鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「アンダーカレント」


平日の夜、キネマ旬報シアターに行きました。


この週の上映作品。


この日の上映スケジュール。


観たのは「アンダーカレント」(10月6日(金)公開)。全国95館と中規模での公開。公開当初から気にはなっていたので、来てみました。この映画館では比較的少ない封切り上映です。


2階に上がったところには、この作品関係の展示もありました。


上映は2階の136席のスクリーン3。夜19時半からの上映とあってか、お客さんは10人弱という感じでした。


(チラシの表裏)

2004年から2005年にかけて「月刊アフタヌーン」に連載された豊田徹也の同名コミックを原作に実写映画化された作品だそうで、主なスタッフは、監督:今泉力哉、脚本:澤井香織、音楽:細野晴臣など。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

銭湯の女主人・かなえは、夫・悟が突然失踪し途方に暮れる。なんとか銭湯を再開すると、堀と名乗る謎の男が「働きたい」とやってきて、住み込みで働くことになり、二人の不思議な共同生活が始まる。一方、友人・菅野に紹介された胡散臭い探偵・山崎と悟の行方を探すことになったかなえは、夫の知られざる事実を次々と知ることに。悟、堀、そして、かなえ自身も心の底に沈めていた想いが、徐々に浮かび上がってくる−。

 

・・・というあらすじ。

 

公式サイトで紹介されている主な登場人物は、

  • 関口 かなえ【真木 よう子】:家業を継ぎ、銭湯「月乃湯」を切り盛りする女主人。父亡き後、夫の悟と共同経営者となるが、悟はある日突然失踪してしまう。周りからは気が強くサバサバした性格だと思われているが、心の奥底に自らも気づかずに沈めた過去を抱えている。

  • 堀 隆之【井浦 新】:かなえが営む銭湯「月乃湯」に住み込みで働くことになる謎の男。銭湯組合からの紹介で月乃湯を訪れ、そのまま働くことになる。九州の出身だと言うが訛りはなく、職も住居も転々としており、自分のことは語らない。黙々と働き静かに寄り添うようにかなえを支え、彼女の弱さにも気づいていく。

  • 山崎 道夫【リリー・フランキー】:失踪したかなえの夫・悟を探すことになる探偵。カラオケボックスでの調査報告後、ショックを受けるかなえの前で一人熱唱するなど、言動すべてが常識から外れた男。他人の厄介ごとなんて一番苦手と言いながら、かなえに対しては親身になっていく。

  • 関口 悟【永山 瑛太】:突然失踪したかなえの夫。大学の同級生だったかなえの前に、卒業してから数年後、ふらっと現れる。4年間の交際を経て4年間の結婚生活を送るが、旅行先で姿を消す。誰からも好感を持たれていたが、かなえも知らない事実が次々と判明する。

  • 菅野 よう子【江口 のりこ】:かなえと悟の大学の同級生。1歳になった息子の育休中で、夫の実家を訪れた際にかなえと再会し、夫の知り合いの探偵を紹介する。町田町蔵のファンで、作家名・町田康の一字をもらって、息子に康平と名付ける。

  • 木島 敏江【中村 久美】:月乃湯を手伝う気の良いおばちゃん。月乃湯でパートとして働く。幼い頃から母親のように見守ってきたかなえのことを、常に気にかけている。

  • 田島 三郎【康 すおん】:煙草屋の店主で月乃湯の常連。町の歴史の生き証人。亡き妻が生前営んでいた駄菓子屋に通っていた少女が、ある事件に巻き込まれた過去がある。

  • 藤川 美奈【内田 理央】:月乃湯の近所に、小学生の娘・みゆと暮らすシングルマザー。昼はスーパーに勤め、週に4日は夜も働いている。

というもの。

 

143分とかなり時間が長めの作品ですが、途中で退屈さを感じることなく、最後まで引きつけられ、心にじわっと響く作品でした。全体を通して重苦しい雰囲気が漂っているので、快く思わない人もいるだろうと思いますが、誰でも、程度の差はあれ持っているであろう心の底の闇、自分でも目を背けているような暗部があることに、改めて気づかされ、考えさせられるところがありました。主人公・かなえ役の真木よう子、堀役の井浦新のそれぞれ影を抱えた佇まいも印象的でした。

 

ここから先はネタバレになりますが、自分の備忘を兼ねて、より詳しいあらすじを書いてみます。

 

