鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「アイスクリームフィーバー」

TOHOシネマズ日比谷に映画を観に行きました。


地下鉄の日比谷駅からミッドタウン日比谷へ。上の写真は、かなり人が少なくなるのを待って撮りましたが、平日の夕方、かなりの人の出入りがありました。


この日の上映スケジュール。既に上映が終わった回も含めて18作品・24種類、近接するTOHOシネマズシャンテを合わせると、27作品・33種類の上映が行われていました。


エスカレーターで4階に上がって、TOHOシネマズに到着。

世間的には平日の夕方早めの時間でも、ロビーはかなり混んでいました。

この日観るのは、「アイスクリームフィーバー」(7月14日(金)公開)。


スクリーンに進みます。


上映は97+3席のスクリーン10。お客さんは3~40人ほどでした。


(チラシの表裏)

 

川上未映子さんの短編集「愛の夢とか」(講談社文庫)に収録されている『アイスクリーム熱』を原案に映画化した、世代の異なる4人の女性の思いが交錯する姿を描いたラブストーリーで、主要スタッフは、監督:千原徹也、脚本:清水匡など。

 

映画情報サイトで紹介されているストーリーは、

 

常田菜摘は美大卒業後にデザイン会社に就職するもうまくいかず、現在はアイスクリーム店でアルバイトをしている。今後の身の振り方について思い悩む彼女は、常連客の作家・橋本佐保に運命的なものを感じ、彼女の存在が頭から離れなくなる。菜摘のバイト仲間で後輩の桑島貴子は、そんな菜摘を複雑な思いで見つめていた。一方、アイスクリーム店の近所に暮らす高嶋優の家に、疎遠になっていた姉の娘・美和が急に訪ねてくる。数年前に出て行った父を探しに来たという美和との突然の共同生活に戸惑う優だったが……。

 

というもの。

 

主な登場人物・キャストは、

  • 常田 菜摘【吉岡 里帆】:かつてデザイン会社で働いていたが、デザイナーの道を断念し、今は渋谷のアイスクリーム店「SIBUYA MILLION ICECREAM」でバイト長として働いている。

  • 橋本 佐保【モトーラ世理奈】:菜摘が働くアイスクリーム店の常連客で、ミステリアスな作家。

  • 桑島 貴子【詩羽】:菜摘が働くアイスクリーム店のアルバイトの後輩の高校生。

  • 高嶋 優【松本 まりか】:アイスクリーム店の近所に暮らす常連客のOL。

  • 高嶋 愛【安達 祐実】:優が久しく連絡を取っていなかった姉。1年前に亡くなっている。

  • 高島 美和【南 琴奈】:愛の娘の高校生。夏休みに上京し、優のもとを訪ねてくる。

  • 古川 イズミ【後藤 淳平】:美和の父親で、優の元恋人。美和が小学校に入る頃に愛のもとを出ていった。

  • 中谷 清也【はっとり(マカロニえんぴつ)】:佐保、優が住んでいたアパートの部屋に入居してきた男性。

  • 荒川 直子【MEGUMI】:菜摘が働くアイスクリーム店の店長。

  • 薫【コムアイ】:菜摘のデザイン会社時代の元同僚。菜摘がデザイン会社を辞めた後も、菜摘のことを心配して目にかけている。

  • 安藤 ほのか【新井 郁】:優を慕う会社の後輩。

  • 小杉 晴恵【片桐 はいり】:優の行きつけの銭湯「小杉湯」の店主。
  • マリ【藤原 麻里菜】:「千原湯」の番台で働く女の子。

など。

 

ネタバレになりますが、備忘を兼ねて、記憶の範囲で、詳しめにあらすじを記してみます。

 

映画は、菜摘と佐保の物語、優と美和の物語が入れ替わりながら描かれています。

物語は、渋谷にあるアパートの一室に引っ越してきた中谷清也が部屋の荷物の整理をしながら友人と電話で話すシーンに始まります。清也がベランダに出ると、外には自分の部屋の方を見る菜摘が立っていた。菜摘はちょこんとおじきをして立ち去っていく。

 

