鷺の停車場

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宗田理「ぼくらの七日間戦争」

宗田理さんの小説「ぼくらの七日間戦争」を読みました。

ぼくらの七日間戦争 (角川文庫)

ぼくらの七日間戦争 (角川文庫)

  • 作者:宗田 理
  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: 文庫
 

著者の宗田理は1928年生まれ。本作は、1985年4月に角川文庫から刊行された作品で、2014年に著者の校訂を経て、文字を大きくした改版が刊行されています。

本作は1988年には実写化された映画も公開されていますが、題名こそ知っていましたが、その頃には、実際に目にすることはありませんでした。昨年、本作を基にアニメ化した映画を観ていたので、見かけて手に取ってみました。

文庫本の背表紙には、次のような紹介文が掲載されています。

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明日から夏休みという暑いある日のこと。東京下町にある中学校の1年2組の男子生徒が全員、姿を消した。彼らは河川敷にある工場跡に立てこもり、そこを解放区として、体面ばかりを気にする教師や親、大人たちへの”叛乱”を起こした! 女子生徒たちとの奇想天外な大作戦に、本物の誘拐事件がからまって、大人たちは大混乱に陥るが——。何世代にもわたって読み継がれてきた、不朽のエンターテインメントシリーズ最高傑作。

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作品は、次の7章から構成されています。各章の内容をごく簡単に紹介すると、

一日 宣戦布告

一学期の終業式の日、午後から軽井沢に家族旅行に行くはずだった息子・英治が帰ってこない。母・菊地詩乃が確認すると、その日登校した同じ1年2組の男子生徒21人全員が帰っていないことが判明する。英治たち男子生徒20人は、工場跡に立て籠り、ミニFMで「解放区放送」を流す。しかし、1人だけ来なかった柿沼が、協力する同じクラスの女子生徒・橋口からの情報で、誘拐されたことを知る。

二日 説得工作

翌日、工場跡で寝泊まりしていた老人・瀬川に出会った生徒たちは、敷地内のマンホールから下水道を通って近くの児童公園に抜けられることを知る。定時連絡をする純子に、身代金の条件に柿沼に手紙を書かせるよう頼む英治たち。解放区放送を聞いた先生や母親たちが説得しようとやってくるが、応じようとしない生徒たちの反応に、ひとまず引き下がる。

三日 女スパイ

翌日、柿沼の字で書かれた手紙の情報を得た英治たちは、そこに隠された暗号を読み解き、監禁されている場所の見当をつける。夜、瀬川の案内で下水道を通って外に出た英治たちは、花火工場に忍び込んで打ち上げ花火を手に入れる。

四日 救出作戦

翌朝、工場跡の屋上で仕掛け花火の準備を始める。女子生徒の協力で柿沼が監禁されている場所を突き止めた英治たちは、犯人が出掛けた隙に忍び込み、柿沼を救出し、戻ってきた犯人を捕まえる。

五日 迎撃

犯人・田中の事情を聞き出した生徒たちは、身代金を自分たちでうまく奪って田中に上げようと、柿沼自身の声で受け渡し方法を指示するテープを自宅に届ける。父親はその指示どおりに動き、見事に身代金を手に入れる。

六日 総攻撃

女子生徒の堀場の父親が市長選の票の取りまとめを話し合う宴会に出ることを知った生徒たちは、彼女の協力で父親の服に盗聴機を忍ばせ、その様子を解放区放送で流す。そして、工場跡からは仕掛け花火が打ち上がる。

七日 撤退

最後の日、学校が警察を使って強行突破するつもりであることを知った生徒たちは、一足先にマンホールから児童公園に脱出する。

 

というのが大きななあらすじですが、細部には痛快なエピソードも多く盛り込まれています。

35年前の作品だけあって、外から協力してくれるクラスの女子生徒たちとの連絡をトランシーバーで行っていたり、学生運動を思わせる解放区放送など、時代を感じさせる部分も少なからずあります。そもそも、クラスの男子生徒のほぼ全員が自発的に集まって集団生活を送るという舞台設定を、現代で説得力を持って描くことはかなり困難だろうと思います。

校長・教頭をはじめとするいわば「体制側」の大人たちを、狙いどおりにやり込めていく展開は痛快ですが、子どもを持つ親、また、本作でやり込められる大人たちの年代となって読むと、大人たちの目線からも見てしまって、心の底からは楽しめないところがありました。これは、読むのであれば社会に出る前のもっと若いころに読むべき作品なのだろうと思います。