6月、関口かなえは、前年夏に父が亡くなって以降、自分とともに共同経営者になっていた夫・悟が銭湯組合の旅行中に蒸発してしばらく休業していた月乃湯の営業を再開する。
そんなある朝、かなえの家に堀と名乗る男が、銭湯組合の大村から紹介されたとやってくる。ボイラー技士、危険物取扱者など資格も持っている堀に、かなえはうちではなく他で働いた方がいいのではと言うが、堀は住み込みで働きたいと言い、アパートが見つかるまで住み込みで働くことになる。
買い物に行ったスーパーで、子どもが生まれ義母を訪ねてきていた大学時代の友人・菅野と偶然再会する。
8月になり、堀は取り壊し間近の古アパートに引っ越し、黙々と働いていた。菅野から夫の知り合いの探偵を紹介されたかなえは、喫茶店でその探偵・山崎に会い、3か月の期限で悟について調査してもらうことになる。
9月になり、かなえは堀が運転する軽トラックで、廃業した銭湯に向かう。かつての常連の紹介で、重油で湯を沸かすバーナーを譲ってもらえる約束になっていたが、着いてみると、その銭湯は数日前に火事になり、主人は雲隠れしてしまったという。その帰りの車の中で、かなえは堀に、自分のことが好きか質問するが、堀はそれには答えない。
山崎から途中経過の報告をカラオケボックスで受けたかなえは、悟の本籍が山形県であること、悟が高校を出るまでは高校で暮らしており、その後東京に出てきたこと、両親は2年前に火事で亡くなったことを聞かされる。悟から、兵庫県姫路市の出身で、両親を交通事故で亡くし施設で育ったと聞かされていたかなえはショックを受けるが、報告を終えた山崎はカラオケを熱唱する。
10月、山崎に遊園地に呼び出されたかなえは、観覧車の中で最終報告を受ける。悟が前の会社を辞めたのは、同僚の女性が会社の金を使い込んだのをかばって、自分がその責任を背負ったのだと、悟からは全く聞いていなかったことを聞かされる。3か月の期限が来たが、さらに調査を続けるか聞かれたかなえは、もう結構ですと調査継続は断り、山崎と別れる。
そんなある日、月乃湯に突然常連客の美奈が慌てた様子で駆け込んでくる。小学生の娘・みゆのランドセルが道端で見つかり、姿が見えないという。その後、みゆは無事に保護され、犯人もつかまるが、かなえは、自分の小学生時代に、友達だったさなえが不審な男に誘拐されて死んだこと、その男に脅され、真実を話すことができなかったことを思い出して意識を失い、しばらく寝込んでしまう。少し体調が回復して起き上がったかなえは、堀に、知らないうちにいなくならないと約束してほしいと話す。
かなえの具合が良くなったころ、山崎から悟が見つかったと連絡が入り、会いに行くことにする。山崎が連れて行った海岸沿いの店にやってきた悟は、昔から嘘をつくのが得意だったが、いずれ破綻してしまうことの繰り返しだったと話す。かなえからどうして突然姿を消したのか問われ、本当のことを言おうとしたが、言うことができなかったと話すが、姿を消した理由については要領よく答えることができない。かなえは、お互い相手のことが分かってなかったのかもしれない、以前にこんなように話すことができればよかったと言い、悟もそれにうなずくが、離婚届を送ると言って別れる。
その頃、堀は、アパートを出てかなえには黙って姿を消そうとするが、呼び止めた月乃湯の常連客の田島から、事故で亡くなったさなえの兄なのではと指摘され、さなえと仲が良かったこと、さなえが死んで九州に移り住んだが、母親は自分を責め、父親も大変だったこと、偶然に仕事で近くをバスで通りかかったときにかなえを見かけ、さなえが大きくなった姿にそっくりだと思って月乃湯で働くことになったことなどを打ち明ける。田島にかなえにそれを打ち明けるよう勧めるが、堀はかなえが傷つくと固辞するが、考え直し、月乃湯に戻る。
帰ってきたかなえの誘いで、かなえの家で一緒に夕食を食べることになった堀は、かなえと何気ない話をしているうちに感極まって涙を流し、自分にさなえという妹がいることを打ち明けるのだった・・・

(ここまで)

 

なお、堀がかなえに、自分には妹がいて、名前はさなえ、ということを打ち明けたところで描写は終わり、その先は描かれずに、その後、愛犬の散歩に道を歩くかなえに少し遅れて、堀が歩いていく映像が出てきて本編は終わります。この間、2人の間にどういうやりとりがあったのかは、観客の想像に委ねられていますが、私自身は、かなえは堀が小学校時代の友達・さなえの兄であることを知った上で、月乃湯で一緒に働く生活を続けているのだろうと思いました。