まず、菜摘と佐保の物語。

渋谷にあるアイスクリームショップ「SHIBUYA MILLION ICE CREAM」でバイト長として働いている常田菜摘は、バイト仲間の高校生・桑島貴子、店長の荒川直子たちと切り盛りしていた。菜摘は、美大を経てデザイン会社に入ったが、多忙な仕事に追われた末に辞めた過去があった。
ある日、店に不思議な雰囲気を持った佐保が訪れ、菜摘は一目で彼女に惹きつけられる。気になった菜摘は、店のスタンプカードを渡すことを口実に、アイスを買って店を出ていった佐保を追いかける。
佐保が気になる菜摘は、夜、自宅でノートに佐保のことを記す。佐保のことを、何も言っていないような月並みな表現でしか記せず、うまく言葉にすることができない菜摘だが、うまく言葉にできないということは、誰にも共有されないということでもある、つまり、その良さは今のところ、わたしだけのものということだ、と記す。
菜摘は店長には内緒で、牛の絵のポップを作り、ショーケースに貼る。佐保はそのポップを褒めるが、店長に見つかってしまい、怒られる。
ある日、アイスを買った佐保を菜摘が追いかけると、佐保は前と同じように店の近くのベンチに座ってアイスを食べていた。なぜいつもここで食べているのかを尋ねた菜摘に佐保は、ドライアイスが怖い、と答える。冷蔵庫さえあればアイスを作れる、と言う菜摘に、佐保にアイスクリームを作りに来てよ、と言い、菜摘も快諾する。
アイスクリームの作り方が載った本を買うため、古本屋に行った菜摘は、その店に佐保が書いた小説の単行本を見つける。家に帰ってネットで調べると、佐保は小説家で、3年前に書いたデビュー作が話題になったものの、その後は作品を発表しておらず、それを中傷するような書き込みもされていることを知る。
佐保が小説家だと知った菜摘は、佐保が来店しても緊張して身を隠してしまうが、ある日、他の客への対応中にやってきた佐保に、アイス作りに来てよ、と言われ、佐保のアパートにアイスを作りに行くことになり、2人は急速に距離を縮める。佐保にミリオンアイスクリームってどんな意味、と聞かれた菜摘は「100万年君を愛ス」と答える。しかし、翌朝、菜摘が目を覚ますと、佐保は姿を消していた。ベランダに出た菜摘は、アイスクリームがついた手でジャンプしてベランダの屋根をさわり、ベランダの屋根には、菜摘の指についていたアイスクリームでピンクの花びらのような模様が付く。
休みを取って故郷に帰省した傷心の菜摘は、乗っていたバスの中から、バス停のベンチに座ってアイスを食べる優と美和の姿を見かける。
佐保は、菜摘さんのことどう思っているの?との貴子の問に、夕立みたいになりたいの、一瞬で過ぎ去っていく夏の夕立みたいに、と答え、貴子は、ずるいなぁ、あなたはそれで満足かもしれないけど、菜摘さんはずっと忘れられないよ、と言う。
日が経ち、菜摘は「SHIBUYA MILLION ICE CREAM」の店長となり、自分の思うように店の中をアレンジし、常連客の優からもらったオブジェを天井に吊るそうとする。
そのお店に、清也がやってくる。清也の手には、「100万年君を愛ス」と題された佐保の新刊があった。

 

一方、優と美和の物語。

渋谷で暮らす高嶋優は、近くの銭湯「小杉湯」で一番風呂に入るのを心の癒しにしている。優が銭湯から帰ってくると、突然、疎遠になった姉・愛の娘・美和が訪ねてくる。困惑する優だが、小学校に入ることに別れた父親・古川イズミを探しにやってきた美和は、SNSへの書き込みから、渋谷付近に住んでいることを突き止めていた。
優には、恋人だったイズミを愛が奪ったことで、愛と疎遠になり、実家にも帰省しなくなった過去があった。
ベランダの屋根に花模様のようなものを見つけた美和に、優は消して、と言うが、美和は、緑のガムテープで茎と葉っぱを付ける。
美和は、優に付いてきてもらい、イズミの勤務先だと睨んだ「JJコンサルティング」を訪問するが、既に辞めていることがわかる。優は、美和をお店に連れていって一緒に卓球をする。
ある日、優が美和を連れて小杉湯に向かうと、銭湯は閉まっており、8月15日で営業終了したことを知らせる貼り紙がされていた。困惑してうろたえる優。その声に顔を出した銭湯の店主・小杉晴恵は、急に閉めることにした理由を説明するが、釈然としない優は、自分が銭湯を買い取ることを考え始める。
ある日、仕事から帰宅した優は、美和が間違えて届いた佐保あての荷物を開けて飾っていたのを見て、それまでの不満が爆発し、美和はもう帰りな、私の邪魔だ、と通告する。愛と優と父親のことは知っている、邪魔しているのは優の方だと、反論する美和に優は、幸せか幸せじゃないかは、もはやどうでもいい、私か、私じゃないかだから、と声を荒げる。
ほとぼりが冷めた後、優は、ソファで寝入っていた美和を起こし、スマホの連絡先に残っていたイズミの番号に電話をかける。しかし、出た相手は赤の他人で、優は、すいません、間違えました、と慌てて電話を切り、2人は顔を見合せ笑い合う。
仲直りした優は美和を連れて喫茶店に行く。美和は、もう帰ります、すっきりしました、東京で父親を捜すのは難しいと思います、と話すが、優は店の前の道をイズミが若い女の子と歩いているのを見つける。イズミは女の子と喫茶店に入ってきて、2つ隣のテーブルに座り、女の子と大きな声を上げて話をするが、優は、話に夢中な美和には、イズミが同じ店内に来ていることを教えないままにしておく。
美和がしていたイヤリングが、愛が気に入っていたものだと聞いた優は、それはかつて自分が愛に上げたものだったことに気づき、当時の思い出が蘇る。優は美和に、1年前の愛の葬式の時に、一緒にアイスを食べたときのことを覚えているかと尋ね、その時のことを回想する。優は、美和は私がもらう!と言って、美和を抱きしめる。
そして、優は、銭湯を「優の湯」として再オープンさせる。

 

エンドロールの後、ベランダの屋根に花の模様があったことに気づいた清也。雑巾でそれを消そうとするが、消し終える前に、玄関のベルが鳴り、応対するために清也はそれを途中にしてベランダを出ていったところで、映画は幕を閉じます。

(ここまで)

 

これは映画ではない、という旨の言葉から始まり、隅を丸く切り取ったようなほぼ正方形の画面サイズ、いったいどんな展開になるのかと思って観ていきましたが、ところどころポップな映像や音楽が挿入しながら、菜摘と優の2人の物語が優しく描かれていました。オシャレな演出が鼻につく人もいそうですが、伏線の張り方けとその回収は見事で、冒頭に描かれる清也の物語、菜摘と佐保の物語、優と美和の物語は、同じ時間軸で進んでいるのだと思って観ていくと、それぞれの時間軸がズレていることに気づき、実はアパートの同じ部屋というところで繋がっていることが分かる、という仕掛けになっていました。心に深く響くような感じではありませんが、独特な空気感を楽しみながら観ることができました。