成、躍動的なリズム、ある意味アルカイックで、明快な音楽は、魅力的で、原始的なエネルギーを感じます。
曲は、次のように、大きく7部分、25曲で構成されています。
Fortuna Imperatrix Mundi(運命、世界の王妃よ)
1.O Fortuna(おお、運命よ)<合唱>
2.Fortuna plango vulnera(我は運命の傷に泣く)<合唱>
Ⅰ.(第1部)
Primo vere(春に)
3.Veris leta facies(輝く春の面ざしは)<小合唱>
4.Omnia Sol temperat(太陽はすべてをいたわる)<バリトン・ソロ>
5.Ecce gratum(見よ、今や楽しい)<合唱>
Uf dem anger(芝生の上で)
6.Tanz(踊り)<オーケストラのみ>
7.Floret silva(森は花咲き茂る)<合唱>
8.Chramer,gip varwe mir(店のおじさん、紅をください)<ソリ(ソプラノ)と合唱>
9.Reie(輪舞)
-Swaz hie gat umbe(ここで彼女らは輪になって踊る)<合唱>
-Chum,chum geselle min(おいで、おいで、私の恋人)<小合唱>
-Swaz hie gat umbe(ここで彼女らは輪になって踊る)<合唱>
10.Were diu werlt alle min(たとえ世界がみな私のものだとしても)<合唱>
Ⅱ.In Taberna(第2部:酒場にて)
11.Estuans interius(胸のうちは抑えようもない)<バリトン・ソロ>
12.Olim lacus colueram(かつて私は湖に住み)<テノール・ソロと男声合唱>
13.Ego sum abbas(わしは大僧正だ)<バリトン・ソロと男声合唱>
14.In taberna quando sumus(我々が酒場にいる時には)<男声合唱>
Ⅲ.Cour d'amours(第3部:求愛)
15.Amor volat undique(愛の神はどこにでも飛んでいく)<ソプラノ・ソロと児童合唱>
16.Dies,nox et omnia(昼、夜、そしてあらゆるものが)<バリトン・ソロ>
17.Stetit puella(乙女が立っていた)<ソプラノ・ソロ>
18.Circa mea pectora(私の心は)<バリトン・ソロと合唱>
19.Si puer cum puellula(若者と乙女がいれば)<ソリ(テノール3・バリトン・バス2)>
20.Veni,veni,venias(おいで、おいで、さあおいで)<二重合唱>
21.In trutina(秤の上で)<ソプラノ・ソロ>
22.Tempus est iocundum(楽しい季節だ)<ソリ(ソプラノ・バリトン)と合唱・児童合唱>
23.Dulcissime(愛しい人)<ソプラノ・ソロ>
Blanziflor et Helena(ブランチフロールとヘレナ)
24.Ave formosissima(称えよ、最も美しい)<合唱>
Fortuna Imperatrix Mundi(運命、世界の王妃よ)
25.O Fortuna(おお、運命よ)<合唱>
個人的には、冒頭と最後のO Fortuna(おお、運命よ)、テノールとしてもかなりのハイトーンで歌われる12曲目のOlim lacus colueram(かつて私は湖に住み)、最後の1つ手前の24曲目のAve formosissima(称えよ、最も美しい)といったあたりが特に好きな曲。なお、12曲目は、テノール・ソロだけでなく、導入のファゴット・ソロもかなりのハイトーンで奏されています。
本盤は、1969年に20代で指揮者デビューを果たしたマイケル・ティルソン・トーマスが、1974年にクリーヴランド管弦楽団を振って録音した、キャリア初期の代表盤の1つ。スマートでメリハリの効いた音楽で、躍動感、色彩感など、ドイツ系の演奏とは異なる若々しい「カルミナ・ブラーナ」になっています。重厚な迫力はありませんが、テクストの歌詞は、13世紀のおそらく若者の詩でしょうから、こうした若々しい演奏の方が、テクストの世界により近いのでは?と思ったりもします。
他の演奏も久しぶりに聴いてみました。
◯オルフ:カルミナ・ブラーナ
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団
サンフランシスコ交響合唱団(合唱指揮:ヴァンス・ジョージ)
サンフランシスコ少女合唱団(合唱指揮:エリザベス・アップリンク)
サンフランシスコ少年合唱団(合唱指揮:エリザベス・ウォーターバリー)
リン・ドーソン[Sop]、ジョン・ダニエツキ[Ten]、ケヴィン・マクミラン[Bar]
(録音:1990年5月 サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール)
ブロムシュテットらしい、端正さを持ちながらも、鮮やかな演奏。重厚さを求める方には、あまり響かない演奏かもしれませんが、合唱の扱いも上手で、私はけっこう気に入っています。12曲目のOlim lacus colueram(かつて私は湖に住み)の冒頭のファゴット・ソロも味があって、なかなかいいです。
◯オルフ:カルミナ・ブラーナ
小澤征爾指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
晋友会合唱団(合唱指揮:関谷晋)、ベルリン・シュターツ&ドム少年合唱団
エディタ・グルベローヴァ[Sop]、ジョン・エイラー[Ten]、トーマス・ハンプソン[Bar]
(録音:1988年6月25・26日 ベルリン、フィルハーモニー)
小澤征爾が、関谷晋が指導するアマチュア合唱団である晋友会合唱団をベルリンに連れていき、ベルリン・フィルを振って録音した1枚。
アマチュアとは思えない見事な合唱の上手さは特筆もの。オーケストラもベルリン・フィルで当然上手いので、演奏の技術的なレベルはとても高いです。ただ、優等生的というのか、全体としてよく整っているのですが、それを超えた魅力はあまり感じない印象です。