鷺の停車場

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安倍元首相殺害の報に接して

安倍晋三元首相が参議院議員選挙の応援演説に訪れた奈良市で、演説中に銃撃されて死去したとのニュースには、大きな衝撃を受けました。

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ついに日本でもこんなことが起こるようになってしまったのか、というのが、最も強く受けた思いでした。

演説中の襲撃事件というと、戦後では、まだ私自身は生まれる前、1960年10月に日比谷公会堂で演説中だった当時の最大野党・社会党浅沼稲次郎委員長が右翼の青年に短刀で刺殺された事件が思い浮かびますが、その程度です。

戦前には、東京駅で暗殺された原敬(1921(大正10)年11月4日)、五・一五事件で暗殺された犬養毅(1932(昭和7)年5月15日)と、現職首相が殺害された事件が2つありましたが、少なくとも戦後では、元首相の殺害は初めてではないでしょうか。

改めて書くまでもなく、総理大臣として歴代最長となる在任期間を務め上げ、まだ67歳でした。政治的な思想信条への考え方、政治家としての評価は、人によって様々だろうとは思いますが、一時代を築き、まだ先もあった政治家が、このような形で命を落とされてしまうことは非常に残念ですし、決して許されてはならないことだと思います。

その後の報道によれば、犯人は、安倍元首相の政治信条や行った施策に恨みを持っていたわけではなく、母親がお金をつぎ込んで破産したとある宗教団体に強い恨みを持っていたが、宗教団体のトップを襲うのは無理だと考え、関係があると思った安倍元首相の殺害を考えたという経緯のようです。客観的に見れば全く根拠のない八つ当たりのような動機で、間もなく丸3年を迎える京都アニメーション放火殺人事件と同様のやるせなさを感じます。

昨日の参院選で、自民党は単独で改選過半数を超える議席を獲得しましたが、結果的には、この事件によって自民党に風が吹いた部分もあったのかもしれません。

殺害を許してしまったことについては、警備のミスが様々なところで指摘されています。奈良県警の鬼塚友章本部長も、殺害の翌日の9日に開いた記者会見で、警護上の問題があったことは否定できない、とコメントし、非を認めています。

元首相で有力政治家とはいえ、現職の首相や閣僚ではありませんから、警察が提供できる警備体制に現職の首相などと差があるのは当然だろうと思います。改めて考えてみると、存命の首相経験者は10人もいて、そのうち、まだ国会議員として活動している政治家も5人いますから、それぞれに現職並みの手厚い警護をすることは到底不可能ですし、その必要性も乏しいでしょう。とはいっても、素人目には、せめて、1発目の銃撃があってから、2発目の銃撃までの間に、元首相を取り囲んで隠す、犯人を取り押さえる、といった機敏な反応ができなかったのか、と思わずにはいられません。

改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。