鷺の停車場

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映画「東京裁判」(デジタルリマスター版)

ある日の昼ごろ、柏駅西口にある「キネマ旬報シアター」に行きました。


この世界の片隅に」、「破戒」に続いての来訪です。


この週の上映スケジュール。


この日観るのは「東京裁判」(1983(昭和58)年6月4日(土)公開)。


上映は136席のスクリーン3。お客さんは20人ほど、高齢層の方が大半のようでした。


市ヶ谷(現防衛省市ヶ谷庁舎内)の旧陸軍士官学校の講堂を改装した法廷で行われた、裁判から25年後に公開されたアメリカ国防総省極東国際軍事裁判(いわゆる「東京裁判」)の模様を記録したフィルムを基に、5年をかけて編集・制作されたドキュメンタリー映画で、監督・脚本は小林正樹、ナレーターは佐藤慶。最近になってデジタルリマスター化され、2019年8月3日(土)から公開されています。

観始めると、既視感があって、スクリーンで観たのか、家でテレビ放送orDVDで観たのかさえも思い出せませんが、かなり昔にどこかで観たことがあるのを思い出しました。

冒頭はポツダム会談から始まり、おそらく40分以上でしょうか、戦争終結から裁判までを描く導入部となっています。途中、太平洋戦争の記録映像を背景に、昭和天皇による終戦詔勅(いわゆる玉音放送)の全文が幕付きで出てきます。有名な「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、もって万世のために太平を開かんと欲す」のフレーズは、先日観た「この世界の片隅に」をはじめ、様々な場面で接したことがありますが、最初から最後までの全体に触れたのは、この作品が唯一だろうと思います。最後のフレーズが「爾(なんじ)臣民それ克(よ)く朕(ちん:天皇の一人称)が意を体せよ」という上から目線の言葉なのは、庶民にとって「神」と同様の存在であった天皇の位置付けを感じさせます。

やがて、裁判が始まり、審理の段階を追って、その時々の争点となった出来事について、実際の記録映像も交えて説明しながら、映画は進んでいきます。

トータルの上映時間は4時間37分と、一般的な映画の2倍以上の時間、2時間15分ほど経ったところで、休憩が入ります。この上映では、休憩時間は15分、14時半ごろに、後半の上映が始まりました。

裁判のところどころで起きたエピソード的な出来事や、裁判が行われていた当時の社会背景も描きながら物語は進んでいき、裁判は被告の判決の宣告をもって終了します。そして、判決の1か月ほど後に死刑となった7人の処刑が執行されたこと、この戦争の後も、世界各地で戦争・紛争が次々と起こっていることを訴えて、映画は幕を閉じます。

4時間半をゆうに超える長編ですが、800回を超えた審理の経過をこれだけの時間にぎゅっとまとめていることもあって、退屈になるようなことはなく、最後まで観進めることができました。

先に触れたように、裁判までの過程、争点となった戦争の諸経緯や、当時の社会背景などが当時の映像などの資料を交えて描かれ、いろいろと考えさせられる作品でした。